第14話 生徒会!
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声をかけてきたのはピンクの髪でポニーテルが似合っている女の子だった。
生徒会長である。
背は平均ぐらいだろう。体は引き締まっており胸も少しだけであるが膨らんでいる。
「俺が生徒会ですか?」
「そうよ、毎年新入生代表には生徒会に入ってもらっているの。とは言っても仕事と呼べる仕事はないから安心してね」
「それは絶対ですか?」
「絶対ね」
どうやら俺に逃げ道はないらしい。
入学式も終わり新入生が体育館から既に出て行った後だ。
クラスでは今頃、自己紹介でもしているのに何で俺だけこんなことになっているんだろう。
「生徒会に入ることは分かりました。俺もそろそろクラスに帰ってもいいですか?」
「ごめんね、今から生徒会室を案内するわ。プレ君も今からクラスに帰っても居場所が無いでしょ?」
……なかなか痛いところを突かれた。きっとこのタイミングでクラスに入っても変な目でしか見られない。
「心配しないで。私もそうだったから。知らない間に溶け込めるわ」
「ということは会長さんも新入生代表を務めたのですか?」
「そうよ、大体は新入生代表が6年生になって生徒会長を務めているわ」
生徒会長は少し笑っているような気もするが今はそれどころじゃない。
俺が新入生代表になってしまった時点で将来がほぼ決まってしまったようだ。
全てはサリが悪いのだ。魔法の実技ではきっとぶっちぎりだったはずなのに一体どんな面接をしたのか気になる。
「わたしたちも体育館を出ましょ。今から在校生が片付けをするし邪魔になっちゃうわ。私についてきて」
綺麗に結んであるポニーテルを見ながら会長の後ろをついていく。
片付けを始めている在校生はチラチラとこっちを見てくるのが分かる。
「この学校はね、生徒会が大きな権限を持っているの。時には先生も関与できないくらいにね。だから生徒会に入ることは一種のステータスであり憧れであるの」
「なるほど、だからチラチラと見てくる人がいるのですね」
「それだけじゃないと思うけどね。プレ君のさっきの挨拶は本当に驚いたわよ。あなた本当に6歳?」
ここで転生しました!とは口が裂けても言えない。
前世の知識をフル活用して考えた文章だから仕方ないかもしれない。
更に、挨拶にはうるさい日本で鍛えられた身だ。
「もちろんですよ」
「なんだか私より歳上な気がするわ。あ、ついたわよ。ここが生徒会室ね」
案内されたのは体育館と校舎を結んでいる通路を出て上に上がったすぐのところだった。
生徒会室と書いてあり、他の教室よりも大きそうだ。
会長がドアをあける。
「おかえりさない、会長。新入生代表を連れてきたのね」
「ええ、あなたもさっきの挨拶聞いていた?この子には期待できそうね」
生徒会室をあけると4人の女の子がテーブルを囲み椅子に座っていた。
クラスのテーブルや椅子よりも格段にいい物だと分かる。
「はじめまして、新入生代表のプレリュードです。何故か生徒会に入ることになりました。これからよろしくお願いします」
「本当に礼儀の正しい子ね。私からみんなの紹介をするわ」
そう言って会長がテーブルに座っている4人の方を見る。
「右から順に風紀委員長のサクヤ、保健体育委員長のマリン、図書委員長のマミーよ」
1人1人と目を合わせ頭を下げる。
(しかしこの学校といい男が少ないんだな。女尊男卑になってなければいいが……)
「後は今は出かけているけど副会長のチャキがいるわ。あなたには生徒会の雑務の役割についてもらうわ」
「どんな仕事をしたらいいんですか?」
「さっきもいったけど仕事といった仕事は殆ど無いわ。ゴミ捨てや掃除とか買い出しとかよ」
(本当に雑用じゃないか……単なるパシリだろ)
「今日のところは顔合わせと生徒会室の場所を覚えるだけよ。それとこれを持っていて」
渡されたのは銀色に輝くカードだった。俺の名前が書かれてある。
「これは生徒会の証のカードよ。これを見せれば様々な特権を使えたりするわ。特権については後々紹介もするから今はもっとくだけでいいわ。あとこれが光ったり震えたりしたら、生徒会室に集合することね」
どうやらこのカードは魔道具らしい。この世界にも様々な魔道具は存在する。
屋台のカセットコンロの様なものからこのような簡単な通信具まである。
「分かりました、では俺はここで退散させてもらいます」
教室へと向かう。そろそろ自己紹介も終わった頃だろう。
(一体どんな顔して教室に入ればいいんだ。サリのところにでもいこうかな)
今日1日予想外の出来事の連続で少し疲れていた。
教室の前についた。迷っても仕方ないのがドアをあける。
すると
パチパチパチパチ
盛大な拍手で迎えられた。
まるで英雄が帰ってきたみたいだ。
サリのところに駆け寄る。
「サリ、これはどういうことだ?一体何があったんだ?」
「あんたが凄いからじゃない! 1年生で生徒会入りって滅多にないことなのよ!」
「え、さっき新入生代表は問答無用で生徒会って言われたんだが」
マイケル先生が口をはさむ
「それはあの生徒会長の嘘だろう。あの生徒会長はやり手だからな。舐めていたら大人も痛い目にあう」
(なんだよ、それ! 俺に説明するとき少し笑っていたのはそのことかよ! 学校終わったら速攻で生徒会室のりこんでやる!!)
