New Life
閲覧ありがと御座います。
ここ最近また温度差が激しくなって体調崩す日が続いてます。
肌に心地の好い風と暖かな光が当たっている感じが伝わっている。目を開けるまでもなくわかる。
ここは外だ。
俺は目を開けようとするが強い光に怯んでしまう。薄目になりながら上体を起こし辺りを見た。すぐ隣に立っているコスプレイヤーは別として、他に何も見えないように見える。すると隣のコスプレイヤーが俺に手を差し出した。なんとなく俺はその手を取り立ち上がる。風が身体全体に当たるのが伝わってくる。
再びコスプレ女を見る。一瞬だけコイツが綺麗に見えた。
コイツの見つめている先を無意識に目が向けた。
俺は目を見開いた。
そこに広がっていたのは中世ヨーロッパ辺りの街並み、青々しく広がっている緑豊かな森、その街と森を繋ぐ様に川流れていた。
「すげぇ...」
俺は思わず口から声がこぼれた。すると綺麗に見えてしまったコスプレ女が口を開いた。
「ようこそ!異世界へ!!」
俺はしばらく呆然とその場で景色を眺めていた。
「どっすか?」
俺の肩を指でトントンと突いてきた。この景色の感想でも求めているのか、それともこの世界に対するコメントなのかどうか。
「うーん...綺麗な世界だな」
なんか臭い台詞を言ってしまったがいつも臭い台詞をクラスのやつに話してスルーされてたし気にすることではないと自分に言う。
「そんじゃぁこの世界であとの人生、いや、死後の暮らしをするということでOK!ってことよね!」
「おっそうだな」
軽く流したが俺がいた元の世界、俺が死んだ現実の世界に戻れるのか。いや待て死んだから戻るも何もないか。
「そんじゃ、私の別荘に行くわよ!」
別荘・・・コイツこの世界に別荘を持っているのかよ。
俺は彼女の後ろを付いて行った。
「なぁ、この街ってよくあるRPGとかのゲーム出てくるモンスターとかって出てくるのか?」
俺は唐突に目の前のコイツに質問してみた。
「あぁスライムとかゴブリンとかゾンビとか?出ることは出るわよ。まぁこの街はそこまで被害を受けるほど周辺にポップはしてないようだし」
「そうか」
俺はそう言い終わった直後にRPGのモンスターを倒すと取得できる物はあるのか疑問に思った。
「なぁモンスター倒すとドロップとかするのか?金とか落ちたりするのか?」
「残念だけど、それはないわ。有るのは死体だけよ。あっ、でも経験値なら取得できるわよ?」
「そうか、てことはレベルとかスキルとかあったり?」
「有るわよ」
俺はコイツに、この世界のことを粗方質問した。
ゲーム特有のギルド、冒険者や狩人の組合が存在しているらしくコスプレ女が言うにはでっかい教会のような建物だそうだ。
レベルとかスキルとかを取得するには、そのギルドに加入した時に貰える手帳に自分の情報を書き込まないと取得ができないようだ。
それと加入するときに自分のなりたい職業、剣士や剣闘士、魔法使い(ウィザード)なんかを選べることができるらしい。
ただその時に慣れる職業は適正審査みたいな物で範囲を絞られるらしい。魔力が全くなかったりしたら魔法を使う職業全般は選べなかったりする。
それから、レベルが上がるとゲームのように自分の攻撃力、防御力、耐久力が上昇するらしい。
筋肉モリモリマッチョマンの大男に喧嘩をしてもレベルが高ければ見た目がもやしでも余裕で勝つことができるという世界だ。
要はレベルが高い奴に喧嘩を売るなってことだ。
それと、スキルはレベルが上がるごとに取得可能になるらしいそれとは別に最初から取得可能なスキルもあるらしい。
解除するために必要なスキルポイントとかそういうのがあるのかと思っていたがどうやら取得可能になったスキルは現金を使ってギルドの建物内にある受付カウンターの隣に駅にある自動券売機みたいな装置で行うらしい。
そんなことを自分の頭の中で再確認して思い出した。
「おい、コスプレ痴女、お前の職業ってなんだよ。ついでに俺のチート能力についていい加減話してくれ」
自分のチート能力を半ば忘れていたことに気づいた。
「は?誰が痴女よ。この恰好を見てなんの職業かわからないのかしら」
「・・・娼婦?」
というよりも俺はRPGよりもシューティングやRTSばっかりやってる自称軍オタだからな。
