戦争賛成も戦争反対もどっちもどっち
昔にタンタルコンデンサ関連の職場にいた知識をもとに。
「なーんか、最近は北朝鮮がいろいろ頑張ってるよなー」
「そうだね。お陰でうちは忙しいよ」
「なんでお前が忙しくなるんだ?」
「北朝鮮が頑張ってるから韓国の工場の稼働が変わったのかね? 韓国向けに作ってる電子部品の注文がドカンと増えた。今月はずっと土曜出勤で残業ばっかりだ」
「北朝鮮が頑張ると仕事が増えるのか」
「うちだけじゃ無いよ。日本って国は前からそうだ。近くの国がもめると輸出が増えるのさ」
「そういうもんか。紛争にしろ軍事開発にしろ消耗するから物資が必要になるのか」
「特殊な電子部品なんてのは日本の得意なとこでもある。だから日本人は戦争になるかもって騒ぐのが好きなんだ。海外に日本の製品が売れるからね」
「いや、戦争反対とかテロ反対とか言ってる奴等の方が多いと思うけど?」
「口で言ってることと行動とは別なんだよ。建前と本音という奴だ。実際のところ紛争地域の武装勢力に資金を出してる日本人というのは多い」
「そんなに多いのか? 俺は知らないんだけど」
「知ってる人も少ないのか? ま、俺らが知ったところで特に何も変わらないか。紛争鉱物って知ってるか?」
「物騒な名前の鉱物だな」
「レアメタルなんだけどな。その鉱山を持ってるのがテロリストだと考えてくれ。その鉱山のレアメタルを輸入するとテロリストにお金が入る。紛争地域の武装勢力の資金原になるレアメタルで、通称が紛争鉱物」
「理解した。ということはその紛争鉱物っていうのを日本はかなり輸入してるってことか」
「『血塗られた携帯電話』なんてドキュメントが作られるぐらいには。タンタルコンデンサを使ったものは日本には必須になったからなぁ。電気屋で売ってるスマホやパソコンの部品の原料の原産地を気にして買い物する日本人とかあまりいないし」
「つまりなんだ。紛争鉱物を使った製品を金出して買うっていうのは」
「武装勢力にお金を払っているのと同じことになる。スマホやノートパソコンにゲーム機を買ったお金の一部が武装勢力の資金源になるというわけだ」
「金は天下の回りものっていうことか」
「そうやって買ったスマホやパソコンを使って、ブログとかでテロは許さないとかテロ反対を訴えるっていうのは、どういう喜劇なんだろうね」
「知らないから仕方ないんじゃないか? 知ってたところで、なにができる訳じゃ無し。あぁ、部品の原料の原産地を調べて、武装勢力と関係無い鉱山のレアメタルを使ってる製品を買えばいいのか?」
「アメリカではその辺りは厳しいね。テロには屈しないってことで、紛争鉱物は使用してませんって証明とか出してたり」
「日本もそうすればいいんじゃないか?」
「産地偽装は日本の伝統芸だぞ?」
「そういやそうか」
「それにそこまで気にしてる日本人も少ない」
「憲法ウンヌンとか世界情勢がどうのとニュースで言うようになったしな」
「憲法をどうにかして輸出を増やして景気の回復っていうのもあるんだろ」
「憲法変えたら輸出が増えるのか?」
「日本製の自動車は海外で人気がある。今も日本製の戦車や戦闘機があれば欲しがるとこ多いだろ」
「あー、なんか見たことある。海外でパチもんの日本製バイクが人気っての。ひらがなで『さいしんぎぞつ』って書いてあった」
「景気を良くするために戦車や武器を作ってバンバン輸出したいって、乗り気の企業も多いしなぁ」
「そのために日本も戦争に備えないとっていう風潮を盛り上げて憲法改正ってことか」
「いろんな思惑がゴチャゴチャ混ざってはいるんだろうけどね。日本が儲けるために他所の国同士で紛争してくれ。ただし日本は巻き込まないで。代わりにいろいろ輸出してあげるからってのが本音のところだ」
「見も蓋もねぇ」
「それをどうやって美辞麗句で飾るかが政治家のお仕事」
「なんというか、世の中戦争紛争に向かってる感じがするよな」
「スマホや携帯電話やパソコンが無いと生活できないからって、紛争地域の武装勢力にお金を出してた俺らに文句が言えるとでも?」
「俺らは知らずに煽ってたっていうのか」
「とりあえずはまぁ、日本向けに輸出するのにレアメタルの鉱山回りの自然が無茶な採掘でえらいことになってるので」
「うん?」
「絶滅寸前のコンゴのゴリラに謝ってきたら?」