1 Alarm clock of the explosion (爆音の目覚まし時計)
ただ、黒い。視界に入るもの全てが真っ黒だった。
この状態を見えないというのだろうか。
見ることをまだ知らない、最後の試作品は1人思っていた。
目を固く閉じている彼女には何も見えておらず、真っ暗な世界が広がっていた。
水槽の中、一糸まとわぬ姿で眠るように目を閉じている彼女。
腰まである白銀の長い髪が、ゆらゆらと水中で揺れている。
髪と、水中の空気の泡で彼女の体は確認し辛いが、右のももにバーコードのような形で作品番号が刻まれていた。
『99』
それが彼女の試作品番号だった。
静かで、真っ暗な空間。何も聞こえてこない。
彼女の中で自らの意識が出来たとき、暗い空間をもがきだした。
行くあては無い・・否、分からない。
それでも彼女はこの暗闇に、急に感じた『恐怖』を振り払うためにもがいていた。ただ、ただ。
もがいていると、彼女の真っ黒な意識の中、光が見えた。青白い光だ。
それはかなり小さい光だったが、徐々に大きくなっていく。
そして、彼女がそこにもがきだそうとした瞬間───・・。
一般的な爆発音などでは無く、地響きとともに沢山の何かが爆発する音が、暗闇の中の彼女にまで響いてくる。
彼女の暗い意識の中、青白い光が真っ赤な光に変わり、黒い世界を一瞬で喰い尽くし、自分の世界の色に変えてしまった。
彼女が入っていた水槽が、大きな音をたてて割れた。ひびが入りそこから割れていくのではなく、
水槽の強化ガラス全てが音をたて粉々に吹き飛んだのだ。
「・・・・何。これ・・・?」
彼女が言葉を発した。
本来、人間の脳がある位置に彼女達人造人間は高性能のコンピューターがある。
それは、ただのコンピューターでは無く、いろいろなことを経験することで、データを得て
知識をみにつけ、学習し、より高性能なものになるというプログラム。
学習するということがプログラミングされているのだ。
そして、そのデータを他の者の頭に送信することも可能であり、99番目の、最後につくられた彼女には、残り全ての試作品のデータが詰まっていた。
目覚めたばかりの彼女は、自分が生まれた理由も、戦うべき相手も、知っていた。
だが、彼女は自分の目の前で何が起こっているのか分からなかった。
目の前が真っ赤なのだ。何故か、燃えているのだ。自分がつくられた研究所が。
燃えているのだ。