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第8話 商売人になる!(前編)

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マルロが大量生産に成功した醤油は商会経由で売り出すことが決定した。

しかしここで発生した問題がどの商会経由で売り出すかである。


(ハンセン家御用達の商会もあるんだけど、俺個人のコネも作りたいしなぁ)

分からないことがあればレイに尋ねる。

こういう時は辞典代わりのように使っている。


「なぁ、レイ。商会を自分で作るにはどうしたらいいんだ?」


「商人ギルドで登録して販売許可証明書を貰えばいいでしょう。あとは店舗を構えて仕入れ、販売さえしておけば立派な商会です。」


(なるほどなぁ……うーん。俺が商会を立ち上げてもいいんだけど小さすぎると甜められそうだしなぁ。いい人材いないかな。

醤油づくりは最初はマルロに任せて商売が順調になれば人を雇って工場を作ってもいいかもしれない。

店を構えるお金は俺には無いから最初は露店での販売から初めてこつこつやっていくか。

何にしても大人の商売できそうな人が必要だな)


「レイ、どっかに商売できそうな人材とかいないのか?」


「ハンセン家の使用人なら誰でもできるんでは無いでしょうか」


流石は公爵家に使える使用人。全員レベルが高そうだ。

しかし俺個人の資産を作りたいしハンセン家はあまり関わりを入れたくないんだよなぁ。

マルロが関わっているのは例外として。


「ハンセン家はあまり関わりを持たせたくないんだが何かいい方法ない?」


「それなら奴隷を買ってみてはどうでしょう?商売用の奴隷も売っていたはずですよ」


奴隷を使うのか……日本は奴隷制度なんか無かったからあまり馴染み無いんだよなぁ。各国によって奴隷の扱いは違うみたいだがこの国の奴隷は最低限の生活は保証されている。またむやみに暴力振るったりすると主人が逮捕される。

