第三話
「――未来」
あなたは誰を見ているの?
少なくとも、私じゃない。きっと、『心のない私』を見てる。
「なあに、みお」
そっと、両手を広げて未来を抱きしめる。
すると、未来は驚いたように持っていた絵本を床に落とした。
「みお?」
「私のこと、好き?」
「⋯うん」
答えは最初から知ってる。でも、ごめんね。『私』はもう死んじゃったんだ。
「そっか」
小さく息を吐いて、苦笑いをする。
ああ、やっぱり。
未来の「好き」はちょっと壊れていた。
でも、もう大丈夫だよ。未来はちゃんと元に戻れるから。ちゃんと、戻すから。
「ごめんね」
狂わしてごめんね。苦しくしてごめんね。考えさせてごめんね。
「どうして、あやまるの?」
未来の気持ちに答えられなくてごめんね。受け入れることが出来なくてごめんね。
「未来」
手を離して、未来と向かい合う。未来はずっときょとんとしたまんまで、私をじっと見ている。
「もう大丈夫だよ。未来は幸せになれる」
ベッドの下に隠しておいた包丁を、そっと手に取る。
未来はそれを見ても、動かなかった。
信じているからだ。
私が、死なないということを。
「だから、正気に戻ってね」
刃が、肌に触れる。
冷たい。でも、それでいい。
未来が気づいてくれるなら。
「澪?」
もう、遅いよ。
痛みは思ったよりも短かった。
最後に見えたのは、崩れる未来の顔。
ああ、これで。
――これで、終わる。




