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第2話「覚醒」

                    第2話「覚醒」




「・・・ぐっ、ごほっ・・・」


 目の覚めた俺の前には見慣れたダンジョンの天井が広がっていた。体を起こし、辺りを見回すと目覚めたばかりでぼやけていた記憶がはっきりとよみがえった。思わず体を硬くし嫌な汗をかきながらあのモンスターがいた場所に目を向けるとそこに漆黒の翼は見えなかった。止めていた息を吐き出しながら自分の体がどうなったのか確認しているとふと、違和感を感じた。


(装備が・・・合ってないのか?)


 最近新調したはずの装備がきついのである。試しに立ち上がると今まで見えていた景色と違うところがある。何が起こったか分からないが俺の体は10cmほど高くなっているらしい。今までが175cmくらいだったことを考えると185cm・・・背が伸びた!などと場違いなことを考えている間にさらに体の違和感の正体がわかる。全体的に筋肉質になっているのだ。マッチョとまでは行かないがかなり引き締まっている、これが細マッチョと言うものだろうと自己完結し、俺の体が別人になってしまったのではないかと心配になった俺は本格的に体を確認してみることにした。



 30分ほどかけて体を確認した結果、先ほどの2つに加え黒かったはずの髪が深い青に、声は少し低くなり、顔|(鏡がないので手で触った感覚)も変わっていた。そして身体能力が格段に上がっていることがわかった。なぜ身体能力のことが分かったかというと動揺のせいで隠れることもせずに体を確認していた俺を見つけて襲い掛かってきたモンスターが一発の蹴りで絶命したからだ。腹を狙った蹴りだったがそのまま貫通してしまい結構スプラッタなことになった。


(いったい俺の体はどうなっちまったんだ・・・)


 急激な体の変化に戸惑いが隠せなかった俺だが意識を失う前に受けていた毒や呪い、自分の体のことを知るためにもひとまずダンジョンを抜けて知り合いの医者のところで検査を受けようと決める。体に合わなくなった装備は勿体無いがここに残していくことにして再び出口へ歩き出そうとしたそのとき


「きゃーーーーーーーーー」


と女性というよりは少女とのものだろう高い声で悲鳴が響く。


 正直なことを言えば色々なことがあったし、今この辺りをうろつけばあの翼を持ったモンスターの出会う可能性もあるがそんなことを考える前に俺の足は声のした方向へ走り出していた。そんな自分の性格を恨みながらも驚異的な脚力でダンジョンをかけていくのだった。





 1分ほど走ったその場所へついた俺の目に飛び込んできたのは血の海に倒れる数名の冒険者と思われる人間と一番出会いたくなかった翼のモンスター、そしてそいつと対峙している冒険者だった。


「む?もう一人いたのか、それとも先ほどの悲鳴に呼ばれたのか。なんにせよ不運な奴だ」

「あ、貴方!逃げて!早く!!」


 それぞれの言葉を聞きながらどう行動するべきか考える。対峙している少女冒険者の慌てようから察するに圧倒的な差を見せ付けられたのだろう。対峙していたと思っていたものの体はあちこちに傷がありまさに満身創痍。立っているのがやっとなのだろう足が震えている。


「せっかく助けに来たのに逃げてはないんじゃないか?」


 必死で虚勢を張りつつ少女のほうへ進む。近づいてきた俺に驚いているようだが諦めたような顔になると何もせずたたずんでいる翼のモンスターへ鋭い眼光を向ける。


「どうせ逃げても無駄なことだ。そういう意味では貴様の判断は正しかろう。どっちにしても死ぬことには変わらん。せいぜい足掻くといい」


 俺が来たことにも相手は余裕の態度を崩さない。完全になめられているだろうことに怒りを感じながらも必死に抵抗しようとしている少女へ小声で話しかける


(俺が時間を稼ぐ、その間に出口に向かえ。ここからならそう遠くないはずだ)

(ふざけないで下さい。私は騎士(ナイト)です。貴方一人に任せて私だけ逃げ出すことなんてできません。第一防具もつけてない貴方に何ができるんですか!)


 少女に言われてさっき防具は捨ててきたことを思い出す。ただでも相手が強いと言うのに防具がないなんてどうすればいいんだと焦っているところに無情な声が響く。


「話し合いは終わったか?我も暇という訳ではないのでな。そろそろ死んでもらおう」


 その言葉が終わると同時背中の翼を広げすさまじい速度で突っ込んでくる。



~少女side~


 私が漆黒の翼を持ったモンスターに襲われているところに突然乱入してきた青い髪の男の人。あのモンスターの力で次々と倒れていく仲間を見ていた私が逃げてと言ったにもかかわらず私の元へ寄ってくる。正直私は馬鹿じゃないかと思った。防具もつけずに何ができると言うのか。その後逆に逃げろと言われてそのことを言い返してやったらキョトンとした顔で見られた。

