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マネージャー、影を踏む。
夏の雲は足早に姿を消し、青空は、ほんのり赤みがかった空へと表情を変えた。
ミサキが俺に、大きな瞳を向けて
「なにか、あったんですか?」
「いや、何でもないよ」
俺は力をこめて言ったつもりだが、声はたぶん死んでいた。
「アキラさん」
ミサキが地面を指さしていた。
俺は、視線の角度を下方90度に向けた。
「影が、重そうですよ」
俺は、言葉なく公園の外に出た。
ミサキは真顔のままだ。
「どうして、そう思うの?」
「だって、ほら。さっきより影が、ずっと黒ずんで大きくなっている」
ミサキの感性か。
不思議な子だ。
俺は苦笑いをした。
「ああ、そうか、そうかもな」
俺は、少しだけ足が軽くなった。
「あー、そうだ、さっきコーラ飲まれちゃったんだな」
俺は、ふっと気づいて言った。
「いいんです。もう、それは」
「あんまり飲むとノドにも悪そうだし」
そんなもんだろうか。
一応、そういうことにしておこう。
俺は、自分の影を踏んだ。