8 Phoenix (不死鳥)
「・・・・・・」
討伐レベル──。精霊を倒す難易度のことである。
レベル1がただの人間が10人集まって倒せる強さだ。
言葉にならなかった。
「・・・・ああ、貴様はまだ知らなかったな」
ザッ、とエラの隣にやってきたのはイリヤだった。
「イリヤ・・さん?」
エラが少し不安そうに言うと、
イリヤはちらりとエラに目をやり、イリヤで良いと小さな声で言った。
「奴の強さは異常だ。・・・・・・まず、肉体のレベルが次元単位で違う。」
イリヤは静かに、淡々と語りだした。
奴──モコロの肉体は異常だ。
本来、人造人間達には一個体に一つずつ、特殊な能力がある。
精霊と抹消するための力だ。
その力は、肉体のレベルによってパワーの限界値が決まる。
だが。
モコロの体は異常だった。
構造は従来の人造人間と変わらず、結構細身で、標準より少し低いくらいだろう、と予想されたのだが・・・・。
彼は、能力の最大限発動にも耐えうる身体をしていた。
彼は肉体へのダメージを、肉体の中で分解し、軽減していたのだ。
その軽減率はおよそ67%。彼は敵からの攻撃も、自分の肉体へのダメージも軽減していたのだ。
そして、体内で作られていく能力は、一定値溜まると、他の人造人間達は放出しなければならなかった。
膨大になりすぎた力は、諸刃の剣となり・・
自分の肉体にダメージを与えるからだ。
だが彼は、そのダメージすらも軽減できるのだ。
つまり。
彼は体内で限界まで能力を蓄積できるということだ。
そんな、デタラメなスキルを持っていた彼は
【不死鳥】。 そう、呼ばれるようになった。
実質、最強の攻撃型として・・・・・・。
+
「らぁああああ!!」
モコロは、銃を乱射しながら駆けていく。その弾は、乱発しているように見えても
ちゃんと命中していた。
だが、致命傷を与えるような傷ではなく、腕や足などの動きを奪うための
攻撃だった。
「さぁーて。この不死鳥、モコロ様が直々に!」
そう言って彼は、二丁の銃を自分の真上に放り投げた。
クルクルと回転しながら、二丁の拳銃は舞う。
「ぶちのめしてやらぁ・・・」
好戦的な笑みを浮かべたモコロ。
「炎の剣。右目は星、左目は闇。」
「唸る声は不死鳥の如く!」
キッと目の前の精霊達を睨みつけ、唱えた。
モコロの元に降ってきたのは・・・・二振りの剣。
それを両手に掴むと、ボウッと炎が灯る。
「行くぜぇ・・・・焔羅!!!」
残像が残るほどのスピードで駆け、
敵を切り刻み、敵が気付いた時には剣を収めている。
これが、焔羅である。
モコロは、その焔羅で、4体のドワーフ達を、一掃した。
ついでを言うと、ドワーフ達の討伐レベルは15である。
そして、不死鳥が剣を銃に戻した。
その時エラは、他の事に気を集中させていたのだった。