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異世界でもクリエイター志望  作者: 紅魔マヤ
4/7

初めての狩猟

毎度読んで下さっている人がいることを信じて今日も一日頑張るぞい。

閲覧ありがとう御座います。

 窓から心地のよい風が吹き込み、それと同じく小鳥のささやきが部屋の中に広がる。

その光景からは似合わない爆発音のような轟音が生物としての生存本能により目を覚ます。

「朝っぱらからうるせえな...」

俺は異世界で死後の暮らしを満喫することに決め魔法使いと司祭を職としているユウの家の一室を借りて同居生活を送っていた。

部屋の中はユウに貰った万年筆と設計図の山々が作業用のテーブルの上にドサッと雑に置かれ、ゴミ箱にはくしゃくしゃにした紙の山。

俺はそんな自分の部屋を見ようともせずに開けっ放しの窓から顔を出して目の前の美少女コスプレイヤー(痴女)に向かって言った。

「おい、早朝の朝日が心地よく差しているのにお前はまたやってるのか・・・」

「何言ってるの?いつものことでしょ?毎日こうやって爆発起こさないとこの街の商店街が活発にならないのよ?それに私の家は街の端とも言えるところに建っているおかげで草食系モンスターが農家の牧草に侵入するのを防いであげてるのに酷い言いようね。そんなんじゃ朝飯作ってあげないんだから」

目の前にいる美少女(痴女)により死んだ後に送られる場所、神様が管理している域でコイツによりここ、異世界にテレポートさせられた。

この異世界の現状を把握できたのは3日目ギルドにいた冒険者からだった。



 この世界は一つの大陸とされている。その大陸の南東部には3つの国があり、アイゼ・アルス・ベルンの3つの国である。

その3つの国のアイゼとアルスは領土拡大など為の戦争を年がら年中していたらしい。最後に戦争が起こったのが20年も前らしい。そして、この世界の最大の脅威になった魔王の出現だ。魔王は最東南にある島にいるという話が一番有力視されていてその魔王の島から魔王軍と呼ばれるモンスターの大群が島から近いベルン南東部に上陸し、侵攻し始めた。

ベルンは以前から行っていたアイゼ・アルスの間で行われていた戦争には参加せず食料や医療品を輸出して貿易による資金稼ぎしかしていなかったために軍事力は最低限しか保有していなく配備しているのも国の帝都(首都)『ピラーニャ』中型都市であるエアル、ピズにしか配備していなかった。

それが決定的な致命打になってしまい南東部にあった小さな村や街は魔王軍により壊滅、生き残った人達は帝都であるピラーニャに避難した。

この世界の文明力は中世ヨーロッパ、魔法が発展しているのに活版印刷機やガス灯なんかがあまり普及していない文明なので他国からの支援要請が遅れた。

それにより兵力が少ないベルンは帝都であるピラーニャを放棄し第二帝都エアルにて再度迎撃態勢を整え始める。

支援要請を受けた他国のうちアイゼだけは支援をするために兵力の大半を向かわせた。

一方のアルスは自国へにも進行してくるであろう魔王軍を迎撃するためだけに兵力の3分の1を海を挟む向かい国ベルンの海岸に配備させた。

ベルンはアルスの支援が来る前に第二帝都エアルにて奮闘するも戦線は崩壊し撤退戦へと移行、最後の中型都市であるピズの周りを残り僅かな兵力による絶対防衛線を構築し文字通りの死守をベルン兵士達に通達するほどの状況下に追い込まる。まるでどっかの国のように。

アイゼの支援は第三帝都ピズに到着し魔王軍との防衛線が始まる。

その同時期にアルスへの侵攻を始めた魔王軍はアルスの防衛隊が到着する前に上陸し侵攻を始めた。ベルンと違い兵力や交通と言った近代的な設備が整っていたこともありベルンに一番近い都市『ヴィ―ゼル』への派兵が間に合いアルスはごく一部だけの損失で抑え込めた。

そして魔王軍は突如侵攻をやめ防衛線を構築、その防衛線は中国にある万里の長城のように長く作られた。高さは実際の万里の長城よりも数倍以上に高い砦を建てた。それによりベルン国内の唯一の生存圏である東ベルン魔王軍により制圧された西ベルンと今では呼ばるようになった。

