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それからまた何日かが過ぎた。
私は部屋に閉じ込められたまま、わずかな食べ物と飲み物を与えられ、眠くなったら眠り、そして彼に体を要求されたらそれに応えた。
修二は私が逃げ出さないということがわかったらしく、時々コンビニに買い物に行って私の食べたい物を買ってきてくれたり、部屋の外に出て携帯で誰かと話をしたりしていた。
この異様な空間の中では、時間がとてもゆっくり流れる。
そのペースが私に合っていたのだろうか。それとも私は頭まで侵されていたのだろうか。
いつの間にかこの部屋での彼との生活が、心地よいとさえ感じるようになっていた。
その日、外は雨だった。
テレビもラジオもない部屋に雨の音だけが響く。
私はベッドに横になり毛布に包まって、ただその音を聞いていた。
「そういえば……」
私がつぶやく。
「こんな雨の日に、あんたと学校で話したことがある」
修二は私の隣で背中を向けて、目を閉じているようだった。
「私が一人で教室にいたら、あんたが入ってきたのよね」
あの頃私はなんとなく、家に帰る気も、音楽室でクラリネットを吹く気もしなかった。だから毎日遅くまで教室に残って、ただぼんやりと座っていたのだ。
私の言葉に修二は何も言わなかった。眠っているのかなと思いつつ、私は独り言のようにつぶやく。
「あんたは私に『傘持ってる?』って聞いた。私は持っていたけど『持ってない』って答えた」
少し開いたカーテンの隙間から、窓を流れる雨のしずくが見える。
「『持ってる』って答えたら『一緒に帰ろう』って言われると思ったから。私はそれが嫌だったから」
「どうしてだよ」
背中を向けたまま修二が言う。彼は眠っていなかった。
「だってなんとなく怖かったんだもの。あんた不良みたいな格好していたし」
「格好だけだよ。俺は不良にもなりきれなかった」
私は心の中で納得する。彼と再会した今ならわかる気がした。
彼はゆっくりと振り返って私を見る。
「俺はびしょ濡れになって帰ったんだぞ。嘘つき女」
「ごめんね」
小さく笑ってそう言った。なぜか素直にそう言えた。そんな私に彼がつぶやく。
「好きだったんだ」
静かに、そして優しく響く雨の音は、人を素直にさせるのだろうか。私は毛布の中でかすかに触れ合う、彼の温かいぬくもりを感じていた。
「あの時一緒に帰れたら、好きだって言おうと思ってた」
私は雨音の響くあの日の教室を思い浮かべる。
本当は帰るつもりなんてなかったのに、修二から逃げるように教室を飛び出した。その時なんとなく後味が悪くて一瞬後ろを振り返ったら、彼はただぼんやりと窓の外を見つめていた。
濡れた教室の窓と制服を着た彼の背中。
そのどこか寂しげな光景は、私の心の奥底にこびりついていた。こすってもこすっても、決して消えない傷跡のように……
携帯の音が鳴って、修二は部屋を出て行った。
私は毛布の中からそんな彼の背中を見送る。
背が高くなって肩幅が広くなっても、この人のどこか切ない後ろ姿は、あの頃と変わっていなかった。