第1話 支援要員の価値
聖女大国 プリズマ・ミラル 大通り建物前
私、テイル・ミラージュの目の前で大きな事故が起こっていた。
「大変だ! 火が噴き出てる! 早く中の人を助けにいかないと間に合わないぞ!」
「助けるったって! 瓦礫でふさがっててどうにもなんないよ!」
目の前には大きな建物。
その前に集まる人たちは悲痛な叫び声をあげている。
異臭がして、建物の上部から黒煙が立ち上るが、内部から出てくる者はいない。
どうやら、大きな建物の中に大勢の人達が閉じ込められているようだが、何らかの原因で脱出できないでいるらしい。
しかも、煙があがっていて、焦げ臭いため内部では火災が起きているようだ。
その場に救助隊が駆け付けるが、どこから手をつければ良いのか分からないでいる。
おそらく、閉じ込めの原因となっている、がれきが多すぎるからだろう。
人の手でどける事のできない数と大きさだ。
このままでは建物の中にいる人たちに訪れるのは、死の運命のみ。
だが、だからこそ聖女である私の出番だ。
「私は聖女です。今から皆さんの力を底上げしますので、そうすればがれきをどかせるはずです」
私は魔法を駆使して、救助達の能力を底上げした。
精一杯精神を集中して、奇跡の力が起こるように念じる。
すると、救助者たちの体を光が包んだ。
「力があふれてくる!」
効果はきちんと出たようで、救助隊の人達は、がれきをどけて先へと進めるようになっていった。
すぐに私は、運び出されてきた人々の治療も行っていく。
「もう大丈夫です。私が癒しますから」
怪我をした人たちの前で精神を集中させると、彼らの体が光につつまれた。
怪我をした部分がみるみる元通りになっていく。
「ああ、これで助かった! 聖女様のおかげだ!」
「聖女様の力はなんて素晴らしいいんだ」
かつて昔、聖女は支援魔法や回復魔法を使用して、多くの人を助けてきた。
しかし、時代の変化に伴って、役割が変化してきたのだ。
ただの支援要員だった者達は、聖女となり各地で多くの人助けをするようになった。
なぜか攻撃魔法や妨害魔法が消えていったため、支援要員の価値が上がっていったのも理由の一つになるだろう。
聖女は、奇跡の力を振るえる唯一の存在として人々から崇められた。