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「よしっ、材料はこんな感じかしら」


足早に部屋に戻った私は鼻息を荒くしながら材料を揃える。

いつの間にやら他の鉱物達も部屋に運ばれていたので、整理をして必要そうな物だけ抜粋した。

インクの塊を机の引き出しから取り出し、包んでいた紙を広げる。

勿論、鼻と口は清潔な布で覆う。服装も汚れても良い様なものに変え、エプロンを着た。

準備は万端である。


材料が十分に揃わなかった間、色々と悩みながらも良いのでは無いかと思う構造を思い付いたので、それをまず試そうと考えている。

まずは、インクの成形だ。

新しいインクを取り出すと、前回同様細長い円柱にしていく。


「ふぅ…。細さはとりあえずこんな感じ…」


集中し過ぎて肩に力が入っていた事に気付き、長く息を吐く。

出来れば量産出来る物を、と考えているので毎回だととても大変だ。型を作り、液体の時に流し入れ固めようと心に誓った。

ここまではインクを固める作業が無かった事と、前回大きさを決めた事であまり時間も掛からず進められた。


そして次は、肝心のペンになる外側に取り組む。例の鉱物を目の前に置き、必要な分だけ切り離すと薄く伸ばしていく。慎重に、均一に。

必要な分を切断し、くるりと丸めて長く空洞の有る円柱を作る。

さらにそれを縦に真っ二つにすると、二つが繋がるように仕掛けを作った。しっかりパカパカと動く事を確認して反対側の部分を金槌で叩きながら円錐状にしていく。女性の力でも加工しやすいので道具を使い慎重に角度を揃えていく。

先程のインクの円柱を計測しつつ、端をほんの少しだけ切り落とし小さな穴が空いた状態にする。

後は微調節だ。


私は黙々と作業に没頭した。微調節に一番時間が掛かる。

何度か開けたり閉めたりを繰り返し、ここはこうした方が良いかもという部分を付け足していく。

使って下さる方の事をしっかりと意識したのは初めてかもしれない。

今まで漠然と人の役に立つ物を作りたいと発明を繰り返してきたが、ここまで意識をして作ると丁寧度合いや気の入り方が全然違う。

そんな自分に反省をしつつ、それ以上にワクワクした。


ーーカチャ


「…出来た…」


きっと今、私の目はキラキラと輝いているだろう。


新しい紙を急いで取り出すと、スっとそのペンを走らせてみた。

乾燥したインクの筈なのに、その色ははっきりとしていて描きやすい。

中に入っている芯の部分もゆっくりと減る様で、紙1枚覆い尽くす程描いたらようやく開けて動かせば良い位だった。

開けたり閉めたりがややこしいが、インクを零す心配も滲ませる心配も無い。


胸が踊る。これはきちんと成功したと言って良いのでは無いだろうか。


閃光玉の様に偶然出来た産物では無い。


私はそのペンを握り締めて、いつの間にか走り出していた。

いつもの廊下が、何だか永遠に続くかのように長く感じたが必死に足を前に出した。

途中、侍女の方々にびっくりされ不思議な顔をしている。それもそうだ、私は普段走る様な人間では無い。


ゼェゼェと息を切らし、その扉の前で呼吸を整える。

最後に大きく息を吸い、大きく吐いた。


ーコンコン


『どうした』


扉を叩くと中から声がする。


「お仕事中に申し訳御座いません、ロレッタです」


そう答えたが、返答が無いので首を傾げていると、突然扉が開いてエル様が少し驚いた様な顔をした。


「どうした?何かあったか?」


とても心配そうに聞いてくれたので、どうやら私が発明中に何かあったと思ったらしい。

なので、私は伝えたくてうずうずしている気持ちを抑えて微笑む。


「発明品が出来上がったので、早くエル様にお見せしたくて」


「もう出来上がったのか!それは楽しみだ、中に入るといい」


エル様は安心した様に微笑むと私を中に入れてくれた。

執務室のソファに促されて座ると、エル様も私の正面に座る。


「今回構想は出来ていましたので、早くお見せする事が出来ます。こちらです」


ずっと握り締めていた両手のひらを開き、出来上がったペンを見せる。


「…これは?」


「ふふ。エル様、紙は御座いますか?」


「あぁ」


ペンを色んな角度から見た後、立ち上がり机の引き出しから出した新しい紙を私の前に置いてくれた。


「こちらはこれだけで文字を書ける物です、どうぞ書いてみて下さいませんか」


そう言って、ペンと紙をエル様に渡す。

出来たばかりの物だからか余計に緊張してしまい、心臓の音が耳の隣で鳴っているようだ。

エル様の為に作ったもの。私は、エル様をじっと見つめた。

久しぶりの投稿となりました。きちんと完結させる予定ですので気長にお付き合い頂けたらと思います。

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