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99。  作者: ある。
11/13

10 Darkness-colored capriccio (暗黒色の狂想曲)


「夜を照らす、月の光は、」


レンは唱えつつ、自分の腰の得物に手をかける。

スッと音も無く抜かれたそれは、柄も刃も、黒一色だった。

漆黒の刀の名は、鬼黒(きくろ)

レンは右手に持った鬼黒を、自分の目の前にかまえた。


「太陽に焦がれて闇を統べる」


そう唱えた刹那、レンの暗い紫の瞳から鈍く、怪しい光がこぼれた。

その光は、鬼黒の刀身に淡い、紫の光が灯った。


「惑え、月夜の闇に──・・・」


その言葉に反応するかの様に、鬼黒(きくろ)から黒い煙の様なものが──。


シャラ・・・シャラ。金属音が聞こえる。


シャンッ、そんな音がして──、いや。

音と同じくらいのはやさで、刃が黒煙の立ち込める空を、真っ二つに斬った。



斬ったのは、レンだった。一般的な長さだった鬼黒は、

身の丈程もある長剣に。そしてその柄からは、黒い黒い鎖が付いていた。

鬼黒の刀身は、淡い紫に怪しく光る。

それだけで幻想的な何かを思わせる。



ガチャリ、ガチャリ。

先ほどまで何もしていなかったフィオナが、行動を起こした。

彼女のまとうロングコートの中から、一丁、二丁、・・拳銃が現れる。



「黒を好む影の支配者は、」



鋼色が影に映える。


「白を妬み、拒絶する───」



彼女が構えていた、一般的な銃は黒い影で覆われ・・・

その姿を鋼色から、影の様な漆黒になっていた。



フィオナとレンは、背中を預けるように、


背中合わせに立った。



「フィオナ、行くぜ?」

レンは少しだけ口角をあげ、言った。

「ああ、」



フィオナは少しの間、目を閉じた。



カッと開くと、銃をクルルルルと回転させる。


チャキッという音と同時に止まったかと思うと、



素早く連射した。



彼女の銃からは、音は発されない。


たった数秒の間に膨大な量の弾が発射される。

その弾は、レンとフィオナを中心にして、

円をかくように飛んでいく。




黒雨(くろう)


弾が弾けて、中から黒いものが染み出す。

コップの中の水が零れたかの様にその空に黒い染みが出来ていく。

何処までも黒く、一切の光を受け付けないその黒を、闇という。


そして闇は恐ろしいスピードで空気を侵食し、

その場を覆った。


これがフィオナの黒雨(くろう)の正体である。



「おいおいお前ら!大物の相手すんのは俺だ!取んなよぉ」



先ほどまで暴れていた不死鳥(フェニックス)が駄々をこねる。


「お前はさっきまで暴れてたろ阿呆鳥。」

「阿呆鳥にばかり仕事をさせてたまるか」

二人して、モコロを阿呆鳥(あほどり)と挑発する。


「阿呆鳥って言うんじゃねえ!!」

レン達に阿呆鳥と言われるモコロを、

哀れだなぁ、と見つめるエラ。

阿呆らし。と呆れ顔でため息をついているイリヤ。

賑やかだなぁと一人のんきなのはココ。



「おい、エラ。」

レンは周囲をじっと見回しながら言った。

「・・・やってますー」

エラは、黒雨(くろう)によって範囲が狭まった空を、念入りに感じ取る。

「この外には出してねェ、いる筈だ」

「・・・・・・・・・・・そこっ!」

とっさに風で小さな刃をつくり、シュンッと飛ばす。

ギギギギと人間ではないものの小さな悲鳴が聞こえた。

スッと今迄姿がなかった場所に、小さな精霊が現れた。

人間で言う右肩の位置に風の刃が刺さっているのがわかる。

そこからは、黒い血のような液体がしたたる。


シャララ・・金属音がしたと思うと、ウェンディゴを縛るように、

鎖が巻きついた。


「捕獲・・・!」


レンが刀を投げるようにかまえ、


「くたばれ」


ウェンディゴにむけて、投げるように突き刺した。




グギャアアアア!と奇声をあげて、ウェンディゴは、


黒い灰の様なものになって、消えた。



パリン、とガラスが割れるように、黒雨で出来た闇の壁が消えた。



                 +

  


「ふーん?なかなかやるみたいだねぇ、人造人間も」

そう言って、クスクスと笑うのは

ショートカットの燃えるような朱の髪の女。

「私だって人造人間よ?」

赤い髪がドリル状に巻いた髪を揺らし、もう1人の女は答える。


「姉貴、ルジェ。・・あんまデカい声で喋ってっとバレんぞ?」

先ほどの女と同じ、朱色の髪で、クセがある。

背丈や、声からして男だとわかる。


「・・・リン、あなたは心配性すぎよ」

ルジェと呼ばれた、女は「ねぇ、サラ」と付け足す。

「そうね。・・・ま、それがリンのいい所なのかあたしには分からないけど」

サラと呼ばれた、朱の髪の女は答えた。



彼女等は、ひっそりと見ていたのだ。


エラ達が精霊を滅却(ころ)す所を────。

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