・置き去り・
結果だけ言うと、奴等は帰った。自称『神』共だ。冒とくだよな。彼奴等。御人好しのファリスを騙すんじゃない。全くな。
で、彼奴等の言う『異世界人』ーー『魚屋』の『マサル』?って男だが、
未だ居る。
彼奴等はユリシアに又来ると言ってから、帰って行った。つまりはこうゆう事だ。
奴等はペテン師だ。魔術使いだな。おそらくな。ーー子供の方が術師だとみた。で、香の力でも借りてーーユリシアに幻覚を見せてたらしいーー少し前の出来事だった。俺と出会う前だ。目的は解らないーーしかし、質悪いな。彼奴等。特に子供使うとかな。
まあ、ユリシアの前で子供はわざわざ『兄』に成り代わったらしいが、そもそもはユリシアに『兄』はいないらしい。それは昨日も聞いたよ。話は聞けば聞く程、奇妙だった。
ユリシアは此の家で、『兄』と『暮らした』記憶ーーが、在るらしい。
時々『そんな気』がしてーーそれを自分の妄想だと思い、戸惑っていたと。そして、彼女は自分の『歳』を勘違いしていた。ユリシアは、ファリスが言うには『俺の五つ上』だーーそうだ。つまり十六に成ったファリスの五つ上ーー『二十一』ーーだ。余程強い『幻覚づけ』だったのだろう。
念の為ユリシアの『毒素』を調べたが、それは大丈夫だった。当初やや残ってたとしても、時間と共に消えたのだろうなーー本当『質』が悪いな。
ユリシアがもうすぐ『26』だと聞いた時、俺は少し戸惑った。が、『21』だと聞いた今、納得出来た。予想と違わぬ年齢だったからだ。ーーが、ひとつ問題が浮上する。ーー俺に言わせりゃ、ユリシア、君は未だ『若い』よ。ーー俺で良いのか?と。
で、ーーだ。親子は帰ったが、又違う『問題』も残っている。つまり『マサル』だよ。
帰り掛け、ついでの如く、『父親』が言った。マサルにだ。『どうする?』とだ。
『帰る』のか、『残る』のかーーだった。俺は止めた。
そもそも『マサル』は、『記憶喪失』だ。おそらく『怪我』が『原因』で、自分を『異世界から来た』ーーと『思い込んだ』ーーのだろうな。だったら納得いくんだよ。
例え『他の星』が在ったとしてもーーだ。『行き来』出来る訳がーー無いだろうが。冷静に成れよ。
マサルは色々考え過ぎたみたいで『頭が痛いーー』と、言い出した。それで彼奴等は言った訳だ。『又来る』とな。
『ユリシアの答えを聞きに来るから、答えを出しておきな。』と。
× × ×
「陽藍さま、良かったんですか…………あのひと…………」
ファリスは陽藍に問い掛けた。陽藍は答える。
「本人に帰る『気』が無いんだ。どうしようも無いよ」と。「今は忙しいしな」と。
横でやたらと色っぽい艶のある美人が、ファリスを見た。『大丈夫よ』と。
「いざと言う時はーー引き受けますわ、陽藍さま。」とーーそう言ったのだった。
彼女の名は『熱の女神』と言う現在の此の星ーー『酒星』のーー管理者だ。『仮り神』だが。此処は、箇の『名前の無い星』からはーー遠い、『果実』豊富生るーー『酒』の『星』なのだ。
名の無き星の管理者のひとり、『華月 陽藍』は、昔『月影 陽藍』と言う名だった。彼のずっと昔の『前世』でだ。
月影 陽藍だった彼は、新米の神だった。力が安定せず、『他の星』に『転移』してしまう現象をーー繰り返していた。
そして『此の星』にもーー来たのだった。遠い過去にだ。御伽話に為る程、遠い遠い過去に。
今はそれとは『関係無い』話ーーだ。
紺は昔ーー嫌、ほんの少し前迄、『神』だった。此の星のだ。しかし此の星は、紺の造りし『世界』では無い。以前の『紺』にその力はなかったからだ。紺は『管理人』だった。『星』を『管理』する『神』だ。創世主では無い。紺は未だ創れない。
では『此の』星を創ったのは、誰か?
創りし『もの』はーー何処に行ったのか?
疑問は多々あるが、彼等は『疑問』を『解決』しに『来た』のだ。人知れずだが。
創世主はーー『何処』にーー行ったのか。落ちぶれたのだ。『闇』に落ちて。紺も『行く』筈だったーー『其の世界』ーー場所にだ。『魂』は『堕ち』たーー落ちぶれたのだ。辛くも。
闇というが、ただの表現だ。『負の感情・マイナスエネルギー』『ネガティブ』に『堕ち』た其れーーは、救われないものに『とらわれ』、『エネルギー』の『欠片』を『此の地』に『残して』ーーいた訳だ。回収される事は無い。
『浄化』ーーそして『循環』させねばならないーーと。今此の星の『水分』は、『古い神』だった『其れ』に、全て『奪わ』れるーー寸前なのである。
紺は其れを止めに来たのだ。『神だったモノ』ーーの『けじめ』として。文字通り『命懸け』で。
特に『優』を迎えに来た訳では無いので、置いて来た。又来ると言ったが、行かないかもしれない。
失敗すれば戻れないのだから。
紺は『ユリシアの暮らす星』をーー守りに来たのだ。大切な『妹』だからと。妹は、『恋人』が出来た様だ。
ならば『星』だけ無事なら、もう自分は『要らない』と。ーーーーーーーそう思った。