悪い事をしていればいつか自分に返る~聖女は淡々と眺め語る~
エミリア・バーストはバースト辺境伯の娘。
辺境伯令嬢であり、聖女でもあった。
しかし、母違いの妹にたらし込まれた婚約者もとい王太子レグルスに婚約破棄と追放を言い渡される。
エミリアはあきれながらそれを見ていると──
「偽聖女エミリア! お前を聖女を騙った罪で追放する‼ そして婚約破棄だ‼」
と、馬鹿王子がのたまった。
私はエミリア・バースト。バースト辺境伯の娘で聖女だ。
この国には聖女と王太子が結婚する習わしがある。
が、何故かこの国の王太子であり第一王子のレグルス殿下は私の義妹にたらし込まれている。
私とは違う豊満な体で。
仕方ないでしょう、父が領地に戻って早六年。
私が王都で暮らして六年。
学業と聖女の仕事をして六年間。
この六年間、義母達にロクに食べさせて貰って居ないのだから。
「はい、わかりましたでは──」
「「何をやっているこの馬鹿息子/馬鹿娘がああああ‼‼」」
聞き慣れた声と、久しぶりに聞いた声が耳に届きました。
鈍く殴る音と、バチン!と頬を叩く音が聞こえました。
「国王陛下、お父様」
「エミリア! 遅くなってすまない! 遠方でも監視しているつもりだったが、監視している輩が賄賂であの女から買収されていたと気付いたのだ、王族の影の報告で!」
「すぐ来れなかった理由は?」
「魔物の異常発生が発生しまくっていてようやく落ち着いたから早馬でやって来たらこの有様だ。シンディ。お前とお前の母親とは縁を切る! お前の母と結婚したのが間違いだった!」
「お父様! 未来の王太子妃を捨てるの⁈」
妹──シンディは驚いていますが、そこに国王様が。
「レグルスは廃嫡だ、女に誑かされて聖女を蔑ろにする国王なんぞいらん!」
国王様がそう言うと、王太子──レグルス殿下は真っ青。
「ひ、一人息子の私がいなければ国が滅びますよ!」
「私の存在をお忘れかな、レグルス王子」
国王陛下の後ろから、若い男性が現れました。
国王陛下の年の離れた弟君、王弟であり、大公のクレスト様です。
レグルス王子よりも、心なしか美形に見えますし……それでいて言葉に重みが何か感じられます。
「お前を廃嫡し、クレストを次期国王とする」
「そんな!」
レグルス殿下は妹を突き飛ばし私にすがりついてきました。
「なぁ、エミリア! 君から父上を説得してくれ! 君と私の仲じゃ無いか‼」
「ええ、そうですね。シンディが私を突き飛ばしているのを嗤って見ていたり、私が祈りを捧げていると水を浴びせてくるシンディと同調して私を嗤ったり……」
国王様と、お父様の顔が真っ赤に染まります。
大丈夫でしょうか?
「……なぁバースト辺境伯、この馬鹿共をどうする」
「処刑してしまいましょう、陛下。このような馬鹿を二度と産まぬ為に」
そう言うと二人はひっと悲鳴を上げました。
そうですよね、殺されるかもしれないのですから。
「兄上、バースト辺境伯。自称聖女と元王太子には今後スタンピードが発生している地域に行って貰いましょう。一応聖女なのでしょう? 王太子として剣を習っていたのでしょう? なら役に立って貰いましょう」
クレスト大公様、何でも無い涼しい顔して結構恐ろしいこと言いますね。
無能二人には死刑宣告よりも残酷ですよ、これ。
だって死刑は一瞬。
でも魔物に食われるのは一瞬かどうかは運次第。
生きながらに食われることだってある。
顔面蒼白の二人を見て、国王様はおっしゃいました。
「うむ、アベル。お前の案を採用しよう、連れて行け」
悲鳴を上げて連れて行かれる二人。
哀れ、とは思いますが、元々は向こうが悪いのですよ。
「で、バースト辺境伯。後妻はどうするのだ」
「私物を全て売りに出させ、身一つで追い出します。私物が売れた代金はエミリアに任せようかと」
「後妻の実家にも連絡をしなくては、聖女をいたぶったから離縁されたとね」
「そうですな、クレスト大公殿下」
クレスト様は長い金色の髪をわずかに揺らし、青い目で私を見据えました。
銀色の髪に紫の目の私を見つめます。
「ついでにシンディと辺境伯の血がつながっているかも調べよう」
辺境のスタンピードが頻発する地域に連行される間に、再度父と後妻、妹の血縁関係を調べられました。
最初調べたときは一致したそうですが、今回は不一致。
後妻は私のものをこっそり隠し持って調べさせたそうです。
偽装です。
結果、後妻──継母は平民落ち、シンディも平民落ちのようなもの。
しばらくして、継母が死んだ事を伝えられました。
なんでも、男達を騙して金を得ていたことで、恨みを買い、男達に殺されたそうです、めった刺し。
シンディとレグルスは、辺境の地で魔物の討伐に加えられ──
わずか二日で使い物にならなくなり、一生ベッドの上で暮らす生活を余儀なくされたそうです。
下の世話も、何もかも他人任せ。
世話役に酷く扱われて泣いて暮らしているそうです。
普通魔物の討伐でそうなった人は大切に扱われますが、この二人は罪人。
それに当てはまらなかったのでしょう。
学校をようやく卒業し、結婚式を挙げます。
父は何度も、不甲斐ない父ですまなかったとわびますが、父のいる場所では仮面を被っているような気がして、でも信用したい気持ちも少しあって信用できると思った者に監視させたのに、それが賄賂で嘘の報告をしていたというのは父の落ち度もありますが、父が完全に悪い訳では無いのは分かります。
もし、知っていたら即座に来て離縁しているでしょうから。
父と継母が結婚したのは、父の上司のすすめでした。
継母の家とは親戚。
だから拒否できなかったといっていますし、上司も飛ばされたので二度とこういったことは無いでしょう。
父の家は父の弟の次男坊が継いでくれるそうです。
優秀なあの子になら任せられるでしょう。
「我が花嫁、何を考えているのですかね?」
「父の家を継ぐ子は優秀だから任せられると思っていたのです」
「カルロス令息か、彼なら確かに」
頷いてから、私にキスをしました。
「でも、今は式のことを考えてほしいですね」
「すみません……」
「いえ、いいのですよ」
私はにこりと笑い式に臨みました。
晴れやかに青空が広がる下で、私達は誓いの口づけをしました。
花ビラが舞ってきました。
祝福してくれるかのように──
練習に短編を書いたり、あれこれちょっと考えたりしています。
今回の話は婚約破棄した相手と浮気相手が破滅するものです。
エミリアは、少し年上ですが理知的な次期国王の妻になるので次期王妃確定です。
アベルは微笑みながら言っています、色んな案を。
レグルスが国王に相応しくないのを見抜いていたからでしょう。
多分、裏で処分された人が多数いると思います。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
他の作品も読んでくださるとうれしいです。