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 アパートの前に車が1台止まっている。私はそこで立ち止まる。

「修二に会ってから帰ります」

 部長は驚いたような顔で私を見た。

「何言っているんだ。あいつが帰ってきたら何をされるかわからないぞ。さあ、早く車に乗って」

「でも私が急にいなくなったら修二が……」

 その時、部長の肩越しに修二が見えた。彼はコンビニの袋をぶらさげたまま呆然と突っ立っている。

「早く乗るんだ!」

 部長が私を車に押し込めようとしたのと、修二が彼を殴り飛ばしたのが同時だった。

 部長はよろめいて地面に倒れる。

 私が顔を上げたら、修二は私の髪をつかんで車の窓ガラスに叩きつけた。

「逃げないって言っただろ!?」

「逃げるんじゃないわ」

「俺のそばを離れないって言ったじゃないか!」

「離れないわよ。でもこのままじゃいけないの。私はきちんと両親と話して、会社を辞めてあなたのところに戻ってくる」

「戻ってくるわけない」

 修二が言った。私は彼に髪をつかまれたままその瞳を見つめる。

 彼は親に捨てられた子供のような哀しい目をしていた。

「どうしてこのままじゃいけないんだよ?このままあの部屋で暮らそうよ。間違っているところは直すから。金がなくなったら俺がちゃんと働くから」

 彼が泣きそうな声で言う。

 私も昨日の夜抱きしめた彼のぬくもりを思い出し、涙が出そうになったが、部長の懇願するような目を見たらやはりこう言ってしまった。

「駄目よ。このままでは私たちは変わることはできない。一度ちゃんと現実を見てからもう一度やり直しましょう」

 私の言葉を彼は理解できないようだった。

 次の瞬間、私は思いっきり頭を窓ガラスに叩きつけられた。

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