傷の手当て
「痛いっ!…いたたた」
「あまり動くな。…ところで、バードン君。君はなぜここにいるのかな?森へ帰ったと聞いていたが」
バードンは今まで唸り声を上げていたのを、いきなり止めた。
「ミドルさん。こんなのは不意うちですよ…まさかここがラーヴウッド家だとは思いませんでした」
そう言って鳥の姿で肩をすくめてみせる。
ミドルはきつめに包帯を縛り上げながら、口を片方だけつり上げた。
「その調子なら大丈夫だろうが、このケガじゃ4月は飛べないだろうな!しばらくは絶対安静だ」
翼を指でコツリとやられ、全身がブルリと震えた。
ー4月も…か
緑の生い茂る森を思い浮かべながらひとりごちた。
傷の痛みはひどいが、とりあえず安心
することができた。
ーしばらくは、世話になるか。伯爵もいないそうだし。
考えているうちに眠くなってきた。
ーよ…し。そうしよう。ふああ!
あくびをしてから一気に眠りに落ちた。
***
バードンが傷の手当てをうけている間、バンビアナ達は居間で茶をすすっていた。
「やはりラーヴウッド家は素晴らしいですね…それであれは?」
ヒースは興味津々といった顔をして、色々と話を聞いていた。
ー綺麗な顔してよくしゃべる人ね。何か探られている様な気がするのだけど…勘違いかしら
「ええ、勿論です!あれは我が家代々引き継がれる盾でして」
変な表情をしてしまわないように、満面の笑みを作ってみせる。
そこへちょうど獣医が戻ってきた。
「あら、もう終わりましたか?さあお座りになってお茶でも飲んでくださいな」
ティアンナがコポコポと紅茶を注ぐと、アールグレイの匂いが鼻をついた。
「ええ。どうも、いい香りですな」
一口飲んで、熱っ!と言ってからティーカップを置いた。
「鳥の傷の具合なんですが、あまり良くありません。ですから4月ほどは安静にしてください」
その言葉にバンビアナよりも先にヒースが反応した。
「4月もですか?!酷いな」
目をみはってそう言ってから、彼は優雅にマカロンを口に放り込んだ。
その一部始終をみていたバンビアナとヒースは目が合った。
思わず彼のグレーの瞳に引き込まれそうになる。
バンビアナは、はっとして獣医の方に
向き直った。
「私しっかりと世話を致しますので…それと鳥って話せるのですか?」