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「では、始めます」


私達は本日アンバート家の鉱山に居る。

魔法陣での移動は初めてだったのだが、とても明るい光の中を通ったので何が何やら分からぬまま着いてしまった。少し残念だ。


エル様が私のその声に頷くと、私は大地に手を付き、魔力による探知を始める。


「……凄い。とても豊かな鉱山ですね…。色んな物が見えます」


「そうなのか。実はまだ買ったばかりで手付かずでね」


私の魔力調査では、大体の鉱物の埋蔵量が種類ごとに数値として脳に表示される。

それは事前にエル様にもお伝えしてあるのだが、中々渋い顔をされた。

『本当に俺以外には余り言わない方が良い』と念を押されてしまった。

心配性ですね、エル様は。



「ん?」


そんな事を考えながら調査を進めていると、ある違和感に気付く。


「どうかしたか?」


「いえ…、見た事の無い鉱物が有りまして…」


「見た事の無い鉱物?」


「はい。しかも、この鉱山の大半を占めるのですが、私は初めて見ます。とりあえず、要る物だけ取り出しちゃいますね」


初めて見た鉱物も気になったが、今日の目的は手持ちの在庫を増やす事。

私は、必要な鉱物を選りすぐり手元でコネコネと整形をする様に手を動かす。

そして、ある程度になるとボロンと土から出すのだ。


何個か必要な鉱物の塊を作り出すと、エル様の方に向き直った。


「終わりました!」


「………そ、そうか」


振り返るとエル様はとても驚いた顔で口元を抑えていた。

私はまた何か、間違えた様だ。


「す、すみません。何か変な事をしてしまったでしょうか?」


「あぁ、すまない。ただ驚いただけだ。ロレッタ、魔力量は最近測ったか?」


「魔力量、ですか?いえ、最後に測ったのは……10歳の魔力測定の時でしょうか?」


「そうか、後で調べよう」


「?分かりました?」


何故、魔力量の話しになったのかは良く分からなかったが調べようと言う事は何か有るのだろう。

エル様は鉱物の塊をマジマジと観察し、叩いたり持ち上げたりしている。


「まさか、こんな大きな塊になるとは…。どうやって持って帰っていたんだ?」


「あ、そういえば調子に乗って作り過ぎてしまいました……。いつもはこんなに沢山の種類は出したりしません。一、二種類位なので弟に任せてます…」


「成程な。今日は張り切ったな」


そう。今日は無くなってしまったからと張り切って八種類の鉱物の塊を作ってしまった。しかも、一つがそこそこ大きい。

物によっては重さがかなりある物も有る為、何度か魔法陣を行き来しなくてはいけないかもしれない。


「さっき言っていた鉱物は良いのか?」


「あ、実は…気になり過ぎて出しちゃいました……。コレです」


生成している内にやはり気になってしまい、私は初めての鉱物を少しだけ取り出していた。

指を指すと生まれたての赤子位のそれをエル様はひょいと持ち上げた。


「うむ、軽いな。ほら」


「わ、本当に!とても軽いです!」


余りにも軽々しく持ち上げたな、とは思っていたが実際にも軽かった。

試しにグッと力を入れてみるが、形が変わったりはしないので脆い訳では無さそうだ。


「何をしているんだ?」


私がその塊を押したり、引っ張ったりしていたのでエル様が不思議そうに聞いてきた。

その顔はまるで少年の様だ。


「強度を確かめようとしています。落としてみたり、金槌で叩いてみたり、他の鉱物とぶつけてみたりもしたいので少し待っていてくれますか?」


「よし。それは、俺がやろう」


「えっ!?」


「ダメか?」


「い、いえ、ダメでは有りませんが…、そんな面白い事では有りませんよ?」


「良い。俺も興味が有るからやってみたい」


「ふふふ。そうでしたか、ではお願いします」


エル様は何だかキラキラした目でその塊を私から受け取る。

新しい鉱物の話しをした時からなんだか、ワクワクソワソワとしているなと感じていた。

エル様が感情を出しているのが、何だか可愛くて私はお願いする事にしたのだ。

本当に面白い事は何もしないのだが、彼が楽しそうなので私も嬉しい。


私達は二人で強度の確認を始めた。



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