題2話 聖女テイル
私の名前はテイル。
ミラージュ家に生まれた長女で、年齢は20歳。
栗色の髪をゴムでひとまとめにして、お洒落には興味はなく、いつも聖女としての白い服を着ている。
家族は昔はいたが、今はおらず、恋人も存在しないため、天涯孤独の身だ。
「今日の仕事、ご苦労だったな」
私は普段いる聖女協会の本部へ戻る。
大聖女と大司教が執務を行う部屋に向かった私は、今日の仕事について上司たちに報告した。
上司たちはその報告を聞いて、気分を良くし「よくやってくれた、じっくり体を休めてくれ」と言う。
聖女協会の内部は広く。
清掃員や護衛、そのほかの人間を合わせると千人ほど人間が働ている。
その中で、聖女の同僚は百人ほどだ。
数は多いように見えるが、聖女の力を十分に発揮できないものもいるため、実はあまり足りていない。
なので、一人当たりの労働が多いのが現状だ。
そのままではいけないと上層部も考えたのだろう。
国の災害に備えて、支援要員を育成しようという計画が数十年前に持ち上がった。
その計画を受けて、各地に育成機関がつくられたが、まだまだその試みの達成は十分ではないようだった。
だからこのころの私は、重要な戦力として扱われる私が、そうそう切り捨てられるとは思わなかったのだがーー。
廊下を歩いていると、他の聖女達の声が聞こえてくる。
「一週間後に、国の試作軌道列車がお披露目されるみたいですよ」
「まあ、本当に? 聖女も呼ばれるのかしら」
「そうでしょうね。私は声かかってないけど。重要な催しだし、試作だから万全の備えをしておきたいんじゃないかしら」
その時は、私はその催しには関係ないと思っていた。