奴隷にも様々なタイプがいて犯罪を行い奴隷落ちとなったもの、別の国に売られて奴隷になったもの、家が貧困で売られたものなど色々な事情を抱えている。


「大体どれくらいの値段なんだ?」


「商売奴隷でしたら金塊3個ほどでしょう」


ちなみにお金の価値としては


白金塊…1000万円

金塊…100万円

銀塊…10万円

金貨…1万円

銀貨…1000円

銅貨…100円


ぐらいの価値だと思う。


人の売買など日本ではやった事ないが300万円と考えると妥当だろう。

さらに奴隷には最低限の衣食住を準備しなければならないので維持費としては購入費以上にかかる。



「プレ様はお小遣い貰ってますし、それを貯めていれば十分購入可能では無いでしょうか?」


第3夫人の子供とはいえこの国一番の貴族が父である。その為、平民からは考えられないほどの小遣いを貰っている。

小さいうちから貴族なりの金銭感覚を身につける為らしい。

とは言っても俺は使うところもないので貯めている。


「一応買うことはできるがどんなのを買えばいいか分からん。レイ、付いてきてくれないか?」


「かしこまりました。ではこれから街に出ますので馬車を準備して参ります」


「いや、そんな大袈裟にしなくていいよ。身分を隠してお忍びで行こう。レイもメイド服で出歩いたら目立つだろうし、着替えておいで」


「わたしはメイドとしての誇りがありますのでこの格好のままで大丈夫です。それよりもプレ様のほうこそ街着に着替えましょう。お手伝いいたします」


「一人でできるから大丈夫だ!着替えるからちょっと部屋から出ていっといて」


そう言うとレイは寂しそうに部屋から出ていく。

昔はレイの思うままに着替えさせられていたのが今はもういいだろう。

着せ替え人形を失った子供みたいだ。



「レイ、着替え終わったからそろそろ行こうか。

ここにお金あるから持ってくれ」


「レイ様も私の手を離れて旅立って行くのですね……寂しいです……」


「おーい、レイ聞こえてるかー!」


「は、はい! すぐ参ります!」



微妙に沈んだ雰囲気のレイと二人で街の中心街へと向かう。

メイド服を着たレイと歩くのは目立った。

サリ達には身分を秘密にしているのでバレなければいいのだが。


途中歩いているといい匂いがしてくる。

「この辺は小さな露店などがひしめき合っていますね。料理のいい匂いがしてきます」


日本の祭りの屋台が無数にあるという感じだ。

活気が溢れており、人通りも多い。


また時間があるときにこの辺りも探検してみよう。



しばらく歩くと奴隷販売店が見えてきた。

レイが先頭に立ってドアを開ける。


奴隷が鎖にでも繋がれて日本のペットショップのような扱いにでもされているのかと思えばそうではないらしい。

カウンターがあり何人かが対応している。

店に入っただけでは奴隷らしき姿は見当たらない。


「いらっしゃいませ。本日はどの様なご用件でしょうか」

店員が丁寧に挨拶してくる。

前もって交渉などは舐められないようにレイにお願いしているのでここはレイに任せる。


「商売奴隷を探しに来ました」


「かしこまりました。年齢や性別にご希望はございますでしょうか?」

ここもレイに任せる。

「20歳程度で性別は問わないけど、ある程度計算ができる人でお願いします。」


「少々お待ちください」


そう言って店員は裏に消えていった。


「プレ様は喋らなくていいのですか?」


「俺が喋っても店員さんは困惑するだけだろうし全てレイに任せるよ」

出されたお茶を飲みつつ店員が出てくるのを待つ。


「おまたせ致しました、こちらがご条件に最も近いと思われる奴隷です」


そう言って出てきたのは少し幼さが残るが、黒髪で和風美人の女の人であった。

身長はレイよりも小さそうだ。


「初めまして、こんにちは。アリスと申します。年齢は18歳で特技は算術です」


レイが小さな声で俺に問いかけてくる。

「プレ様どうしますか?この娘にしますか?」

「値段次第だな」


「すいません、いくらぐらいでしょうか?」


「金棒2本くらいでいかがでしょうか?」


あれ?相場は3本じゃなかったっけ?それともこの娘なにか訳ありなのかもしれない。

レイは俺の意思を汲み取ったかのように


「2本でいいのですか?相場は3本くらいかと存じておりますが。なにか理由でもあるのでしょうか?」


「特に理由などございません。ただ私は公爵家にはこれからもご贔屓願おうというだけなのです」


なるほど、この商人は目がいいらしい。

この世界はこれくらい聡明じゃなければ生きていけないのだろう。


「一体いつから公爵家だと分かったのですか?」


「ご来店された時からですね。メイドさんがいるのは間違いなく貴族様ですしこの領地にも貴族はいますが小さい坊ちゃんがいる家は領主である公爵家の第3夫人の長男しか存じておりません。商売に生きるうえで情報を手に入れるのも死活問題ですから」


俺が口を開く

「そこまでバレているとは思わなかったよ。確かに俺は第3夫人の長男のプレリュードだ。安くしてくれるなら買わずにいられないだろう。レイ、お金を出してくれ」


急にしゃべり始めた俺に少し動揺したのかここは商売人、ポーカーフェイスで乗り切ったようだ。


「ありがとうございます。では契約の方に移りたいと思います。ご主人となる方はこちらのプレリュード様でよろしいでしょうか?」


「それでいい」


「ではこちらの誓約書をよくお読みになった上で契約書類にサインをお願いします。もし文字が書けなければ代筆でも結構ですし誓約書を読めなければメイド様に代読してもらっても構いません」


俺は誓約書にさっと目を通す。

要約すると奴隷に必要最低限の生活を与え決して暴力など振るわないようにする、といったことであった。


そして契約書類にサインする。


「これは驚きました。そんな小さい年で文字の読み書きができるとは。将来有望ですね。こちらが奴隷の主人の証となる書類です。また、奴隷には主人がわかるアクセサリーなどを常に身につけるようにして下さい」



代金を払い奴隷のアリスを連れて帰る。

「ご主人様、わたしはいったいどの様な事をしたらよいのでしょうか?」


「お前には商会の会長になってもらおうと思う。今はまだ立ち上げていないが明日にでもギルドに行って手続きをしてきてくれ」


「ええ、私が会長ですか! そんな、できません! 私は売り子程度しか経験ありません!」

アリスは年齢には似合わない高い声をあげ驚く。


「売り子も会長も変わらん。最初のうちは売り子もしてもらうのだから」


「しかし経営などはしたことがありません!」


「俺がいるからなんとかなる。とりあえず今日は家に帰って母さんに挨拶しにいくぞ」



家にたどり着くと衛兵さんが立っている。

これからの事もあるのでアリスを紹介しておく。

いちいち通すかどうか聞かれてもめんどくさい。


「私が公爵家の奴隷なんて……」


アリスは半ば放心状態である。


家の中に入り、おそらく母さんがいるであろうリビングへと向かう。

「あらプレお帰り、レイとどこに行ってたの?」

そう言えば母さんにどこに行くか伝えてなかったな。


「ただいま母さん、奴隷を買ってきたから紹介するね」


「は、はじめまして!アリスと申します!一生懸命働くのでよろしくお願いします!」


ちょっと噛んだ。


「急に奴隷なんか買ってきてどうしたの?」


「ちょっと将来に向けて色々と、ね」


「そっか、母さんはあまりプレのやる事には反対しないけどちゃんと責任はとるんだよ?」


「はーい」

返事しておく。


「プレはこの家を継げないからね……今のうちに将来を考えるのは良いことだよ」

そう言った母さんは少し寂しそうな顔をしていた



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