この人類と魔王の間で行われた自衛戦争中一番激しかった地ベルンからベルン戦争と名付けられ、今ではこの世界で広く教科書に載っている。もちろん手書きである。

 その戦争が15年近くも前になるらしい。15年も経っているのに一向に西ベルン攻略が進んでいなかったらしいが、3年前に勇者が来たらしく一撃で魔王軍の絶対防御線の砦に穴を空けたらしくて西ベルンの旧都市のエアルを奪還するまでに戦線を上げることが出来たらしい。それからは徐々にベルンは元第一帝都であるピラーニャの目の前まで土地を奪還に成功した。

それ以降は魔王軍の防衛線がより強力になり突破困難になっていた。



 そんな中、俺たちが今住んでいる国はベルンの救援に行った『アイゼ』の都市の一つ『パナール』の隅にある2階建ての家。

そして毎日毎日早朝に爆音を鳴らす魔法使いもこの街にいると言われている。

「お前、俺にまたよくわからないモンスターの生肉食わせる気か・・・」

「大丈夫よ、馬刺しと同じで常温でランドシュリンプの肉だからすぐ焼けるから」

俺は呆れたながら自室から出て廊下を渡ってリビングと繋がっているキッチンで朝食の準備を始めた。



 この異世界に来てから丁度1週間が経っていた。早いものだ。

ここに来た1日目はギルドで登録を済ませ自分のスキルをユウから金を借りて習得、二日目以降の日々は自分の能力の研究だったり、この世界の情勢や物価のインフレ度合を調べていたりと過ごしていた。

自身の能力がどこまで生活に使えるかの発見は微妙な結果で終わった。使用できる範囲が3Dプリンターの様な精工で緻密な物を作りだせなかったのだ。出来たとしてもすぐに崩れて壊れてしまう。

それからこの街、というよりも国は勇者が消えてからは動けずにいたせいか兵士がまったくと言っていいほどにこの間見た覚えがないのだ。



 なぜそんなことをしているかと言うと、クリエイターだった頃の先輩から言われた言葉が頭に残っているからだ。

「斎藤、クリエイターとして一番重要なのはなんだ?」

「え?それは...いい作品を作るための情報収集かと」

先輩はこの会社に入ってから俺よりも3年上のベテランだ。そんな先輩が言った。

「情報集も大事だ。だがな...」

そう言いながら俺の両肩にどすっと手を置いた。

「一番重要なのはインフレ度合だ。需要のない物を作っても供給源の金持ちたちの財布は開かないぞ?

じゃぁどうするか?お前さんの言ったように良い物を作ろうと情報収集するのもいい。

だがその情報源は作るうえで必要な資料だけだ。」

「え?あっはい...でもインフレなんてどう気づけばよいのでしょうか?」

「簡単なことだよ」

先輩は俺の肩から手を放して背中を見せてこう言った。

「他の会社や客のNIESを調べる。例えそれがパクリになりそうな物が出来てもだ。所詮はうちの様な下請け業者じゃそこまでデカい仕事なぞ回っては来ない。回ってくるのは小物や部品の設計デザインだけさ」

