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報われない恋

作者: 真雪







「私やっと付き合えたよ!今までありがとう」


彼女は嬉しそうな笑顔を見せながら、俺に向かって言った。

彼女が幸せならそれでいいと決めたのに、どこか胸が苦しい。

何か答えなければと思って絞り出した言葉は「おお」というたった2文字だった。


「反応薄っ。まぁ、本当に感謝してるよ。あんたにはずっと相談に乗ってもらったからね。最高の幼なじみだよ!」


俺が本当になりたかった存在は最高の幼なじみなかったんだけどなという気持ちは飲み込んで、その言葉に答える。


「ありがとう。じゃあいつまでも最高の幼なじみでいられるように頑張らないとな」


「だね。頑張って!」


「お前も俺にとっての最高の幼なじみになってくれよ」


「えーそれって今の私は最高の幼なじみじゃないってこと!?」


そう言って少し拗ねた風の彼女が可愛くて、無意識に笑みがこぼれる。


「いやいや冗談、最高の幼なじみだよ」


「そっか。よかった」


「それより今までみたいに俺とベタベタしてたら、彼氏に嫌われるんじゃないか?」


「そ、それは困る!っていうかそんなにベタベタしてないし」


「してると思うぞ」


「よし、わかった。少し距離を置く!」


「こうやって俺の部屋に普通に来てる時点で駄目だぞ!」


「え、そうなの!もう部屋にはいかない」


「それがいいと思うぞ」


「はい、ということになったから帰る!」


「おーさよなら〜」


「うん、バイバイ」





彼女が部屋を出て行く。


俺は引き止めたい衝動を抑えて彼女に背を向けた。




俺も本当に馬鹿だよな。

彼女と気まずくなるのが怖くて、今の関係が一番いいとか思ってたなんて。

こんなことになるぐらいだったら、もっと前に彼女に気持ちを伝えとけばよかった。

伝えてたら少しは何が変わってただろうか?

こんなこと今更考えても仕方がない。

伝えられる時はあったんだ、でもそれをせずに彼女とあいつをくっつけたのは俺なんだし。





彼女が好きな人が出来たと言ったのは春、入学して一ヶ月ほどたったときだった。

今まで恋沙汰なんて全くなかった彼女に、好きな人ができたなんて最初は信じられなかった。

どこかで彼女は好きなやつなんて出来るはずないから大丈夫だと思っていたのだ。

そんなことありえないのに。

そして何を思ったか俺は彼女に応援すると言ってしまった。

この時点で本当に馬鹿だ俺。




夏になって俺は彼女が好きだというあいつと仲良くなって、恥ずかしくて遊びに誘えない彼女の代わりにあいつを誘い、彼女も呼んで何度か遊んだ。

彼女とあいつの仲が深まるたびにドキドキしたな。

あいつの情けない姿とかを知って彼女が幻滅しないかなとか思ったっけ?

でも結局あいつのそういう姿を知って余計に彼女は好きになってたんだけど。




秋には彼女にあいつと友達以上になるにはどうすればいいか相談されたんだっけ?

はっきり言って俺は彼女にしか恋したことなかったから、逆に俺がそれを知りたかったぐらいだ。

確か俺は彼女に押してダメなら引いてみたらって言ったんだよな。

本当は彼女が引いてあいつが彼女のことを忘れてしまえばいいとか思ってたんだっけ?

そんな裏を知らずに、それを実行した彼女をみて少し罪悪感に襲われたよな。

まぁそれが上手くいったんだけど。




冬になってあいつが、彼女がこの頃よそよそしくなったけど嫌われたのかと相談してきた時、少し嫌な予感がした。

あいつははっきりと言った彼女が好きだと。

どうすればいいかと問われたが、それを聞いた俺はショックですぐには反応できなかった。

本当あの時の俺は惨めだったな。

今更だけど、俺の出る幕もうないじゃんと思ってしまった。

あいつと約一年一緒にいてあいつの良さはよくわかっていた。

あいつと彼女はお似合いだった。

今更反対なんてできなかった。

俺は言った告白するべきだと。





そして今日このざまだ。

本当どこまでも馬鹿で、報われない。

最後に俺がしてやれることは、あいつの親友でいて彼女の幼なじみであり続けることだ。

そして最後まで2人を見届けよう。




さよなら俺の初恋。










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