プロローグ
こんにちは。みかん大好きなみかんと申します。
ここまでのページを開いてくださったこと、誠に感謝致します。
タイトル名については、名の通り未定です。
文章力もタイトルを決める能力もない、ましてや何も経歴のないThe・凡人のしがない作者ですが、どうか最後まで呼んでくれると嬉しいです。
また、この作品は夢で思いついた、と言うのがきっかけのものです。そのため、長く連載するつもりはなく、大体10万文字あたりで完結させる予定です。
自分のペースで更新していくので、よければ読者さん達からタイトルのアイディアをもらいたいです。他力本願でスイマセン。
「――私を、不幸にしてくれませんか」
目の前の彼女――サチは、静かな声でそう言い放った。
「はぁ……」
東の大陸、《エスガルム王国》――のさらに東にある小さな野原は今日も、大地を照りつける太陽が眩しく光っていた。
「あっちぃ……」
一人の少年の首筋に、また一粒の汗が流れた。
彼の名前はマクア・シーザント。
今現在、農家の仕事の手伝いをしているただの少年である。
「なぁ、じいちゃん……このままだとオレ死ぬんだけど?」
「ふぉっふぉ、マクアもまだまだじゃな」
じいちゃんはそう言って、マクアの頭に手を置いた。
「子供扱いすんな! てか、こんなに暑い中頑張ってるんだからよ、今日の報酬、もちろん弾んでくれるよな?」
「さぁ、マクアの頑張り次第じゃよ」
じいちゃんは余裕を持った声で微笑みながら答えた。
こんな暑い中でも、じいちゃんは汗一つかかず、畑を耕している。
そんなじいちゃんの姿に、マクアはすげーと小さく呟いた。
マクアはこの世界を生きるために色々な場所で働いている。
この体が焼けるくらいの畑仕事も、バイトの1つにすぎない。
(今日も暑いな……)
夏のど真ん中の時期、マクアは汗だくの体を動かし、畑の作業に入るのであった。
三時間後、いつもの仕事が終わり、マクアはじいちゃんの家で一息ついた。
「お疲れ様。ほれ、氷水じゃ」
じいちゃんはコップに水を注いだあと《魔法》で氷を生み出した。
いつ見ても非科学的な現象に、マクアは息を呑んだ。
「やっぱすげーよな、魔法。便利っていうか」
12歳のマクアには、まだ魔法が使えなかった。
魔法が使えるのは13歳になってからと言われており、どの属性が使えるのか、魔力量はどれほどか、どのレベルの魔法が使えるのか――それらは全てランダムらしい。
ちなみにじいちゃんは水と氷の能力が備わっているため、氷や水の生成が簡単に出来る。
それに加え、熱に対する耐性があるから炎天下による畑仕事も余裕みたいだ。
「俺、どんな能力なのかなぁ……やっぱり炎? じいちゃんと同じ氷とか? あとは雷かな? すっげー楽しみ! 実は俺にも秘められた力があって、世界最強になるとか!? 夢が膨らむよなー、あと一年だしさ! なあ、じいちゃん?」
じいちゃんは答えることなく、テンションが上がっているマクアと対照的に、視線を少し床に落とした。
「……」
「じいちゃん? どうしたんだよ」
「おお、なんでもない。……どんな能力になるか、楽しみじゃな」
じいちゃんの微妙な反応に違和感を覚えたが、マクアはすぐに忘れいつもの笑顔へと戻した。
「おう!それじゃ、オレは家に帰る! またな!」
マクアは氷水を一気に飲み、じいちゃんからバイト代をもらったあと、せっせと走って出ていった。
マクアには夢があった。
それは、世界最強になってなんかウハウハすること!
やっぱ最強って心地いいじゃん、男のロマンじゃん。
そしてヒロインの女の子たちみんなから告白されて――
「あ、俺に女友達なんていないんだった……」
マクアはそんな寂しい独り言を呟いたあとがくりと肩を落とした。
「あーあ……」
マクアはため息をついたあと、じいちゃんの家から約束2キロ先にある小さな家へとたどり着く。
石でできたかなり質素な家。
ベッドなどなく、石でできた硬い床がマクアを向かい入れた。
石で作られた家は何故か涼しいらしい。じいちゃんに教えてもらった。
だとしても決して快適と言える場所でもなかった。
家の中にあるのは、すぐ近くにある王国、エスガルムで買った基本的なもの。
暖炉と、1人分の食器と食器棚に木製の椅子とテーブルが1つ。それだけだった。
寝るのはどっかの石でできた固い床に薄い布1枚。
外にはかろうじてできた井戸と低クオリティなトイレ。
「はぁ……」
こんな酷い家に1人住むのがマクアであった。
食事は常に王都エスガルムでの外食。
だがエスガルムは食糧生産に乏しく、よく食糧を輸入していた中央大陸が突如壊滅。
そのため今現在、食糧物価が大幅に上昇してしまい、マクアは今までの数倍働かなければ食いつなぐことも厳しい状態になってしまった。
追い込まれている状況なのは間違いないが、今はもうそんなことはいい。
だって明日は休日。6日働けば1日休み。
さてどう遊ぼう。
酒場でのおっさん達にからかわれる日、屋台の宣伝のために喉を枯らす日、なんかムカつく幼い子供たちの世話をする日………。
そんな地獄の日々を乗り越えた自分を褒め称えるオレ。
マクアはベッド(石の床)に身を委ねながら、明日の予定を頭で組んでいるとき。
コンコン、とノックが家に響いた。
「ん?」
じいちゃん? もしかしてさっき飛び出したせいで忘れ物とか?
「はーい……」
戸を開くと、そこには見知らぬ少女がいた。
とても美しい少女だった。
年齢は16くらいだろうか。全てが透き通っている、人間離れした美貌。
「え、えっと、誰?」
マクアはテンパってタメ口になってしまうが、少女は気にせずこう言ったのだ。
「突然、失礼致します。 ――私を、不幸にしてくれませんか。」
これは、幸せになりたい無垢な少年と、不幸になりたい穢れた少女の物語。