9/14
偽りの接吻
私のこと、好き?
そう訊くと必ず優しく微笑んで、好きだよと答えてくれる。
やさしいキスも、抱擁も、私を愛してくれていると、
本気で、勘違いしそうになる。
でもね、知っているの。
あなたが本当に愛しているのは、あのひと。
私とよく似た、艶やかな黒髪、華奢な体躯、涼やかな声、薔薇色の唇の、
私を抱きながら、想っているのは他のひとの妻になった、
私のお姉様。
身代わりでもいい、
重ねて見つめられるのも構わない。
貴方が私のものになるのなら。
気づかないふりで、
ずっといるわ。
貴方からの偽りのキス、
甘くて苦い、
痛みと共に、
これからも―――。