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ゆっくり更新ですが、見て下さっている皆様ありがとうございます


「良かったな、ロレッタ」


「はい、エル様」



この辺りは花の名地が多く、美しい景色を見て帰ろうという事で、いつの間にやら馬車が迎えに来ていた。準備が良すぎる。

私は、アレン様からお墨付きを貰った鉱物を抱き締め家路に着く。

揺れる車内、美しい花々を眺めながら先程の出来事に思いを馳せた。



『ふむ……。どうやら、これを細かい粒子状にした物を大量に吸い込む等しなければ人体には影響は無いようじゃ。念の為、加工の際は布で鼻や口を覆う方良いかもしれぬのぅ』


「本当ですか!なるほど……ありがとうございます」


私は取り扱いに気を付ければ人体に差程影響がない事を知って、それを思い切り抱き締めた。

アレン様は私達が持ってきた鉱物を見て、自分には分からないからと土の精霊を呼び出し色々と調べてくれた。

精霊は気まぐれだと教わってきたが、気まぐれにしてはとても親切だ。

これもアンバート家の皆様と一緒だからだろう。


「ありがとうございます!何か……、お礼をしたいのですが何が宜しいでしょうか?」


『くくっ、お礼は既にお主等から漏れ出る魔力を喰ろうておる』


「…漏れ出る、魔力?」


『あぁ。我等が食すのは魔力。自然に生きる者ほぼ全てが持ち合わせる物じゃが……漏れ出る物は生命力といった方が良いかの?お主は生命力が強いのでな。もう、たらふくじゃ』


そう言ってケラケラとアレン様は笑った。

初めて会った精霊様は、私が思う以上にとても優しかった。全員が全員こうでは無いだろうが、氷の精霊なので纏う空気は冷たいのに温かい目は澄んでいて見守ってくれている様な気がする。

こんなに温かい方が人間を嫌いになるとどうなってしまうのか、なんだか少し怖くなった。

恥じない生き方をしなくては、と背筋が伸びる。


その後お食事に誘って頂いたので、ゲイル様特製のご飯を皆でワイワイと食べた。

少しして起きてしまった天使さん達をあやしたり、抱っこさせて貰ってその愛おしさに押し潰されそうになったりと楽しい一日を過ごした。



「ふふふ」


「どうした?」


「いえ、エル様がお子様を抱っこされているのを思い出してしまって…」


そう言ってにっこり微笑むと、エル様は硬直してしまう。

お二人を抱っこされた時もこうやって硬直してしまったのだ。


「……壊してしまいそうではないか。あんなに儚くて、小さいのに」


エル様は口元を手で覆い、外に顔を向けてしまった。


あの時、ギクシャクと硬直しながらもとても柔らかいお顔でふにゃりと笑い「可愛いな…」とボソリと呟くと、抱いていたリンドウ様は抱き心地がいつもと違うからか泣いてしまい、ワタワタと慌てふためく珍しいエル様が見れた。


いつか来る架空の未来を少し思い描いてしまう。

素敵なお父様になるだろうな、エル様は。


婚約者という立場だが、子どもの話は一切していない。縁談、女避けの結婚だからである。


「とても可愛らしかったですね」


「あぁ、とても」


でも、どうやら子どもは好きな様なので多少は希望を持とうと思った。

この方の手の中に居るのが私との宝物だと良いな、と。


「もしかして疲れてしまったか?少し顔が赤い」


いつも姿勢正しいエル様が、心配そうに顔を覗き込む。


「えっ!あ、そ、そうかもしれません……。今日は色んな発見があったので…」


まさか、貴方との子どもの事を考えていたなんて言えない。

邪推な考えは閉まっておいて、その後も今日の思い出を話しているといつの間にか邸に着いていた。


「では、私はこちらを置いてきますね。えっと…、その…」


「あぁ、試してみたいんだろう?夕餉の支度が整ったら声を掛けさせる。行っておいで」


「はい!ありがとうございます!」


帰って早々部屋に籠るのは失礼かと思ったが、探究心が止められず口籠っていたら、エル様は私がウズウズしていたのを知っていたらしい。

とりあえず膝を折り礼をして、淑女としてはしたなく無い程度のスピードで部屋まで急いだ。


早く、早く。一刻も早く、これを試したい。



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