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99。  作者: ある。
10/13

9 A traveler. (旅行者。)


空気の震えが風を通して自分に伝わってくる。



エラは風による感知で、ウェンディゴを探した。


ウェンディゴ。

旅人の精霊で、姿と気配を消すことを得意とする。

その為、背後を取られたら一撃でやられてしまうことも少なくはない。




エラは、そのためにウェンディゴを探していた。




「・・・・・・・空気の震えが弱い・・・・・・・・・・ッッッ!!!」



エラは目を見開きココの方へと振り向いた。


そして、ココを指差し、素早く唱える。


斬空(きりそら)!」


フッと小さめの、人型の精霊が突如姿を見せた。

とんがり帽子を深くかぶり、服のような黒い布を身にまとっていた。

ギラ。精霊──ウェンディゴの懐から刃物が取り出される。

そして、ココの背中に振り下ろされる・・・・。

そこまでの動作は、瞬きひとつのはやさで繰り出す。

強い。

                      ・・

明らかに、今先ほどまでモコロが相手をしていた雑魚より


圧倒的な強さを誇っていた。




そして、

討伐レベルが30以上の精霊が現れるのは稀なのだ。




それも、レベル40にもなるようなものは、本当に稀で──・・・





「っや、」


ココが気付き、小さく悲鳴をあげた。

その時もう、ココの背中と刃物の距離は数ミリ程度だった。




キィィン。突如聞こえる金属音。

ウェンディゴの刃と、ココの背中すれすれの場所で、

ウェンディゴの刃が止まった。


目に見えない、風の防御壁。

その風は荒い風。触れれば刃物に触れたかの様に、斬れる。

空に一枚の、見えない盾を作り出す。


これがエラの斬空(きりそら)である。



「!!!」


ウェンディゴは一瞬、本当にほんの、一瞬だけ驚いた様に身体を強張らせた・



が───。



また空と同化するように、霧のように消えてしまう。






「いちいち消えて、面倒臭ェな。・・・・・・フィオナ。」

レンがちら、とフィオナに目をやった。

「・・・・・わかった。」

察したのか、フィオナは銃を取り出し、かまえる。

二人はニヤ、と怪しげな笑みを浮かべた。


               +


ここで、人造人間達の特殊能力について、詳しく知る必要がある。


まず、人造人間達は、人間が血をつくるのと同じく、

何気なく力を生み出している。


あくまで人間の肉体であるため、生み出した全てを蓄積することは不可能だ。


このため、生み出した力の全てを蓄積できるモコロは優位な訳だ。


力の蓄積が、限界に近くなれば戦い、力を放出する。



これが人造人間の特殊能力のシステムだ。




・・・・実を言うと、限界を超えても、少しなら蓄積することができる。



否、蓄積され続ける。


人が自分で、血をつくるのを止められないように、

また人造人間達は能力をつくるのを止められないのだ。


そして蓄積されるのも、またプログラミングされたものであり、

止めることは不可能なのだ。



そして、たまり続けた力はしだいに増幅し、膨張していく。



最期には、人の形を保てなくなり・・・・・死に至る。



まあ、基本的平等に精霊討伐に狩りだされるため、


力が暴走するなんてことは、過去にも一度たりとも無いのだが・・・




この力は、



人造人間の力であると同時に、命を縛る鎖でもある。


それだけは理解しなければならない。

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