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77話

「おはよう夜見っ!」




「おう!おはよう」




「夜見、今日は優しいんだよな?」




教室の前で友達に耳元で小さな声でそういった。このことを知らないやつらに話が聞かれないようにするためだろう。これ聞かれたら台無しだからな。




「おはよう。うん、そのつもり」




そう、俺は昨日友達と話しているときに何故か今日一日全員に対して優しくしないといけなくなったのだ。まあみんなの反応面白そうだしちょっと楽しみだけど。そんな会話をしながら教室に入る。すると目の前で女子がハンカチを落とした。本人は落としたことに気付いていないっぽい。これは早速点数稼ぎのチャンス!!




「これ、落としたよ」




俺は落ちてあったハンカチを拾い上げて差し出す。ハンカチを落とした女子は反射的にそれを受け取った。




「あ、ありがと...ってえ!?夜見!?」




この言葉にクラスにいた全員が驚きこちらを見る。そうそうこれこれ!これが見たくて俺は今日一日優しくしてるんだよ!!




「あの夜見がハンカチを拾った!?」




「ありえなくない!?それって人違いじゃないの?」




「あの顔が夜見じゃないわけがないって!」




俺はそんな声を聴きながら自分の席に戻る。これを聞いていたら自分がどれだけクズだと思われていたかわかるな。もう滅茶苦茶楽しいんだが!?




__________________________


昼休みになった。授業中は隣の女子が筆箱を忘れていたのでペンと消しゴムを貸してあげた。貸したとき女子がキョトンとしながら「え、あ、ありがとう」って言ってたのまじで面白い。




「きゃあ!!」




俺が零とご飯を食べようと席を立つと目の前で女子が椅子に引っかがって転けてしまった。机か椅子に引っかがって転けることって良くあるよなぁ。ここも優しいポイント稼ぎができるぜ!




「大丈夫?怪我はないか?」




俺は転けた女子に手を差し出す。これは流石にやり過ぎたか?最近クズのフリし過ぎてなんかもうわかんなくなってきたな。定期的に人に優しくしないとこのままじゃ本格的にクズになるぞ。




「夜見、ありがと。怪我は....ちょっとだけ擦れてるけど多分大丈夫」




擦れてるのか。あれ地味に痛いんだよなぁ。あ!そういえば俺、絆創膏持ってる!小さい時から姉がよく怪我するからって両親に持たされているんだよな。俺は渡すために絆創膏を取り出す。




「はい、これ絆創膏。擦れてるんだったら痛いかもだけど水で1回洗ってから絆創膏つけろよ」




「わ、わかった。ありがとう」




俺は弁当を持って零のクラスへ向かった。




「なんか今日夜見優しくない?」




「朝もハンカチ拾って渡してたしね」




「性格がいい夜見って完璧じゃん。前から顔は滅茶苦茶良かったからね」




「他クラスが夜見が優しいことに気づく前に近付いとこうかな」




偶々女子のこの会話を聞いていたいつもの友達は面白い反面ずるいという気持ちもあった。




『くっそぉ!!顔が良いと少しでも優しくしたらすぐに落とせるのかよ!!この世の中理不尽すぎるだろ!!』




勿論口には出しておらず心のなかで叫んだ。

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