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マシュマロ闘病記 ~FIP(猫伝染性腹膜炎)~  作者: 柏井猫好


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3/7

3. 治療開始!

 マシュマロの検査結果が出た当日。幸いにも薬は動物病院に在庫があったようで、すぐに薬による治療を開始することができた。


 処方された薬はモルヌピラビルで、薬にかかる費用は1ヶ月で5万5千円ほど。ただし、体重によって処方される量は変わるので、これからもう少し増えていくだろうとのこと。治療にかかる3ケ月の合計費用は20万円ほどに抑えられるのではないか、とのことだった。


 海外で生産されている薬で、日本製のものに比べてかなり価格が安く設定されているようだ。ネットで検索しても、同じ薬を使って治療している動物病院でも、同程度の価格帯を提示しているところがあった。

 

 想像して欲しい。破産するかもしれないと怯えていた、しがない事務職で中学生の子供を抱えるシングルマザーのこの時の心境を。裕福ではない私に20万円の出費は痛いが、節約すれば捻出できる額だ。


 ――100万円もしなくて、良かったー!!!!


 人目がなければ安堵で踊りだしていたかもしれない。いや、マシュマロが必死に病気と闘っているのに、踊ったりするのは不謹慎かもしれないが、それくらいホッとしたのだ。


 服薬開始時、マシュマロは処方されていたステロイド剤のおかげで1日の内、熱が下がっていた時間が長く、食欲も少しずつでてきてはいたが、まだ完食には至っていなかった。ドライフードに粉状の薬をかけて残されてしまっては、薬を摂取できないかもしれない。

 そのため、私は薬指の先ほどの量の液状おやつに薬を混ぜ、コンビニなどでもらえる、デザート用の小さいプラスチック製のスプーンの背に乗せ、マシュマロの上顎に擦り付ける形で薬を与えていた。しかしながら、この方法はスプーンが破損して猫が怪我をする可能性があるので、注意が必要だ。


 薬の服用を開始してから3日目。それまでステロイド剤の効き目が切れる正午から夕方にかけて発熱し、グッタリとしていたマシュマロだったが、高熱を出さなくなった。食事の量もぐんと増え、ご飯の時間になると、いそいそと私の側にやってくるようになった。

 食いしん坊姫が徐々に元の姿を取り戻しつつあることに、私は涙が出るくらい嬉しかった。これまで、人がチキンナゲットを食べていたら隙を突いて強奪し、「これぞ本当の泥棒猫!」と言わしめていた肉食女子。それがマシュマロだ。やはり、彼女はこうでなくちゃ!


 FIPの治療中は頻繁に動物病院に通い、容体をチェックしてもらう必要がある。薬を処方してもらってから5日目。私はマシュマロを再診に連れて行った。食欲が戻り、よく食べるようになったおかげで、体重も100gほど増えた。


 診察室で獣医師が話をしている間、マシュマロは診察台にどっかりと香箱座り(別名おててにゃいにゃい)をし、退屈になると診察台を下りて、診察室にあった空箱に潜り込んで占領しようとするくらい元気だった。


 獣医師はそんな彼女を見て苦笑した。


「君は本当に物怖じしない子だねえ。元気になってきたようでよかった」

 

 マシュマロの発熱が治まり、食欲が増えたことを彼も喜んでくれた。


「薬が効いているようで、安心しました。このまましっかりお薬を服用して、頑張って治していきましょう。少し前までは、FIPは不治の病と言われていたんですけど、今はこうして治療薬の開発が進み、症状が改善していく子が増えて、僕も獣医師としてとても嬉しいんです」


 にこにこしながらそう語ってくれた獣医師が凄く印象に残った。


 ――そうだよね。獣医さんって、きっと動物が大好きだから獣医師になったんだろうし、成す術もなく死んでいく子を診るのは辛かっただろうな。


 こう言うとなんだが、マシュマロがFIPに罹ったのが2025年で良かった。もっと前なら、私は100万円の借金を抱えるか、死にゆく愛娘をただ見ていることしかできなかっただろうから。


 さて、マシュマロには白茶くんというお兄ちゃんがいる。

 FIPの感染力は弱いとネットに記載があったが、それでも多頭飼いの家では感染リスクが高まるのは事実。


 我が家の構造上、マシュマロを完全隔離しておくことは難しいため、私できる限り頻繁に、最低1日4回は水皿を除菌食器用洗剤で洗い、しっかり洗い流して水を換えた。獣医師曰く、唾液で抗原検査ができないくらいだから、唾液の中に含まれるウィルスは多くないだろうということだったが、用心に越したことはないとのこと。


 そして、トイレはマシュマロしか使用しないものと、白茶くんとマシュマロ兼用のものの2個あるのだが、マシュマロがトイレをしたら即砂をきれいにし、マシュマロの排せつ物が触れた個所は除菌シートでふき取った。


 完全隔離に比べれば感染リスクは高いのだろうし、単なる気休めにしかならないのかもしれないが、思いつく限りのことはやってみることにした。

 ずぼらな私にはめんどくさい作業であるが、かわいい猫様たちのためなら、下僕は喜んで奉仕するのだ。

※個人情報保護の観点から、かかりつけの動物病院の名称や所在地はお教えできませんので、予めご了承ください。また、ここで作者が試した薬の与え方を実践される場合は、自己責任でお願いします。

誤字脱字は見つけ次第修正していきます。

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