 そんなことをしている間にあのモンスターから声がかかり突っ込んでくる。なんとか仲間の敵を討とうとしている私をあざ笑うかのようなすさまじい速度で。


(仲間達の中で一番新米だった私じゃやっぱりダメなんだ。みんなごめんね・・・)


 そう仲間に謝り目を閉じてくるであろう衝撃と痛みに備える。けれどいつまで経っても何も起こらない。


「なん・・・だと・・・」


 さらにはあの悪魔のような相手から驚愕の声が上がるのを聞いて私は恐る恐る目を開けるとそこには・・・。



~咲夜side~


 目の前には驚愕の表情を浮かべる悪魔のようなモンスター。それもそのはず、なめていた俺が剣を持っていないほうの手で腕を掴んで攻撃をとめているのだから。だが一番驚いているのは攻撃を止めた俺自身だ。今までなら反応できなかったであろう動きがしっかりと見えるのである。


「なん・・・だと・・・」


 やれると思った。自分の力がどうなったのか分かっていなかったがこれならこのモンスターを倒せると。翼を羽ばたかせ一旦距離をとる相手を見ながら俺は剣の柄を握り締めた。


「まさか我の攻撃を止めるとはな。フフフ・・・。どうやらただの命知らずではないらしい」

「その余裕な態度。俺が後悔させてやる!」

「ほぅ、やれるものならやってみるがいい。我が名はバハム、貴様等を殺すものだ」

「俺は影峰咲夜。お前を倒す!」


 お互いの名を名乗りあった後、命のやり取り特有の緊迫感が辺りを包む。一瞬の静寂のあと動いたのは同時だった。バハムは先ほどよりもさらに早い動きで俺のわき腹へ回し蹴りを放つ。その蹴りを片手で受け止めるとバハムの肩めがけて剣を振り下ろす、とっさに反応して身を引くバハムだが剣の先端が浅く胸を切り裂いた。


「我が傷を追うのは久しぶりとは。貴様の言うとおり力を温存するほどの余裕はなさそうだな」


 そう言ってなにかの呪文を唱えるとバハムの両手を淡く紫の光が包む。


「あいにく魔法は苦手でな。手を魔力で包むくらいしかできんがこれでも威力はあがる。どこまで我を楽しませてくれるか」

「いいのか。そんなにぺらぺら喋って?後悔しても知らんぞ」

「この程度喋ったところで問題なかろう。むしろこれで我が負けるようなら我がそこまでの話だったということだろう」


 その潔さに少し感銘を受ける俺だがそれはそれ。あまり長引かせると少女も衰弱してしまうだろうと考え今度はこちらから踏み込む。

 頭めがけて上段からの切り下ろし。しかしバハムはかわすそぶりも見せず剣の軌道に両手を出してくる。渾身の力で手ごと切ろうとするが剣はバハムの手のひらから進まなくなった


「なっ!」


 バハムはニヤリと口を歪めると俺のがら空きの腹に膝蹴りが入る。


「ごふっ!」


 数m後ろに飛ばされる俺に休む間を与えさせるわけもなく俺から奪った剣を投げ捨てると顎に掌底、浮いたところで回し蹴りをわき腹に決められる。


「ぐぁぁ!」


 蹴りの勢いで壁に打ち付けられた衝撃と先ほどの掌底で飛びそうな意識を必死で繋ぎ止める。再び余裕を取り戻したバハムはゆったりとこちらに向かってくる。


「ふっ。まぁ人間にしてはよくやったほうだろう。我に本気を出させたとあの世で誇るがいい」

「ま、負けないでっ!」


 血だらけになりながらも気丈に立っていた少女の声が聞こえる。あの気高さを思い出し萎えかけていた心に喝をいれしっかりと大地を踏みしめる。バハムが含み笑いを隠したような驚きの表情をつくり口を開こうとするが、声が発せられる前に俺のこぶしが左ほほに突き刺さった。

 数回バウンドし地面を転がるが背中で折りたたんでいた翼を広げ体勢を立て直す。その間に俺は追撃に入り、喋る間もない打ち合いが開始される。最初は互角な戦いをしていた両者だが、だんだんと俺の攻撃がバハムの防御を上回るようになってきた。

 バハムの右ストレートを受け止めると、先ほど吹き飛ばされたお返しとばかりに今度は俺の回し蹴りが突き刺さる。

 これで終わらせるという思いと共に印を結ぶと俺の右手に魔力を集める。


「徒手爆砕拳!おおおおおおぉぉぉぉぉ!!」


 俺の魔力によって青く光る手がバハムの腹を貫き、次いで爆発がおこりバハムを吹き飛ばす。


「ぐあぁぁぁぁ・・・。まさか・・・我が人間ごときに、だが面白かったぞ」


 その言葉を最後にバハムの体は灰となり、俺の最初の激闘は幕を閉じた。


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