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入道雲の国

作者: 伊吹岬

知っているかい?入道雲の中には国があることを。

そしてその国は他のものに決して知られては行けないことも。

入道雲は地面で湿った空気が暖められて上昇し出来上がる。地上では積雷雲としても呼ばれているその中では、世界を飛び回りながら旅する国がある。

そしてその国には守らなければいけないルールがある。


「お母さん!行ってきます」

「ましゅ!」

「二人ともあまり遅くならないで帰ってきてね。それとテノはミアリの手を離さないこと。いい?」


ミアリは弟テノの手をしっかりと握り締め、はいっと返事をする。その真似をするようにテノも姉と同様に返事をする。今日はこれから自宅から少し先の祖母の家に出来立ての林檎を届けに行くお使いをすることになっている。

母親の約束通り、二人の姉弟は手を繋いで祖母の家を目指した。といっても、迷うことない一本道のため歩けば五分とかからず着いてしまう。その間でさえも道中は冒険が沢山でテノはミアリの手を右へ左へと引っ張りながら進んでいく。

祖母の家までもう少しとなったところで突如として国全体にある放送が響き渡る。


「侵入者、侵入者。ローベル塔の裏から一機侵入、すみなやに皆非難。戦闘隊は戦闘用位に取り掛かれ」


その放送でミアリはテノを持ち上げて祖母の家に流れ込むようにして駆け込んだ。


「ああ、良かった。二人とも無事だったのね」


二人が着くなりギュッと安堵の様子で祖母は抱きしめた。


「ねぇね、これからまた始まるの?」


不安そうにテノはそう聞いてくる。


「ええ、けれどなんとかなるは。この国の存在を知られないために私達には力があるんだもの」


そう言ってミアリは後ろに隠し持っていた杖を手にすると再び外へと駆け出した。


「大地の精霊、水と雷の共鳴により黒き龍の形をなして今ここに轟の雷鳴を響かせよ」


空には黒き龍の形を成して先程言われた方角へと姿を消していった。


「ねぇね、すごい!」

「えぇ、本当にミアリは立派になったわね。これも息子が亡くなったせいなのかもしれないわね」


テノの肩を抱く力が思わず強くなっていたことに気がついた。二人の姉弟の父親は数年前に他界している。そのためミアリは父親の分として家庭を支えるために日々奮闘していた。


これは入道雲にある国の水と雷を操る姉弟の物語。


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