「...わかりました。Fwwiterやクルクル動画で今一番流行ってるもの検索してきます!」

「それでいい!後は任せたぞ!」

「はい!!...え?」

先輩はその話を終えると退職して大手のゲーム会社に就職した。

「先輩...あれ、いつも仕事を多く回して来たのって先輩じゃ...」

俺はああ言った仕事の割り振りで不公平を生む人間には絶対ならないと心に刻んだ。

「ねぇ、今の口に出てたけど...よっぽど辛かったのね。下請け業者のクソみたいな上司について、かわいそうに」

「おい、可哀想に、雨が降っている中の道端で段ボールに入れられた捨て犬や猫を見ても保健所に連絡してスルーするOLのような顔はやめてくれ」

俺は朝食で作ってたオムレツをコイツの分のだけ半分にして自分の分の皿に移そうとした。

「ねぇちょっとケイのオムレツ美味しいんだから半分持って行こうとしないでよ!!」

肩を掴まれグングンと揺らしてくる痴女を他所に朝食をリビングへと運んだ。



「あぁ美味しかった!!今夜のおかずはハンバーグがいいな」

食後の緑茶を啜りながら何も手伝っていないコイツが要求してきた。

「お前何もしてないだろ」

「何よ、じゃぁ家賃とスキル代払いなさいよ。そしたら何でもしてあげるわよ」

今、なんでもって言ったな。

俺はしばし顎に手を置き考えた。

「じゃぁ金稼ぐための売り物の材料でも採りに行くか」

俺は朝食に使った食器類を洗い場に持って行き自室に向かおうとした。

「え?ちょっと待ってよ。まさか真に受けてるの?」

苦笑しながら俺の背中を目で追いかけてくるコイツは止めようか迷っているように見えた。

「自分で言ったことには責任持てよ。俺はちゃんと金は返すさ。そのためにもクエストと商売道具を揃えなくちゃいけないしな」

「わ、わかった。わかったから何でもはその...」

目の前で顔を少し赤く染めながらモジモジしている彼女をマジマジと観察した。

「...」

「な、何舐め回す様に見てるのよ」

下から上までユウを眺めて考えた。

「無いな...いやでも...」

「な、何...エロ同人みたいな流れ?ここには風俗染みた店ないからね?」

何やら勘違いをしているユウを連れて家を出た。



 草原と森が広がる街の外、そこには草食モンスターが群れをなしていた。

「うむ。いい風と太陽の光が気持ちいい。それに商品開発に必要なモンスターもいるな」

「ねぇ、ちょっと待って...私ここにいる意味あるの?」

俺はユウを連れて街から出て30分ぐらい歩いた場所で材料に使えそうな木の実やキノコ、モンスターの皮や骨を採りに来ていた。

「何言ってるんだ。金払ったらなんでも言うこと聞くつったんだろ?」

「そうだけど、貸したお金返してからの話でしょ普通は!」

なぜコイツがこんなにもオーバーなリアクションをしながら騒ぐ。

「俺まだレベル3だし弓矢の練度がなかなか上がらない上に脆い材質で出来ているからすぐに壊れてしまう雑多な弓だからな。

作れる物にしても材料が不足している。

それに平面上から立体を生成できるチート擬きの能力であれを仕留める為の武器なんか作れないし難がありすぎるからな」

そう言いながら俺はユウの肩を掴み前へと押していく。

「え、いやいや、だからってなんで草食モンスターの中でも魔法耐性が高くて繁殖期になると挙って雌を巡って大木すら倒す頭突きで喧嘩しまくるアーリーオックスに近付かなきゃないけないわけ!?」


 

 アーリーオックス、別名ホーミングライノーと呼ばれている見た目は牛に近く

その体のほとんどを魔法耐性が高いクリーム色の鱗で覆っている草食モンスターである。

このアーリーオックスを狙って食べようと考える肉食モンスターはいない。

なぜかと言うと2トン近い巨体が車よりも早い速度で突っ込んでくる象と同じく位危険なのである。

動画とかで全力疾走の象を見たがあの巨体が猛スピードで迫ってくる映像は迫力満点で個人的に絶対に接触したくないトップ5に含むほどである。

そんな象にも匹敵するアーリーオックスは喧嘩を売らなければ基本安全で性格は温厚な方らしい。

だが喧嘩を吹っかけてきたりする肉食モンスターがいた場合は即座に戦闘態勢に入り地ならしをして突進をしてくる。

だがアーリーオックスの鱗は先ほどの説明の様に魔法耐性の高い上に討伐数も少ないため価値が高い。それと雌から採れるミルクは美食家の間では評判がよくこれもまた売れる。

味は濃厚で栄養価も高く牛乳にも含まれているレチノールが多く含まれていて、風邪や熱を出した時は薬の変わりとして飲まれることもある。



「ちょっと待って!?あんた今の時期わかってるわよね?」

「ん?春アニメの放送時期だろ?」

「おい社畜、絶対わかっててあいつ狙ってるでしょ?」

「金になる近辺のモンスターをギルドで聞いたらあれが丁度いいって言われたもんだから」

必死で抵抗しながらユウは反論してきた。

「だからって私まで来る必要あったの?私が倒して売りさばいたら意味がないでしょ?」

「お前、いつからモンスター捌ける様になったんだ?商売の仕方わかってるのか?使い道わかってるのか?」

自身の顔を徐々に彼女に近づけながら威圧をかけた。

「あっえっとその...」

「大体俺もお前も一人じゃあれ仕留められないだろ?」

「何か策があるのよね!?」

「おう、あるぜ」

っと俺は座り込み地面に絵を描き始めた。

「な、何してるの?」

「見てわからないか?プランAだ」

「プランAって...」

俺は地面に描いた図を見せながら説明をしているとユウは俺に訊いてきた。

「ねぇ、今の作戦の内容って完璧に私囮よね。パーティメンバーで言うところのメイン火力である私がなんで囮...」

「お前自分であのモンスターの鱗が魔法耐性高いって言ったろ?それにお前ウィザードとプリーストのスキル全部取ってんだろ?

