180cmの小鳥遊さん《雨宿り編》
森陽翔〈もり はると〉:主人公。身長167cm。
小鳥遊桃音〈たかなし もね〉:森陽翔曰く「森身長180cmの並外れたスタイルと肩にかかる真っ直ぐな黒髪が生み出すアンニュイな雰囲気に加え、常にスラックス&黒マスクの彼女はスレンダーな体型ゆえにぱっと見だと男に見えるのに、黒マスクに唯一隠されていないその目が二重でぱっちりとしているのは反則級のギャップだ!とクラスの女子が評していた。」らしい。
期末テスト最終日。十二月らしい冷たい空気の中、電車を降りると身体の芯まで寒さが染みた。
「ドアが閉まります。ご注意下さい」
アナウンスが響くホームを歩きながら、山田たちは今頃カラオケだろうかと考える。テスト終わりは遊ぶ口実には十分だが、誘いを断りきれずに出費が重なり、俺の小遣いはすでに底をついていた。ノリが悪いと思われたかもしれない。
改札へ向かう途中、人混みの中に頭一つ抜けた見覚えのある姿を見つける。
「小鳥遊?」
声を掛けると、隣にいたお婆さんが困ったように笑った。郵便局の場所が分からず、彼女に聞いているうちに電車を逃したらしい。
「あーそういうことっすか…郵便局なら歩いて10分もかからないっすよ。よければ俺、一緒に行きましょうか?」
「まぁ!ありがとうねぇ。お願いします」
「俺の家も郵便局方面だしついでだから、小鳥遊はこのまま次の電車待つといいかも!」
そう言って歩き出そうとすると、
「…次の電車まで1時間あるから」
と小鳥遊は呟いた。
雨が降り出すと、小鳥遊は迷いなく傘を広げ、お婆さんに寄り添った。俺は少し前を一人で歩く。人見知りで、ほとんど話したこともない彼女の行動が、どうにも掴めない。
郵便局に送り届けた帰り道、小鳥遊がぽつりと呟いた。
「……図書館、一緒に行こうよ。数学、教えて」
戸惑っているうちに彼女は歩き出し、「借りてた本も返したいから」と付け加えた。
気付けば図書館の机で向かい合い、数学の問題を解いていた。
「第三象限だから、このcosθはマイナスになって…」
説明すると、彼女は真剣な顔で頷く。
「…数学の授業さ、毎回ランダムなグループで問題解いてくじゃん。」
いきなり喋り出したのに動揺してしまい不自然な調子で相槌を打つ。
「で、数学が得意な人ほどどんどん解いていっちゃうんだけど」
「私最初の方で詰まっちゃってさ。でも教えてほしくても聞けない」
「そんなとき必ず、森陽翔は気づいて声を掛けてくれる」
「本当に助けてもらってる、から……ありがとう」
その言葉に、胸が詰まる。
肩に軽く触れられ、差し出されたのはキャラメルだった。黄色い箱から一粒、手のひらに落とされる。黒マスクを外した彼女の横顔は、驚くほど綺麗で、直視できずに視線を逸らした。
口に含んだキャラメルは最初は固い。でも噛むほどに甘さが広がる。
肩に残るぬくもりと、胸の奥で弾ける淡い感情は、ゆっくり溶けるその甘さに、どこか似ていた。
下野紘さんと巽悠衣子さんが朗読してくださるとお聞きした瞬間、この物語が浮かびました。
元々、ぼんやりと構想していた話でこの機会に形にして皆さんに楽しんでいただきたい!と書き殴りました。
ご拝読いただきありがとうございましたm(_ _)m




