私の中のお兄ちゃん
「ふぁ~…」
ベッドから半身を起こし、伸びをしながら大あくびをする。ぼーっとしながらベッドから降り、洗面所に向かう。
「なんか眠たいな~…さてはお兄ちゃん、私が眠ってる間に、また勝手に私の身体使ったな~…」
はっ、として、私は自分の着てるパジャマの匂いを嗅いだ。
「…やっぱり。タバコくさい」
私は自分の部屋に慌てて戻り、机や洋服タンスの引き出しを開けてがさがさと漁った。すると、洋服タンスの一番下の引き出し、最近私があまり着なくなった服の中から、タバコとライターが出てきた。
「…やっぱり!ちょっと、お兄ちゃん!夏弥お兄ちゃんっ!起きなさいっ!!」
私が自分の胸辺りに怒鳴ると。
『…んだよ、朝からキィキィウッセェなぁ~』
私の胸辺りから、眠そうな男の人の声が聴こえてきた。夏弥お兄ちゃんだ。
「私が眠ってる間にまたお父さんのタバコをとって、勝手に私の身体使ってタバコ吸ったでしょ!!」
『げっ!?何でバレた!!?』
「私のパジャマからタバコの臭いがしたの!もー…また友達にタバコ吸ってるって疑われるじゃない!」
はぁ~…っと、大きくため息を吐きながら、私はそう言った。
『あのなぁ、高校生だったらタバコの1本2本くらい吸うって。お前が分からないだけで、みんなもバレないように吸ってるから。大丈夫だいじょうぶ』
「それはお兄ちゃんの学生時代の話でしょ!?それに私、JKだからね?!」
『じぇぃけー?何だそれ??』
「もー!しじゅう一緒に居るくせに、JKが何なのかも分からないの?!」
『お前らガキの話なんか聴いてられるかよ。エロい話なら大歓迎だけど』
「さいってー!とにかく、タバコは止めてね!てか、バレたら大変なのは私なんだからね!」
『へーへー了か~い』
「…絶対また吸うんでしょ~…も~このタバコとライターどうしよう…」
はぁ~…とため息を吐きながら、とりあえず、タバコとライターをさっきの洋服の隙間に隠して、引き出しを閉めた。こんなもの、お父さんたちにバレたら怒られちゃう。
朝から怒鳴って完全に目を覚ました私は、洗面所に行き、歯を磨いて顔を洗うと、また部屋に戻り、今度は制服に着替えようとした。
「…お兄ちゃん、私今から着替えるから見ないでよ」
パジャマを脱ごうとしたけど、一旦手を止め、自分の胸元にそう言った。
『へーへー見ませんよ~』
「ほんとのほんとに見ないでよ!」
『わかったって!くどいなぁ…』
はぁ~…と、私の胸辺りから、お兄ちゃんのため息が聴こえた。
「……」
パジャマのボタンを外し、ぱさりとパジャマの上を脱ぐと、今度はパジャマのズボンをするりと脱いだ。ブラとパンツ姿になる私。
制服のスカートを手に取った、時。
『今日はイチゴ柄の下着かぁ、可愛いじゃん。つかお前、ちょっとおっぱい大きくなってね?いいじゃんいいじゃん♪』
そんなお兄ちゃんの声が、私の胸辺りから聴こえてきた。
カタカタと私の身体が震える…怒りで。そして。
「お兄ちゃんの馬鹿ーー!!」
大声で、私は私の身体の中にいるお兄ちゃんに思いきり怒鳴った。