じゃぁ身体能力強化系魔法もあるんだろ?それ使えばいいだろ」

「あっ、うっ...」

目を少し涙目にしながら囮役意外の方法を模索しようと手を動かしている。

「ほら、早く行け、準備しとくから」

ユウは肩を下げ顔を俯かせながらボソボソと魔法を詠唱し始めた。

「よし行け」

この世の終わりだとばかりに顔が青ざめながらアーリーオックスの群れに歩き始めた。

俺はと言うと、ユウが囮になっている間に落とし穴用の塹壕を構築していた。

なぜ塹壕にするかと言うと、普通の落とし穴みたいに点でいくつも作るよりもいっぺんに進行してくる軍勢の足を止めるにはシンプルな直線的な穴の塹壕の方が良い確信していたからだ。

飛び越えてしまう場合も考慮して幅3m深さ4mの塹壕を完成させた。

「ふぅ、見た目はただのスコップなのにこんだけ掘ったのに全然疲れないとか。あれかな、スタミナ強化とか付属してるのか?」

 俺は街の武具防具、工具や雑貨類を大量に扱っていた店『グロッサリー』

キャッチフレーズは、”インクから神殺しの槍まで”と。

このスコップ買った時に店主のおっちゃん何の説明もしてくれなかったな。

「便利グッズの一品だな。流石一次大戦で一番活躍した武器だな」

準備が終わったことをユウに合図しようと足を一歩後ろに下げた時だ。

「もぉぉ無理ぃぃぃ!!」

悲痛な叫びが響き渡った。

彼女は大量のアーリーオックスの群れの先頭で走っているのを確認した。

「もーいーぞー!」

俺はユウに合図を送ったがユウはぐるぐると群れを連れてトレインしていた。

駄目だこりゃ、聞こえてない。

俺はだだっ広い草原で何かないか辺りを探し始めたが細い木が数本しか見つからなかった。

参ったな...いざ周りを見るとほんと草原だなここ。

スコップを握った手元を確認してユウとアーリーオックスまでの距離を測っていた。

「投げるのこれしかないな...」

後で回収すればいいかと言い訳を考えながら手元を大きく振りかぶって投げた。

ギルドに入った日に買ったスマートショットが初めて役に立った。

ユウが走るであろう先を見越して飛んで行った。

「ちょ!?バカ!?どこ狙ってるのよ!?」

ユウが直前で投げたスコップを避けて俺に視線を向けて怒鳴った。

「バカなのはお前の頭だよ!!飛べる魔法とかであしらっていればいいのにさなんでわざわざ肉体強化魔法使ってるんだよ!!」

「...あっ」

えっ、何ほんとに素で忘れてるのかよコイツ。

「いいからこっち来い!幅3mの塹壕掘ってるから走り幅跳びの要領で飛んで来い!」

「3m!?バカでしょ!?そんなの飛べるわけないじゃない!!」

あれ、コイツほんとは浮遊系の魔法使えないんじゃないのか?

