戦闘
バサバサ ギャアギャア
たくさんの黒い鳥が1ヶ所に集まって、そこだけ黒い集団ができているように見える。
時折そこに白い翼が見えたりする。
辺り一辺に黒やら白の羽が舞っているという異様な光景に目を奪われた。
どうやら鳥たちは戦っているみたいだ。
ふと窓際からその様子を見ていた女の元に、バタバタと足音が聞こえてきた。
「バンビアナ様!外がすごいことに…」
「…見ていますとも。凄まじい光景だわ」
あらかじめ後ろにひかえていた召し使いの男が、女の両肩に手を添えた。
「バンビアナ様、お体によろしくないかと」
女は肩にのせられた手を自らの手でどけた。
「ねえ、見える?あの中に一羽だけ真っ白な鳥がいるのよ。あんなにもたくさんの敵がいるのに、一人で立ち向かっているんだわ」
後ろの男には目もくれずに、未だに息を切らしている召し使いの娘に話し掛けた。
「ええ…バンビアナ様。どうしたらいいのでしょうね」
「ティアンナ、我々はどうすることもできないよ」
男が話に割って入ってきた。
「そんな…白い鳥が死んでしまうわ」
心配そうにティアンナが呟く。
すると、女はいきなり椅子から立ち上がって窓に手をかけた。
「「バンビアナ様!」」
召し使いの二人が一斉に彼女を止めようと制しにかかった。
しかし女は手際よく窓を開け放つと、2人を気にすることなく外に向かって叫んだ。
「白い鳥!!負けないでーーーー!!ボロボロになったら看病してあげるわーーー!」
そう叫び終えると、白い鳥が一瞬こちらを見たような気がした。
その鳥の体はひどく傷つき、所々出血している。
ああ、もうこの鳥はダメかもしれない。
そう思った瞬間、白い鳥が大きな翼を翻し、空中高くへと飛んでいく姿が見えた。
後ろにいる2人が息を飲んで見守っているのが分かった。
「まあ、どこにあんな力が残っていたのでしょうね!」
女が、そう口にした。
空中高く飛んだかと思えば、今度は体の向きを一気に変え、猛スピードで黒い集団に突っ込んでいった。
わあ…すごい。
胸の前で手を強く握り合わせる。
皆が注目する中、白い鳥は勢いよく羽を羽ばたかせ黒い鳥共を攻撃した。
みるみるうちに敵は飛んで逃げていってしまう。
「ヤツ、やりますね…」
男がふと声を漏らした。
「ふふ。本当に…あ、倒れた?!」
女が窓から身を乗り出して様子を伺うと、辺りに黒い鳥はいなくなっていたが白い鳥が一羽、羽を広げたまま倒れている姿があった。
「大変!お医者様をお呼びして!」
バンビアナは急いで部屋を飛び出した。