「全く...これだから低脳は困るのよねぇ」
「低脳で悪かったな」
そんなやり取りをした後にユウは胸を張った。
「私は魔法使い(ウィザード)兼司祭よ!」
コイツは堂々と自分の職業を言った。ん?今職業が二つ聞こえたんだが。
「なぁ今二つの職業が聞こえたのだが二つも職業なんか持てるのか?普通、職業って一つだけしか成れないって思っていたのだが違うのだろうか?」
俺はコスプレ痴女に尋ねた。
「なれるわよ?元々の才能ってやつね」
鼻を高々に伸ばしているコイツはそんなことを言った。"元々の才能"か...。
「・・・でだ。俺のチートの話をさっさと教えろよ、話の路線が離れすぎていてだれるんだが」
するとコイツは突然歩くのをやめ俺に向き直りこう言った。
「"ものづくり"よ」
ハッ?思わず声と顔に出てしまった。コイツは一体何を言っている。アバウトすぎるだろ。なんだよ"ものづくり"って...。
「まぁまぁそんな鳩が豆鉄砲を食らったような顔しないで続きを聞きなさいな」
そういうとコイツは俺の右隣の建物の扉を開けて中に入っていった。
あぁ、ここがコイツの別荘か。今にでも崩れそうなボロい土レンガ建築の家を眺めていた。
「何ボーっとしてるのよ。早く入りなさいって~」
緩い感じにそう言いながら俺の腕を引っ張ってボロ屋の中に足を踏み入れた。
今自分の頭の中ではファンタジー系のゲームPVで描いていた中世ヨーロッパあたりの生活風景を想像していた。
そう、木製製品が多くあり床はちょっとボロイ板だったり樽のジョッキで酒を飲んでいたり...。
「今片づけるから、ねぇお茶は緑茶と紅茶どっちがいいからし?」
「え?あぁじゃぁ紅茶で...」
今俺の目の前に広がっている光景が既視感で溢れ返っている。
日本で暮らしてた時と大して変わらないマンション暮らしの内装。
「あっごめん紅茶切らしてたわ、緑茶で我慢してくださいな」
そんなことを言いながら普通に電気ポットからお湯をちょっと高そうな急須に注いでいる...。
いやどこから電気引っ張て来てるんだよ。
「おい、ここ異世界だよな。ファンタジーなんだよな。近代的な物なんてないんだよな...。」
俺が唖然とした表情で回りを見ていた。
「なんで私がそんな時代遅れで埃臭い生活しなきゃならないのよ」
そんなことを口にしながら急須で淹れた緑茶をこれまたちょっと高そうな湯呑みに注がれ机に置かれた。
今コイツは異世界ファンタジー作品の暮らしを否定したぞ。
俺は困惑しながらも目の前のちゃぶ台の前に座り湯呑みを丁重に受け取り一服して落ち着く。
「おい。早く本題に入れよ」
なんかもう馴染めた。
コイツの言っていることが正しければ使用用途によっては国を相手にしても勝てる。
ユウが最初に言っていた楽して残りの人生過ごすことなんか造作もないってことだ。
平面に描いた絵を任意で実体化させることができる能力。
俺は少しばかり頭を抱えて悩んでいた。
「なんで頭抱えてるの?頭痛薬なんて持ってないからね」
「お前さ、この世界での通貨とかって持ってるか?てか通貨って金貨とか銀貨なのか?」
俺はこの世界の通貨を複製できないか考えた。
「ん?あぁ、え~とね」
彼女は自分の懐を弄っていると紙切れと500円玉サイズのコインを机の上に取り出した。
「中世ヨーロッパな硬貨の模様だな...でもこの日本札みたいなの...」
1000円札みたく数字が端に書いてあり模様はドラゴンが互いに向き合ってる。しかも札に書いてある人物まで書いてあるときた。
ふとその紙切れを手に取り裏表をみたり上に向けて透かして観察すると。
「なんか手書きで書いたような札だな」
「まぁまだ印刷技術ないからね。だから本だってすごい高いのよ?あとその紙切れはあんたの命より重いわよ」
「俺の命より価値のあるこの紙切れをポケットにくしゃくしゃで入れてるような奴の口を信じるとでも?」
俺はコイツの言った言葉でちょっとイラついたので皮肉を混ぜて返した。
「てか、この世界の価値観を知らねえんだからこの紙切れ1枚で何が出来るっていうんだよ?」
疑問に思ったことを口にした俺にコイツは答えた。
「え~とね、まずこの日本でもあった100円玉と同じサイズのコイン。この世界の硬貨はここにある3種類でね、見ればわかると思うけど日本の硬貨と同じ色をしてるの、材質は違うんだけどね」
