プロローグ(序章)
原案 1986年6月16日
最終稿 2012年4月9日
銀河戦争が終わってもう随分の月日がたつ。その全貌を語ろうとすれば何十冊もの本が必要になるだろう。この戦争は銀河を二分してかなり長い間続いていた。
更にその以前、現在、銀河群雄割拠時代と呼ばれる惑星国家間の戦国時代があった。そして、更にそのずっとずっと前、もう今では古代文明とまで言われる程、遠い昔、この銀河にかなり文化の発達した種族があって、数多くの植民惑星を有していたと言う。何でも自分達の惑星をこの銀河で初めて飛び出した種族らしい。
この種族を中心に銀河帝国が創られ、それはアルミドーナと呼ばれた。現在でいうところの第一次アルミドーナ帝国である。この帝国が崩壊したことによって群雄割拠時代を経て銀河戦争が始まったことは既に良く知られていることだ。
そしてちょうどその頃のアルミドーナに在ったのが、かの名高き大預言者リザルコフである。彼の遺した予言の中にあの『ザルドゥ伝説』がある。
もっともこの予言自体は随分と永いこと忘れ去られていて、銀河戦争の末期にアルバトール=マルタによって見いだされるまでは、ほとんど知るものはいなかった。彼が著した『ヴァルナ遺跡に残されし伝説』と言う本によって、それは日の目を見ることとなった。
この本の中に『ザルドゥ伝説』は含まれている。既にご存知の向きも多いかとは思うが、この『ザルドゥ伝説』の序文をここに引く。
――昔々、私たちは一つの帝国を持っていてとても幸せだった。しかしそれが崩壊した時から、私たちは長い長い混沌の中にいる。この果てしなく続く長い戦いの終わりは本当にあるのだろうか? 古〈いにしえ〉の帝国の偉大なる預言者リザルコフは言う『銀河の統一は五人のザルドゥが為し遂げる』と。あの日、私はヴァルナの遺跡でその碑文を見た。その時から私はこの予言がいつか真に叶う日が来ることを願う様になった。――
銀河暦第18世紀1793年8月56日記す。
この本は当時、爆発的な売れ行きを示した。
誰もがその予言を信じた訳ではなかったのだろうが、かといって誰もがそれを頭から否定した訳でもなかった。この予言は一つの希望だったのだ。
いつか五人のザルドゥが現れて、この永い戦争に終止符を打ってくれるという希望を…。
作者アルバトール=マルタについてはほとんど何も知られていない。その経歴については一切、伏されているからだ。
本に書かれている内容から考えて、おそらくは考古学と言語学に造詣が深いと思われるが、判ることはそれぐらいである。
これから語る物語はその銀河戦争の末期、後になって銀河統一戦争と呼ばれる様になった戦いを描くものである。物語はかの伝説に語られる五人のザルドゥ(と思われている者)達を中心に進めていく予定である。尚、ザルドゥとは古アルミドーナ語で異母兄弟姉妹のことを指している。
入力 2012年5月1日
校正 2012年6月22日