第12話 冒険者になろう!
ご意見、ご感想ありがとうございます。
まとまった時間が取れた時に全話で
ご指摘頂いた点を直していきたいと思います。
ご意見・ご感想お待ちしております。
アリスによると商売は順調に軌道に乗っているらしい。
連日繁盛しており、特に昼頃のピークになると20メートルほどの行列が出来ているみたいだ。
醤油だけ買いに来る人と煮付けの魚を買いに来る人が半分半分くらいなので一日の儲けは約金貨10枚だ。
(銀行からお金を借りなくても店舗の儲けだけで事業拡大も出来そうだな。しかしこういうのは流行っているうちに店舗を拡大するほうがいい。アリスに任せて新しい店舗を3店ぐらい出店してみるか)
そう思いながら屋台の場所へと向かう。
プレリュード商会の前にたどり着くとものすごい行列が出来ていた。
屋台の中ではアリスとマルロが商品の販売と料理を作っていた。
「ご主人様! お久しぶりでございます」
アリスが汗をぬいながら挨拶してくる。
ここのところ魔法練習で屋台に顔は出せていなかった。
「久しぶりだな。話には聞いていたが物凄い繁盛ぶりだな」
「そうなんですよ! 連日醤油が売り切れるんです」
「なるほどな。話をしにきたんだが忙しいみたいだからまた時間をおいて来るよ。」
そう言って俺は自分の屋台を後にし他の屋台の偵察に向かう。
肉を焼いたり、海鮮物を焼いたりする屋台が多い。
たまにパンをおいている店などもある。
活気が溢れておりテレビでみた東南アジアの風景みたいだ。
一通り屋台を見回りアリスのところへ戻る。
行列は無くなったようだが途切れなくお客は来ている。
「あ、お帰りなさいませ」
「だいぶ、落ち着いたみたいだな。話というのはこの店の支店を作ろうと思うんだ」
「支店か?」
マルロが口を挟んでくる。
家の料理は大丈夫なんだろうな……
「そうだ。流行っている波に乗って一気に広げようと思ってな。そこで手隙で銀行に行ってお金を借りて奴隷と屋台を買って支店を作ってほしい」
「かしこまりました。ただそれだと醤油の生成量が足らないと思うのですが」
「工場を作ろうと思う。中古でいいから広い工場を買い、人を雇おう。最悪人手不足なら初期資金はかかるか奴隷でもいい。銀行から大きい額を借りる事になるが、頑張って説得してくれ。ダメならば俺が直接行くことにする」
「随分と夢がありそうな話ですね。頑張ってみます!」
話すことは終わったしこの後、いつもの空き地へ向かわなければならないので足早に屋台を去る。集合時間まであと少ししかない。
(遅くなったらうるさいからな。なるべく急ごう)
遠い場所の移動は瞬間移動を使うが、歩ける範囲の距離はなるべく歩くようにしている。
小さい頃から運動している方が成人した時の体力が違うからだ。
駆け足で空き地へと向かうといつものメンバーが待っていた。
「またあんたが最後ね!」
「他のみんなが早すぎるんだよ」
「「プレ君こんにちは〜」」
「おう、こんにちは」
ハルとフユに挨拶をする。
「みんなは6歳になったらどの学校に行くか決めてるの?」
「俺は特に決めてないなー」
「わたしも〜」「わたしもです〜」
「なら、みんなで冒険者学校に行きましょ!」
(正直俺が冒険者学校に行くメリットはほとんど無いんだよなぁ。冒険者になるつもりは無いしアリスに頼んでいる商売でなんとか生きていけそうだしなぁ。)
「誰も反対意見は無いから決定ね!」
あれ?少しの沈黙の間に俺たちの進路が決定した?
