第10話 魔法練習!
最近、商売に手を付けたり、サリ達に魔法を教えたりしていたおかげで自分の魔法の練習が出来ていない。
毎日寝る前に魔力を使い切ることは欠かさずにやっているがそろそろ役に立つ魔法も練習しておきたい。
プレは今、一人森のなかで新しい魔法開発に取り組んでいる。
(やっぱ魔法の定番といったら探索魔法だよな)
猪にいとも簡単に接近を許してしまったのは失態であった。
こちらから遠くにいる動物を先に感知できれば逃げることも可能だったはずだ。
今、世の中で言われる探索魔法だと
魔力を大量に持つ魔物だと感知することが出来るらしいが、魔力が微量しかない動物などは探索出来ない。
(これだと意味ないんだよな)
プレは転生前の小さい頃の記憶を呼び起こす。
旅行に行く時に船に乗り目的地へと向かった時に船長さんのご厚意により操縦室に入れてもらったことがある。その時にレーダーがあったのを覚えている。あれは船の周りに障害物が無いか調べるものだった。仕組みは電波を飛ばし、物体に電波があたり反射して返ってくる性質を使ったものである。
(ならば、船のレーダーと同じように魔力を飛ばして自分のところに帰ってきたのを感じることによって障害物の場所が分かるのでは無いか?)
プレは試しに1割ほど魔力を込めて全周囲に放出する。
そして自分の魔力が返ってくるのをイメージする。
(…なるほど、どこに何があるのか感覚で分かる。帰ってきた魔力の形が猪の形をしていればそこに猪がいるというわけだ。短時間の間に探索魔法を連続使用するとどっちに向かって動いているかも分かるな)
(本気で魔力を放出したらどれくらいまで探査できるんだろう)
そう思い10割の全開の力の魔力を放出し探索魔法を使用する。
すると頭の中にこの辺り一体の物体の情報が入り込んでくる。
(入り込んでくる情報が多すぎて処理がしんどいな。ん?)
自分が探査できる最大距離付近に動物の集団がいる。
数は10匹ほどである。
この形はよく本で見かけるゴブリンに似ている。
こんな名もない森でゴブリンが出るのはおかしいはおかしいが念のため向かってみる。
プレにとって魔物を見るのは初めてであった。
そこにいたのはゴブリンであった。
ゴブリン達のうち一人が赤い三角巾を被っているので恐らくあれが隊長であろう。
ギギーーっ!
どうやらゴブリンに気づかれたようだ。
ゴブリン達のうちの1匹がこちらに向かって指をさす。
(本で読んだことはあるがこうやって魔物を見るのは初めてだ。動物とは比較にならない戦闘力、知性を備えている。魔物とは初めての戦いだ。負けるとは思わないが気を引き締めていこう。)
ゴブリン隊長が手を振り上げ、ゴブリン全員がこちらへ突っ込んでくる。
(ここは森の中だし、火の魔法は避けたいところだ。水の魔法だな)
魔力を全身に行き渡らせ魔法行使の準備をする。
(ウォーターカッター!!)
水は高圧で飛ばすことにより鋭い刃物並に物体を切ることができる。
それを各ゴブリンの頭をめがけて10本生成する。
たちまち水のレーザーが現れ正確にゴブリンの頭を貫いていく。
10体のゴブリンの頭から緑の鮮血が吹き出す。
(あまりいい光景ではないのは確かだな)
これで確認したゴブリンは全て倒したはずである。
念のため先ほど習得した探索魔法を使ってあたりを探してみるが他にゴブリンがいる様子はない。
(初めての魔物だったけど案外楽勝なもんだな。しかし何故この森に魔物が出てきたんだ?今までそんな様子はなかったと思うが)
本来、魔物は決められたエリアにしか出ないはずであり、この場所はそのエリアではない。
(となれば特殊な例外ということだったのか?それとも魔物が現れるエリアが広まっているのだろうか?
どちらにしよ今の俺が報告してもとりあってはくれないだろうし面倒くさいことになるのは確実だからこのままにするしかないのだが)
考えても仕方ないのでこの一件は保留ということにする。
探索魔法の実験の再開をすることにする。
地中にあるものを探せれるかどうかという実験を行う。
実験の結果としては「探索できる距離が極端に短くなるが探すことができる」
という結果になった。
空気だとほとんど減衰なしに魔力は伝わるのだろうが土の中だと減衰してしまうのだろう。
次に常時発動型にできないか、ということである。
魔力を発っしなければならないため普通の人の魔力量だとすぐに切れてしまうが俺の魔力量では切れてしまう心配はない。
そこで常に微弱な魔力を放出することによって半径20m以内のものは常時理解できるようになった。
しかし大量の情報を処理するため頭が疲れるという現象が起こった。
(これは、森とか入った時に常時発動させればいいな。普段から街の中でさえもやっていたら疲れるだけだ)
(よし、今日のところはこれぐらいにしておこう)
プレは今日習得することができた探索魔法に満足しながら
瞬間移動で地下室へと帰る。
この地下室、ちょっと前まではワープ先としてしか機能していなかったが最近は隠れ家的な扱いになっている。
見られてはまずいものなどこの部屋に入れておけばまず、見られる心配はない。
この地下室の地上の出口は巧妙にカモフラージュされている。
また地下室の中から外の出口付近に人がいないかどうかも見えるようになっているため
出入りの瞬間を人に見られる心配もない。
(隠し財産などはここに隠すのが一番安全だな。そのうちベッドとかソファーも持ってきて完全な部屋を作ろう)
プレの野望はまだまだ続くのであった。