走っているユウの周りが明るくなり始めた。そしてユウが突如消えた。

「...え?」

アーリーオックスの群れも俺と同じく辺りを見渡し始めた。

「全く。合図のためにスコップ投げてくるとかバカでしょ」

突然ユウの声が後ろから聞こえてきた。俺は振り向くとどや顔している痴女を確認するとアイアンクローを決めた。

「ちょ!?痛いって!?私の素晴らしい知性が詰まった頭が潰れたトマトみたいになるぅぅ!?」

「おい、テレポートとかあの時以来使ってるところ見てなかったのになんで今になって使った」

ミシミシと音が出始めるユウが言い訳をし始めた。

「いやちょっ!まっ!痛いからまず止めてよ!!大掛かりな魔法の一種だから使うのには準備が必要だったからなの」

「...お前さ、さっき何の詠唱もなく使ったよな...」

「ちょっと待ってって!?...」

突然黙り込んだユウを見て首を傾ける。

「ん?」

足元がグラグラし始めたのを感じてから本来の目的であったことを思い出し振り向いた。

こちらに目掛けて目的のモンスターが唸り声と共に荒い息継ぎを発しながら突進してきていた。

俺は塹壕の幅足りてるかどうか不安に駆られながらユウから手を放す。

「ちょっと...大丈夫よね?私最初にも言ったけどあいつらどうやって仕留めるのよ!?」

さっきまで掴まれていた箇所を抱えながら俺に訴えてくる。

「まぁ...大丈夫だろ...たぶん」

「今たぶんって言った?お前理系で計算特異な奴だったでしょ!?」

アーリーオックスは目と鼻の先まで近づいていた。

ユウは腰を抜かして地面に尻もちをついて震えていた。

前方から迫ってくる巨体の群れから発せられる揺れが近づいてくる。

そして唸り声とは別の声を発し始める。

その巨体は塹壕の手前でやっと気づいたのか突然ブレーキを掛ける。

その光景を見て思い出した。富士でやってた自衛隊の火力演習で披露されてた光景が。

こいつら戦車だったら止まれただろうな。

「やっぱり戦車の方が性能上だろうな」

「何言ってんのあんた!?」

巨体の群れは悲鳴を上げながら塹壕に落ちていった。

「馬みたいに飛ばなかったか」

「...」

唖然としているユウを他所に俺は最後の1頭が落ちていったのを確認してから塹壕の底を確認した。

「大量だな」

「ね、ねぇこれどうするの?」

腰が抜けたままの状態でユウが声をかけてきた。

「よし、業者呼んでくるからここで待ってろ」

「え?ちょっと待って!さっき説明した作戦でこれ全部捌くとか言ってなかった!?」



 しばらくして俺は街から2人の業者人を連れて戻ってきた。

「遅いじゃない...」

ユウは仰向けに寝転がっていた。

「まだ腰抜けてるのか?」

業者の二人はユウを見て困惑しながらも目の前の塹壕に落ちたアーリーオックスの群れを目にした。

「言った通りだろ?どうだいくらになりそうだ?」

「いやぁ驚いたよ。まさか本当にやるとはな」

業者の2人のうち1人の男が言ってきた。

「ねぇ、この人たち誰?」

「さっき言ったろ?業者の人呼んでくるって」

「業者って」

首を傾げながらユウは聞いてきた。

「あぁこの人たちは街の肉屋さんだよ」

「「どうも」」

ユウは軽く会釈を済ませて俺を見た。

「で?これどうやって処理するの?」

「?業者の方に売り渡して現金に換えてもらうんだよ。」

「...でもさ、こんだけ深いと全部ミンチになってんじゃない?」

「...すいません戻ってロープ取ってきます」

俺は塹壕の底を確認するべくロープを探しに急いで街に戻ろうとした。

「あっ大丈夫ですよ」

そういうと肉屋の1人が塹壕の下に落ちた。

「「ちょ!?」」

俺とユウは思わず声を出してしまった。

もう一人いたマッチョな男性が俺の肩に手を置いて笑いながら話してきた。

「大丈夫だよ。彼一応そこそこの冒険者らしくてね」

いやそういう問題じゃなくて...。

すると塹壕の底から声が響わたってきた。

「大丈夫ですよ。思ったほど深くなかったの。それにしてもすごい数ですね。っと言っても下に埋もれてるアーリーオックスはすぐに血抜きしないと肉が駄目になってしまいそうだ!」