「もともとメビウスターは冒険チームだもの! みんな冒険者学校に行って当たり前よね!」
どうやら俺たちの未来は冒険者に決まってしまったらしい。
この街には第1冒険者学校から第3冒険者学校の3つの学校がある。
第1は剣術などの物理系の格闘に力を入れている。
第3は魔法に力を入れており、入学時に才能の有無の試験が行われる。
第2はトラップの罠解除や探索、斥候などに力を入れている。
「俺たちが誰も返事していないのに決まっているのはいつもの事だからもう諦めたとして、行くとしたら第3学校か?」
「そうね。せっかくプレに教えて貰って魔法が使えるんだし第3学校に行きましょ!」
「まぁあそこは入学試験があるらしいが俺たちは問題なく通るだろうな。」
「わたしだいじょうぶかなあ〜?」
ハルが心配そうに呟く。
(おそらく常識では火柱程度の火を出すだけでも上級魔法に入るとは思うけどな。
俺達が入学試験で本気を出したら先生たちびっくりするだろうな。)
「あと3年はあるもの! 必死に練習したら大丈夫だわ!」
(うーん、だから今の時点で十分だって……こいつら自分のレベルが全然分かってないな。本気で3年練習したら軍の魔法師団レベルになっていそうだ。)
「言っとくが、魔法使えることはあまり周りに言うなよ?目立ち過ぎるといいこと無いからな」
「「「はーい」」」
プレは魔法を教える時はいつも他の人の前では使うなと厳命しているので
素直に聞き入れてくれる。
日本に「出る杭は打たれる」ということわざがあるように
あまり目立ちすぎるのもよくない。
変に目立って命を狙われる可能性だってあるかもしれない。
「今日も海に行って魔法の練習をするか?」
「もちろんよ!水の魔法の練習をしたくてたまらないわ!」
「「いきたいです〜」」
そうと決まればいつも通り人目を見計らって秘密基地へと移動する。
現在所有している秘密基地は家の近くとこの空き地近くだ。
家の近くは快適に暮らせるように様々な物を持ち込んでいるが
ここはほとんど瞬間移動の拠点であるため何も持ち込んでいない。
「相変わらずこの部屋は殺風景ね」
「当たり前だろ、この部屋は瞬間移動するだけなんだから生活用品など必要ないからな」
「そうだ!ここをメビウスターの拠点にしましょ!将来はみんなでお金をためてソファーとかも買いましょ!」
「さんせいです〜、ベットもほしいです〜」
「ここに出入りするのが増えるのはあんまり賛成できんな。元々この部屋も俺が魔法で地下に作り出したものだが、こんな魔法使えるとバレちゃ土木会社に影響が出かねん。それは避けたいところだからな。」
「なら私達に瞬間移動の魔法を教えてくれたらいいじゃない。それなら簡単にここに来れるじゃない!」
「わたしも覚えたいです〜いろんなところに行ってみたい〜」
「残念だが今は教えることができん。なぜかって言うと俺自体あまり理解できていないんだ」
これは本当である。
瞬間移動をどうやってやるかを理論だって説明することは未だにできない。
ほぼ感覚的にやっているだけだ。
アニメや漫画の影響でイメージがついているためできるだけであって
なぜできるのかは分からない。
この世界にも日本のようなアニメや漫画が流行ったら簡単にできるのだろうが。
(そうか、漫画か。これはまたいい商売になるかもしれないな。あとでアリスに話しておこう)
「じゃあ教えれるようになったらすぐに言ってね!」
場所は変わりいつもの海岸で練習する。
流石にウォーターカッター並の威力は出せないみたいだがかなりの威力は出ている。
3人とも魔法がうまくなったもんだ。
サリが魔法を行使する。
岩を貫通といかないも岩がえぐれた。
今は幼い顔をしているがそれでもサリは比較的美人な顔だ。
可愛いというよりも凛としていて、綺麗なストレートの黒髪はまさに大和撫子だ。
将来はどんな風になるのか今から楽しみだ。
一方ハルとフユはどちらかと言えばかわいい系だろう。
まるでお人形のようなくるくる巻いた金髪はまさに西洋系だ。
目もぱっちりしており、サリとは反対の系統だ。
ピンクのフリフリの服がよく似合っている。
(毎日こーやって過ごせたらなぁ。そのうちサリやハル・フユも大人の女になっていつかは遊べなくなるんだろうな。そう思うと少し寂しいな)
過ぎていく時間がすごく愛しい気持ちになる。
「俺も魔法の練習をするか」
「プレ君の魔法見てみたい〜」
「いいだろ、海の上をよく見とけよ?」
魔法の準備をする。行使する魔法は雷魔法だ。
雷は簡単にいえば上昇気流によって上がる際に氷がぶつかり合ってできる静電気が地上に流れる際の電流だ。
それをイメージする。
(氷がぶつかり合い静電気が発生し……それが海へと落ちていく!!)
ズバンッッ!!
すさまじい光と音と共に一本の雷が海へと落ちた。
「プレだったらなんでもありね……」
「かみなりこわいです……」
諦められたような顔でサリはこっちを見、恐怖の顔でハルとフユはこっちを見る。
「その、なんだ。俺も初めてやったんだが想像以上にうまくいったわ」
「あんなのくらったら一溜りもないわね。魚に同情するわ」
サリが哀れみの目で雷の落下地点を見つめている。
きっとあの下にはたくさんの魚もいたことだろう。
「プレ君ひどい……」「お魚さんたちなにもしてないのに……」
ハルとフユも非難してくる。
どうやら俺の立ち位置は完全に悪役らしい。
「実験しただけだ。今度からは気をつけることにするよ」
日もだんだん落ちてきた。最近は少し暮れるのが早くなった気がする。
「さて、今日はそろそろ帰ろうか」
「そうね。」「「は〜い」」
いつものように一旦、空き地近くの秘密基地に瞬間移動しそこから空き地へ行く。
さらに各々の家へと帰っていく。