「そんなわけでみんなで拍手でむかえたのよ! 感謝しなさい、提案したのわたしだから!」
クラスはサリの手の中にあるようだ。
時既におそし。
「ハルとフユは止めようとしなかったのか?」
「だって光栄なことですから〜」
聞くだけ無駄だった。
「さっさと席につけ、これからの事を説明するぞ」
先生に言われて席につく。
席につくと後ろの席のレオが机から見を乗りだす。
「プレ君ってすごかったんだね、僕びっくりしたよ」
びっくりしたと言いながら落ち着いた声で喋りかけてくる。
「たまたまだろ、たまたま」
「そこ、私語を慎め。これからだが1時間使って学校を案内する。どこに何があるか覚えるんだ。今日は入学式があったからこれで学校は終わりだ。明日からは普通の授業があるから忘れ物をせずにくるんだ。持ってくるものは最後帰るときに全て配る」
マイケル先生が連絡事項を伝え、学校案内の準備をする。
サリ、ハル、フユが俺の所に集まってくる。
列という列を作らないまま先生が学校を案内していく。
「学校ってどんなところかしらね?」
「ワクワクします〜」
(こいつらは学校が初めてだもんな。俺もこの廊下、教室、たくさんの声っていうのは久しぶりだな)
「ここが屋外魔法練習場だ。今は5年のSクラスの先輩たちが授業している。お前たちも将来はあんぐらいになるんだぞ」
四方八方から的が飛んで来る。
それを撃ち落とす練習のようだ。
使っている魔法は様々で、火の魔法や水の魔法、風の魔法を使っている人もいる。
5年の担任の先生が俺たちに気づく。
「おお、これは新入生の諸君。よくぞいらっしゃった。存分に見ていってくれ。といってもこいつらはまだまだひよこだがな」
的が出てくるタイミングは完全にランダムらしい。
しかし同時に出てくるなど趣味の悪いことはしていないため集中さえすれば簡単だろう。
もっともメビウスターの他の3人にとっはこれぐらい朝飯前にすらならないだろう。
「ちょっと、学校ってこんなレベルの低いことやってるの?」
サリが俺にナイショ話をしてくる。
「所詮こんなものだろ、自分がいかに規格外かよくわかっただろ」
ハルとフユも同じような感想らしい。
「魔法の練習は俺とやればいい。ここでは冒険者になるための練習や文字や計算の勉強をするんだ」
「そうね……」
サリは少し落ち込み気味だ。
「君が新入生代表だね?新入生代表だからっていい気になってはいけないよ?よければ君の立ち位置を教えてあげよう。この僕と勝負してみよう」
出たよー……
(これだから新入生代表とか目立つポジションは嫌なんだよ)
どのように断ろうかと考えるとマイケル先生が口を出す。
「お、いいじゃん。やったれやったれ、5年の先生も乗る気だぞ。」
(いや、教師として止めるべきだろ!!)