すげぇ、肉屋になってる冒険者...。

「あ、あとすみませんが掘る道具があれば落としてほしいのですが」

あっ...。

「ごめんなさい!少し待っててください!」

俺は走って投げて放置していたスコップを拾いに向かった。

「全く、スコップ投げたこと忘れてるとか流石低脳ね」

「うるせぇ空飛べねぇ魔法使いは黙ってろ」


 その後スコップを塹壕の底にいる肉屋の人に渡すと物の数分でバリアフリーの玄関の様な坂が出来上がっていた。

「後はアーリーオックスの売り値を決めて終了ですね」

スコップを俺に返しながら値を決めることにした。

「あっはい。それで一頭当たりの値段はいかほどになりますか?」

「下にあった死んだアーリーオックスは安くなってしまいますね」

どこに持っていたのか日本のそろばんに似た計算機をはじき始めた。

もう一人いた肉屋の人は塹壕の底からアーリーオックスを軽々と2頭一偏に担いで上ってきた。

ちょっと待て、2トン近くある巨体を2頭同時に担いでるとかどんな身体してるんだあの人。

今更2人の外見をチェックするが、運搬しているマッチョな人、目の前で交渉している人は俺と一緒ぐらいの体格だった。

あれ、これってレベルの差ってやつか?すげぇなこのレベルが上がるとステータスまで上がるシステム...日本にもあったらどんだけよかっただろうか。

右手を顎に当てそんなことを考えつつ俺は値段交渉を始める。

「私が確認した限りでは、1頭の肉の品質は申し分ないです。ですが底の方にいた数頭はあまりよろしくなかったのでこれは引き取りは厳しいですかね」

そろばんの弾く音と似た音が響く中、俺は値段がいくらになるのかドキドキしていた。

「ねぇねぇお兄さん。ちょっとおまけしてくれないかしら?」

いつの間にか腰が治っていたのかユウが割り込んで甘えてきた。

「おい、交渉している最中に邪魔するな痴女」

「はぁ?群れを誘導したのは私なのよ?ボーナスくれたっていいでしょ!?」

痴話喧嘩染みた光景を見ているのか肉屋の人は微笑しながらある程度の値段を言ってきた。

「じゃぁお嬢さんの言い分を含めて値段つけて、雄一頭3万マルス、雌一頭2万マルス、計22頭中6頭雄、残り16頭雌、その内雄1頭と雌5頭、計6頭が劣化してるため6頭含めて1万、合計取引金額36万内運搬費で3万引かせていただきますので最終合計金額33万です」

う~ん、この世界での価値観微妙に低くないか?と言うよりも需要が少ないのか?日本の和牛とか一頭当たり180~200万以上するのに...いや待てアメリカ産とかだと一頭辺りの値段はたしか2万ぐらいだった記憶がある。

右手に支えられていた頭を少し俯かせて考えているとユウが突発的に値切りならぬ値上げ交渉をし始めた。

「ねぇお兄さんもっとおまけしてよ」

「う、困りましたねぇ...一応この街の平均価格が性別関係なく1万5千ですので結構おまけしてるのですが」

「えぇもっとおまけしてよぉ」

色気ねぇくせに何押し当ててるんだろうなこの痴女。

「おい肉屋の人が困ってるからもうやめとけって、ない胸当ててもしょうがないだろ」

「おい低脳、今胸の話したな!?」

俺の胸倉に掴みかかってきたコイツを引きはがそうと悪戦苦闘してる中肉屋の2人が仲裁に入ってきた。



 あの取引は上乗せはなく33万マルスで決まった。その場で渡せれる枚数ではなかったのか小切手で渡された。

あと肉屋の1人にない色気振り撒かれて困った方から10%割引きのサービス券を1枚貰った。

「さて、銀行行って小切手を現金に換えに行くか」

「ちょっと待ちなさいよ!あの穴どうするの!?」

アーリーオックスを捕まえるために掘った塹壕が残っていることを思い出した。

「あぁ...」

「あぁじゃないわよ!?生態系壊れちゃうわよ!?」

こういう時に限って頭回るな。だいちこんなところ他のモンスターが落ちるわけ...。

すると塹壕の近くに可愛らしい雛の様な小さなモンスターがちょろちょろしていることに気が付いた。

「ハッ!?」

俺は慌てて雛の様な可愛らしいモンスターを両手に移して塹壕から遠ざけた。

その直後に慌ててスコップを手にして隣に盛り上げてた土を摂せと元に戻し始めた。

「ふぅ...危うく生態系を崩す屑になってしまうところだった...」

「さっきまで群れを成してた草食モンスターを屠殺しておいて何言ってるのこの人...」

群れを連れてきたのはお前の責任だがな。

無事に可愛らしい雛が近くの森に入っていったのを確認すると俺たちは街の銀行へと向かうことにした。

閲覧ありがとう御座います。

変態成分が薄くなってしまった紅魔マヤです。

今回の話は異世界での国の状況を大まかに描きました。

ケイスケとユウの関係は基本こんな感じのただの同級生の友達です。

恋愛とかに発展するにはちょっと厳しいです。

ギルドの受付の青髪ロングの娘とかが一番書いてて楽しかったりしますのでちょくちょく出てきます。

次回は銀行の帰り道の話と実験機染みた機械とかを試行錯誤で悩むケイスケと食っちゃねしてるユウがメインです。

それでは次回もよろしくお願いします!

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