なるがまま
薄紅色の、桃色の
いいえもしかしたら春の桜色
大きな枝のその先で
わたしは花に生まれました
やわらかな花びらふんわりと
ひろげてきらきら日のしたで
やさしく、やさしく咲きました
汚れのない空の色
その暖かい日の中で
雀色の小鳥が一羽、枝にとまって近づいて
わたしをつついて、つついてむしり
最後にぱくりと一口で
食べてはばたき行きました
この花びらも蜜も香も
あなたをただただ満たすため
わたしはここに咲いたのです
この大きな木の端、枝の先
あなたを満たすためだけに
わたしはまた明日咲くでしょう
その次もその次も、来年再来年、次々と
咲いたわたしはそのあとで
紅くまあるい実となって、鳥や人の子を満たすのか
それとも誰にも見向きもされず、
母なる木の下、根元に落ちて
やがて芽を出し育つでしょうか
それともやはり今日と同じ
わたしを見つけたあなたを満たすでしょうか
ああ今日も
朝の光がわたしを呼ぶ
咲けよ、咲けよ、世界を満たせ
生まれて死んで、また生まれ
ただ生きて喜べと
あるがまま なるがまま 流れのままに
今日も光がわたしを誘う
目を覚ませばそこにはただ光が
光だけが
全てを満たして
ただ咲くも花
実るも花
芽でるも花
全て花
ただ生きて世界を満たす
あるがまま
ただあるがまま