「プレ! 負けたら承知しないわよ!」
サリまで乗ってくる。
(あー……こうなりゃやるしか無いじゃん! 空気的に!!)
「いいですよ! やりますよ!」
半ばやけくそである。
「強気だね。ルールは簡単。このクレーン射撃で点数が高いほうが勝ちだ」
「僕の方から言ったことだし、僕が先行から始めよう。始めてくれ」
的が出てくる。自分から言い出しただけになんなく迎撃する。
次は最初と別の方向から出てくる。いつ出てくるかも分からないがこれも迎撃する。
「簡単すぎる。レベルを上げてくれ」
次は2発同時に別の場所から出てくる。
1発目を素早く落とし2発目も危なげなく落とす。
最終的にレベルが上がっていき5発同時に出てくるとこで失敗した。
「ま、こんなものだろう。一応僕は元新入生代表であり現学年代表だからね。次は君だ。ここに立ちたまえ」
ポジションに立ち少しすると的が出てくる。
最初は1個だけだ。
(くそ、さっきから鬱陶しい喋り方しやがって。ただでさえ面倒くさいっていうのに)
プレはイライラしていた。
「面倒くさい、5個一気に出してくれ」
「ハッハッハ、君にはいきなりは無理だろう」
しかし的が出てくる。
目視でも十分、撃ち落とせるが探索魔法を使って出てくる瞬間を狙い撃つ。
出てきた瞬間コンマ何秒で全ての的が砕け散った。
「「「おぉ〜」」」
周りから驚きの声が上がる。
「もっとレベルを上げてくれ」
最終的にこの設備のマックスであるらしい20個同時までいったが全て出てくる瞬間で砕け散った。
「「「……」」」
誰も喋らない奇妙な空間が出来る。
(イライラしてたからってやり過ぎた)
仕掛けてきた本人にいたっては膝をついて呆然としているようだ。
普段、俺の魔法を見ている3人も呆れて声を出さない。
「先生、次の場所に向かいましょう」
誰も喋らないので俺が先生に促す。
「お、おう。そうだな、時間もないし次に行こうか……」
「俺、このクラスにいる意味あるんかな……」
先生が小さい声で何かを言っているようだが聞こえない。
そうして事件もあったが無事放課後になる。
さっきの一件で何故か俺が浮いているような気がする。
「プレ! 一緒に帰りましょ! 誰もプレの事を先輩を虐める酷いやつとは思ってないから大丈夫よ!」
俺の心に最大級の雷が落ちる。
(なるほど……そういうことね……周りから見たらそんな目で見られていたのね……)
ハルとフユも確かにあの時俺ではなく先輩を哀れみの目で見ていた。
「今日はちょっと生徒会の用事があるから……」
落ち込みながらも今日の一件を問いただすために生徒会室へと向かう。
ドアを少し乱暴に開け
「会長いますか?」
自分なりにドスの効いた声を出してみる。
「プレ君、いらっしゃい。早速来てくれたのね。」
会長はドアを開けた目の前のイスに座っていた。
「そんな呑気な話をしに来たのではありません! 生徒会に俺がなんで入らないといけないんですか!」
「あらら、もうバレちゃったのね。でもカードを渡したから1年は辞めることは出来ないわ。辞めるときはこの学校を辞める時か死ぬ時だけよ」
「なんでそんな物騒なカードを俺に……」
「もちろんプレ君を生徒会に入れるためよ。その為なら嘘だって何でもつくわ。嘘も方便って言うじゃない」
「俺にとっちゃ嘘も方便っていうことわざは当てはまらないですけどね」
「それに聞いたわよ?5年の代表の子をクレーン射撃で虐めたんでしょうか?かなりの実力者じゃない! 魔法もできて礼儀も正しければ生徒会に入れるしかないわ」
どうやら俺に逃げ道は無いらしい。
確かにこの会長はやり手だ。
「じゃあ早速仕事だけど……この部屋片付けてくれる?」
そう言って見せられたのは書類が散らばり、何に使う器具か分からないような物があったり、何故かアクセサリーがあったりする会長室だった。
「昔は使っていたんだけど今はこの様な状態で使えないの。よろしくね?」
俺はこの恨みをいつかは晴らしてやろうと心に決めたのであった。