話をまとめて、金色が1万マリア、銀色が1000マリア、青緑色が10マリア、っていうらしい。
で、そんなことを言った後にこの世界の通貨単位を教えてもらった。どうやらこの街の通貨単位の名前になってる現王女様の名前らしくて"マリア"って言うらしい。
「あぁでこの紙切れ様はいくらなんだ?」
詰まらなさそうに親指と人差し指で摘まんでヒラヒラと左右に振っている俺にこう言った。
「100万マリアなのよ」
「ふ~ん・・・どれぐらいすごいんだ?」
ここまでの話の中に物価、物の価値について説明される前にそんなアバウトな数字言われてもわからん。
そんな俺の顔を見て、ヤレヤレと手を挙げて首と一緒に左右に振ってくる。
「まったくこれだから低脳は困るのよね」
そういうと俺が知りたがっていた物価の話をやっと始めた。
「ゲームでよく出てくるHP回復場所のボロ宿屋一泊が7600マリアなのよ。で、パン1個が350マリアなのよ」
う~ん。日本の価値計算で行くと首都圏内の物価と変わらないぐらいだな。
「う~ん大方アメリカドルの100ドル札あたりの用途かな」
そう冷静に分析する俺を見てコイツは予想としていた大げさなリアクションを期待していたのか少し残念そうな顔をして俺を見ている。
「はぁ、予想を裏切らないわねぇあんたは、私が毎回コスプレしてるところをわざわざ見せてるっていうのにいつもそういう態度と顔よね」
俺は机にあったペンを手に取って紙幣を模写してみたが何も起きらない。隣にある硬貨も模写してみたが何の変化も起きやしない。
「う~ん、本当に描けば出てくるのか?」
再度確認をするためにコイツに聞いてみるが。
「じゃぁ、よっと」
彼女は何もない手の平から新しいペンを出して俺に渡した。
「なんだこのペン・・・万年筆か?」
そんなことを口にした俺にコイツは唐突に渡した万年筆の説明をし始めた。
「その万年筆はね神の作った物の一つよ。神器ってやつよ」
何その付け足し設定。
疑いを持ちつつ渡された神器とやらでなんとなく慣らし運転で小さな円を紙に描いた。
するとちょっと光った。その数秒後に紙から小さな玉が出てきた。
「お、おぉぉ」
なんか変に感動した。
目の前のコイツは真顔で目の前に出てきた小さな玉を指先で摘まむとグニグニと指で圧力をかけてマジマジと観察した出した。
「紙製かな?」
そういうとコイツは小さな玉をテーブルに置いて何か唱えた。その時彼女の足元に何か字の様な模様と円が回っている。これがゲームやアニメで見る魔法陣なのだろうか。
少し興味津々で足元を見ていると突然と光が強くなった。俺は思わず目を閉じた。
そして目を開けると机の上にあったはずの小さな玉が・・・何も変わってなかった。
「おい、なんかすげぇことしてると思ってちょっとワクワクしたのに何もないのかよ。てか今のはなんて魔法なんだ?」
「今のは呪いや縛りを解く解除魔法の一種よ。解除魔法を唱えたのにこの玉は消えなかった。これの材質は一体何かしら」
言われてみればたしかに何できてるのか気になる。
あの後いろいろと検証してみた結果、紙に描いて生成された物体は紙製になることがわかった。
これを応用をすればプラスチック板やゴム板に描けば無限に生成ができるこということになる。そのプラスチックやゴムはこの世界にあるのかどうかなのだがな。
「そろそろギルドに行って加入しない?」
「あっそういえば忘れたな」
検証実験が面白くていろいろな試作品を書き起こしてたらもう夕方の時間帯になっていた。
「この光は太陽と同じ光なのか?紫外線の強さとかってどうなのかな?アンデッドモンスターとかいたらちょっと実験してみたいな」
「アンデッドねぇ、この辺は浄化魔法でアンデッド系列のモンスターは近づいてこないわよ?」
ということは遠出しないと捕獲できないのか...いや待てよ。そもそも浄化されている地域にアンデッドが侵入するとそいつはどういった症状を起こすのかも気になるな...。
いろいろと模索をし始める俺の背中を彼女は節せと押してギルドへ向かわせていた。
どうも紅魔マヤです。
最近自分の夢は殺される夢ばかりを見ていて辛いです。
これからまた暖かくなるだろうと思いたいです。
よろしくお願いします。