表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
99。  作者: ある。
3/13

2 Water named tears (涙という名の水)

「う…」

 瓦礫の山から声がした。そちらに振り向くと、そこには傷だらけで血まみれの老人がいた。

 おぼつかない足取りでこちらへ向かってきていた。

「マスター…」

 彼女は目を見開き、老人に駆け寄った。この老人が、彼女等人造人間の生みの親だった。

 マスターは、有名な科学者で、タイムマシーンという空想の中だった機械を作り出した人物だ。

 そんなマスターの最新の作品が人造人間達だった。マスターは温厚なできた人間だった。

 初対面の人でも、この人は優しいと感じる雰囲気をもっていた。

 笑顔をたやさなかった。そして今も、傷だらけのマスターは、彼女にむかって笑いかけていた。

「すまないね。君とは初対面なのにこんな見苦しい姿で」

 そう言って、マスターは苦しそうな顔をみせずにこりと笑んだ。

 それは、愛する者に向ける優しい眼差しだった。

「で、でもマスター傷痛くないの?」

 彼女は子供のように、心配そうに聞いた。

「ああ、心配ない。お前たちが幸せなら私も幸せだからさ」

 当然、というような口調で言う。

 マスターは優しく彼女を抱きしめた。

 彼女は、初めて触れた人の肌のぬくもりに、なんとも言えない心地よさを感じた。

「お前の名は、エラ・・・私の、最後の娘だよ」

 マスターは顔をあげて笑うと、目を閉じて穏やかな顔で、眠るように息を引き取った。

「マス、ター…?」

 彼女──エラは、肌が冷たくなっていくのを感じた

 おかしい、マスターがおかしい。

「マスター……おきてよ…………私まだ何もしてない」

「ぎゅってしてよ…・・・?マスター!」

 エラはマスターを抱きしめた。


「あれ。」

 エラの目には、一筋の雫がつたっていた。

「何これ、目から水がでてくる」

 エラはパニックに陥った。

 これまでの98の個体で涙を流した人造人間はいない。

 つまりエラにはこれがなんなのか、どうしてなのか、理解の外だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