11話
最初は本当にクズだと思っていた。顔は結構いいのにクラスメイトへの暴言や当たりが強くいつも女子達から陰口も言われている。自分も周りの意見から夜見君は最低な人だと思い込んでいた。
ある日妹がケーキの箱を家に持って帰って来た。
「どうしたの?それ」
「下校中足を挫いちゃって助けてくれたお兄さんから貰った!お姉ちゃんと同じ高校の制服着てたよ」
「変な人じゃなかった?」
「うん!親切だったし何より滅茶苦茶イケメンだった!!また会いたいなぁ」
私の妹はそう言うとケーキの箱を開け始めた。優しいイケメンはこの学年にはいない気がする、クズのイケメンはいるけれど。他学年の生徒のようね。
「あっ!!チョコプレートがついてる!!あのお兄さん忘れていたのかな?ええと名前は......夜見さんか!」
「人間誰しもミスはあるのよ...って夜見君!?!?」
妹から出た名前に驚く。この学校に夜見という珍しい名字は1人しかいない。しかし彼はクズのはずだ。クラスの女子全員から嫌われているし男子からは好かれてはいるけれどクズって言われている。
「何?お姉ちゃん?知り合い?」
「いいえ、でもちょっと有名な人ですね」
「確かにあんな優しいイケメン、有名にならない訳がないよねぇ」
妹がケーキを頬張りながらそう言ってくる。もしかして彼は本当はクズでは無いのだろうか?私の妹は結構モテる。そのため関わってきてくる男子の下心にすぐ気付く。人を見る目があるのだ。その妹が優しいと言うのだから本当は優しい人なのではないか?明日学校で確かめてみよう。
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夜見君が登校してきた。暴言とか言われないか不安だが私は勇気を出して話しかけてみる。
「夜見君、話があるのだけどちょっとお時間頂けないかしら?」
夜見君が私の質問に答える前に別の方向から声が聞こえてきた。
「夜見君は顔と頭は良いかもしれないけれどかなりクズで有名なんだよ!夜見君とは絶対に関わらないほうが良いよ」
嫌われているとは思っていたがここまでとは思っていなかった。彼は一体何をしたのだろう?
「私は夜見君に確認したい事があるのです。心配してくれているのでしたら有り難いとは思いますが大丈夫です。私の事は私が決めますので」
もしこれで本物のクズならば私もみんなと一緒に夜見君を嫌うだけですしね。
「何か用?」
「昨日、女子中学生が目の前でコケたりしなかったかしら」
核心を突く為に助けた人しかわからない質問をする。彼の答えは.......
「ち、ちょっと場所を移さないか?」
ビンゴ。予想通り。
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私は彼に連れられて屋上へと続く階段の踊り場に行った。
「ここなら誰も来ないな。おい綾崎、何で昨日の事を知っているんだ?」
「昨日、夜見君は中学生を助けましたよね?あの子私の妹なんです」
私は正直に話す。もうこれで夜見君が優しいことは信憑性が出てきたと思う。
「え!!」
その後私達は会話を続けた。要約すると彼はやっぱりクズの振りをしているらしい。何て馬鹿なのだろう。私はそう思った。その後言いふらさないでくれと頼まれた。しかし何故かちょっといじわるしたくなってしまったのだ。理由は今でもわからない。
「ふーん、そういうことなんですねぇ。しかしどのような理由があろうと嘘をついたり、人を騙したりしてはいけませんね。私そういう人が大嫌いなんです」
こう思っていたということは本当だ。今まで嘘は悪と教えられてきたのだから。しかし夜見君は他の嘘をつく人と少し何処か違うような気がする。彼は嫌われても良いから言いふらさないでくれと頼んできた。色々な人から嫌われているのにも関わらず彼が何をしようとしているのかが私には分からなかった。こんな人は初めて見た。私はほんの少し彼に興味を持ってしまっていた。




