辛くない、辛くないけど今は泣かせて
こっちに駆け寄ってくる、あの子の笑顔で全部わかった。
上手くいったんだ。
「――うわあんっ、うれしいよう~!」
勢いのままあたしに抱き付いて、半泣き顔の友人をヨシヨシと宥める。
「ありがと、ホント、協力してくれてありがと~!」
「ちょっと落ち着きなよ。で、ヤツ、何て言ってオッケーしたの?」
あたしがクスクス笑いながら尋ねると、少し落ち着いたのかポッと頬を赤らめて、もじもじする。
可愛いわね、まったく。
「……あのね、俺もずっと気になってたっ…て。話、聞いたりしてたから、前から親しい様な気持ちだったし、付き合うの、オッケーだって」
「そっか」
「やっぱりいろいろ、協力してくれてたんだね! 話って、朱花ちゃんがしてくれてたんでしょ? 大切な幼なじみの親友だから、大事にするよって言ってくれたの…!」
見たこともないくらい、綺麗で可愛らしい笑顔にチクリと痛む、胸の奥。
あたしたちが話終えるのを待っていたのか、ヤツがゆっくりとこちらへやって来る。
僅かに笑んで。
腐れ縁の幼なじみ、
親友の好きな相手、
あなたを幸せにすることが出来るのは、
あたしじゃない他のひと。
あたしがあなたのために出来ること、
何でもするから、
幸せになって。
心の奥、シクシク泣いているあたしがいるけれど、
辛くはないよ。
あなたが笑っているから、
辛くはない、
辛くはないけど、
心の中だけ、
今は泣かせて―――。