・調合師、神と出会う。・
俺の名はカーズィ・キルシュと言う。調合師ーーブレンド・メーカーだ。自分の事ならば、こんなにも容易く語れるのにな。
今どうやらーー俺は『おかしな』男達にーー出会っちまったらしい。『神様』だとさ。
目の前に、子供が立っていた。ユリシアは子供を『兄』と呼んだのだ。そして、ファリスは子供を『殺したい』と言ったーーファリスはいい奴だ。未だ15だが、親の仕事も良く手伝うーーあ………16に成ったかもな…………そろそろ。少し前までアウト・ワーカー『冒険』の仕事に興味も有ったのだろうが、昨夜久々にみたファリスからは、それは感じれなかった。
それでいいと、俺は思った。昨夜迄はーーだ。ファリスに『殺し』は無理だと思ったからだ。
アウト・ワーカーは、綺麗な仕事ばかりではない。害を為す連中の『始末』だって在る。確保出来ぬ場合に『つき』だがーー無論罪には問われない。俺達には『熟練度』がーー在る。
アウト・ワーカー『チップ』に、それは刻まれて、熟練度が溜まると、『上級』に成る。上級師は、採取依頼以外が熟せる様に為るーーそんな『段階』がーー在る。初めから自由に成り立てに『仕事』されたら『死体』が増える。『初心者』なんて素人だ。講習受けたからって直ぐ一人前な訳ではない。
だから初心者共は『上級』の補助無しに、仕事は受けれない。当たり前だよな。
転職者なら、一部例外除外もあるが、そんなもんだ。誰が『素人』に仕事頼むかよってな。
『名前の無い男』、こいつも『俺』に預けられたのは、俺が『上級』の資格持ちだからだ。で無くば誰も『素人』を『素人』には預けないさ。野垂れ死ぬのが関の山だからなーー。
俺だって素人時代は『冒険者』に『依頼』して材料集めに行った。それで熟練度あげて一人前に成ったから、こうして今自由生活な訳だ。
でーーーー
ファリスが溜息吐いてるよーーーーーーおいおいーーーー
「何しに来たんだよ………………」
「ファリス待って……」
「…………………ユリシアねーちゃん…………」
てな感じだ。
話が進まんので、『綺麗な顔の男』が、口を開いたのだったーー。
「ユリシアさんは、『俺の顔』に『見覚え』ある?」と。ユリシアは悩んでいた。
男は『やっぱり無理か』と言った。それからーーーー
「ユリシア、ごめんね。ユリシアの『記憶』を直しに来たんだ、僕。本当にごめんね。」
子供の姿の兄がーー言ったのだった。ユリシアは応えた。
「やっぱり『お兄ちゃん』だよね?」と。そして、
「どうして『子供の姿』なの?」とだ。
「子供の姿なのはねーー」其処で『父親』が、『子供』を止めた。そして言った。ファリスにだ。
「ファリス、ちょっと良いか?さっき『紺』を『殺したい』と言ったな?でもそれ『手遅れ』なんだよ。紺はな、『あの後』『俺の星』で、『殺され』たんだ。ーー『俺』にな。納得したか?」
言われたファリスは面食らったのだった。ーー反論したのは、俺の連れの名前の無い男だった。そしてーー
「ちょっと待ってくださいよ」 「なんだよ、魚屋さん。」 「は?」
と、会話は続いたのだった。
「は?じゃないよ、魚屋の坊ーや。いないと思ってたらこんな処に居た。何やってんだ君は。御両親いたく心配してたぞ。妹が『嫁ぐ』ってのに、兄に連絡が取れないってな。何時から居たんだ? 『魚坊』の『優』君。」
「………………妹?」 「『幸』ちゃんだよ。『咲幸』ちゃん。『俺』の『昔』からの部下で『麻宮』ってのがいるんだけど、咲幸ちゃんと前つき合ってたろ?麻宮が忙しくて別れちゃったけどな。で、反省した麻宮が仕事セーブする事覚えて、再プロポーズしたんだよ。で、ーー話が纏まったとーーおい聞いてるか? 君『理一』の友達の『優』君だろ?ほら『思い出せ』よ。」 「ふ~ん理一君の友達なの?」 「『昔』だけどな。」
親子は『名前の無い男』ーーを、挟んで、そんな会話をしたのだった。男の名前がーー判明したらしいーーよろこんでいいのか?これーーーーーーーー
「…………………『陽藍』さん……………………ですよね?」 「何だ…………『憶えて』たか。案外『つまらん』な。」 「『魚坊』ってなんか『聞いた』覚えあるよ?」
「『加野』君の家の『近所』に『在る』だろ。」
父親がいうと子供が答えたのだった。『ああ!彼処ね!』と。『僕「魚」好きー』と。そして父親が言ったのだ。『そりゃお前、狸だからな。』ーーーーと。
「『狐』ですけど。」 「ベース『狸』だろ。」 「ベース『狐』。」
余りにもーー耐え切れずに、俺は言ったぞ…………………アンタ達は『何』言ってるんだ?と。…………………………………………。
男は俺達の存在を忘れていたかの様に…………………『ごめん』と言ったが、それからこう言った。
「悪かったね。俺の名前は『華月 陽藍』と言う『他の』星から来たんだ。ちょっと『お邪魔』してるよ。ーーまあ『用事』済めば『帰る』からさ、気にしないで? 」と。
「で、此の『子供』は、『華月 紺』。此の星では『ポンタ』で通じるかな?」と。
『神の名』をーー口にしたのだった。『碧い狐』だと言われる『神の名』を。何故だかファリスがーー苦く笑ったのだった。………………………お前まさか『知ってた』のか?ちいさくファリスは『バカ神……』と言ったのだから…………………。
「ユリシア、あのね? すごく言いづらいんだけど……………ユリシアの『記憶』がね…………」
神だと言われた子供がユリシアに言う…………………口籠る。そして父親の方が言った。
「紺、隠してもしょうがないだろ。へたれかお前は。ごめんな、ユリシアさん。君は『ユリナ』という『女性』が『少し』混じっていてね…………」 「知ってます……………私…………」 「あれ?」
「ちょっと憶えてるって事か。それでね、君の『年齢』の『記憶』がね。」
「ユリシアごめんね。ユリシアは今『二十歳』位だよ。」
親子は又『言った』のだった。『ファリス』から『報告』貰ったと。
…………………………ファリス…………………? 俺はファリスを見た。ファリスは気不味そうだった。
「え?」
流石にユリシアが面食らった。俺は彼女を支えた。彼女は俺を見た。戸惑っている。俺は『彼等』に問い掛けた。
「どういう事だ?」と。
綺麗な顔した父親がにっと笑ったのだった。そして俺は全てを『知った』。何かした訳では無い。『情報』が、『頭』に流れ込んで来たのだ。ーーーーー苦しい位に。
過去を知った俺は言った。目の前の男に。『アンタ…………「ムーンシャドー」なのか……………』と。
ムーンシャドー『月の影』…………
「『薬草』じゃ無いのかよ………………………がっかりだよ」と。
伝説の『秘薬』は目の前に立ってた。申し訳なそうにな。『ごめんな』と。