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高く跳躍して、飛び回るお義母様。
いや、私の思っていた飛び方と違う。
スピード感が有り過ぎるし、滞空時間がなにやらおかしい。
「とても素晴らしいわよ、ロレッタちゃん~!」
お義母様は上品に笑いつつも、とても楽しんでいらっしゃる。
「……ね、心配要らないだろう?」
「さ、左様ですね…」
お義母様は風魔法を自在に操り、私の靴に加速を付けたり風圧で緩めたりしながらいとも簡単に履きこなしているのだ。
【跳ね飛び高速靴】に名称を変えよう。
「くくく、母さんは僕達の師匠だからね。魔法では敵わないんだ」
「そうだったのですね!納得です……」
マグオット様は開いた口が塞がらない私を見てクスクスと笑い、説明をしてくれた。
成程。
「兄さんは魔法の事は教えて無かったかな?」
「えぇ。皆様の紹介はして頂いたのですが、エル様自身の事等は余り…」
「あ~、そうかも。兄さん、皆の事ばかり話すからなぁ。
自分からは恥ずかしい事も有るだろうし、代わりに教えてあげよう」
「良いのですか?」
「あぁ。母さんは暫く遊んでると思うし」
「有難う御座います!」
「うん、元気だね。
えっと、仕事は何をしているか知っているだろうから…何故内務の仕事をしているかを話そうかな」
「宜しくお願いします」
「10代前半の時は僕と一緒に剣の道を志していたんだけど、有る時ピタリと辞めてしまったんだ」
「え!」
「『俺には剣の才能が無い』と言ってね。子ども特有の我儘とかでは無く、只々自分の伸び代を考えた末に出した結論だと言ったんだ。
今思えば、僕の将来を考えての事だったと思う。それに気付いたのは大人になってからなんだ、悔しい事に」
「マグオット様…」
「密かに鍛えている所を見てしまったんだ。
多分、侯爵として最低限鍛えているだけなんだろうけどね。とても、楽しそうだったよ。
気付けなかったのは、実際兄さんがグングンと勉強の方で力を付け出していたから。
いつの間にか国家試験を受けて、国で働ける程の実力を僕達に知らしめていたよ。
今や次期宰相候補だからね。兄さん以外は有り得ない」
「とても、素晴らしいです」
「そうだね、自慢の兄だよ。
僕達はそんな兄を見ているからね、頑張る事が当たり前だった。
僕は【騎士団長になれない騎士】と言われているけれど、実は目指している場所が違うんだよね」
「そうなのですか?」
「うん、だから兄さんには感謝してる。
本人にはこんな事を言っていたっていうのは内緒だよ?恥ずかしいからね」
「分かりました!内緒です!」
「宜しい」
二人して笑い合っていると、お義母様が緩やかな風と共に降り立つ。
止まる事も難なくしてしまうお義母様、凄過ぎる。
「お義母様、凄いです!止まる事もこんなに簡単にしてしまわれるなんて!」
「ふふふ、これくらい朝飯前よ♪
あ~、良い汗だわ~。最近運動不足だったのよね~。
ロレッタちゃん、これ私にくださらない?」
「はい!少し改良したい点が御座いますので其方が終わり次第のお渡しになりますが良いですか?」
「待つ、待つ♪」
「では、また後日お渡しします」
「有難う~、これならダイエット頑張れる気がするわ♪」