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暫く惚けていると、エル様が迎えに来てくれた。


「行こうか」


「はい」


エル様の手を取り、アンバート家の庭園へと向かう。

アンバート家の庭園はとても広い。

迷子になりそうで、まだ一度も探検した事は無かったからエル様が居てくれるなら心強い。


「ここは季節の花が咲く場所だ。この先にガゼボが有るから、そこで少し休もう」


「とても綺麗ですね、知らないお花も沢山…」


「母上の趣味でね。私も何が植わっているのか実は余り良く分かっていないんだ」


「ふふふ、エル様でも分からない事が有るのですね」


「あぁ、沢山有る。知らない事ばかりだ。

最近、ロレッタのお陰で同僚と仲良くなった」


「私の?」


「そうだ。先ず、女性の押し掛けがパタリと止んだ」


「あ!あの、お披露目パーティーの効果でしょうか?」


「あの効果が遺憾無く発揮されているよ。そしてこうして仲直り出来ているから言うが、この間の件でロレッタを泣かせてしまったショックで腑抜けになっていたら皆が優しくしてくれてね。今迄ちゃんと話した事も無かった事にそこで気が付いたよ、ありがとう」


「そうでしたか、皆様にもエル様がお優しい事が伝わったんだと思いますよ。お話し出来る機会が有って良かったですね」


仲良くなったきっかけは何だか少し恥ずかしいが、エル様と皆様が話すきっかけになれた事は素直に嬉しい。


エル様もとても嬉しそうなので、二人で微笑み合った。



「さあ、ここだ。座って」


エル様は私が座る場所にハンカチを敷いてくれた。何処までも素敵な人だ。

私が座ると、エル様も少し開けて隣に座る。


「幾つか話したい事が有る」


「はい」


「先ず、閃光玉を渡す日取りが決まった。どうやら王太子妃殿下直々に譲り受けたいとの事だったので、王太子殿下と二人で王城にて二週間後という事になった。いけるか?」


「はい。何個か在庫が有りますが、もう少し作っておこうと思います」


「ありがとう。そして、次の休みが三日後だ。約束していたアンバート家の鉱山へ行こう。魔法陣を繋ぐのに手間取ってしまってね、遅くなってすまない」


「ま、魔法陣を繋いで下さったのですか!?」


私は目が飛び出る程驚いてしまった。

魔法陣を繋ぐのには、高名な魔導師を雇い繋ぎたい所と、繋ぎたい所を確認させてイメージを定着させてから魔法陣を描かせるのでこんな何日間かで出来る訳が無い。

全然遅くない。寧ろ、何故こんなにも早いのか聞きたい位だ。


「あぁ。うちには優秀な魔導師が二人も居るからな」


エル様は私の驚き方が面白かったのだろう、クスクスと笑いながら答えてくれる。


「まさか、お義母様…」


「ご名答。後、話には出ている義弟のゲイルが描いてくれた。彼等は単身で転移魔法が使えるからな」


「さ、流石です…」


開いた口が塞がらない。アンバート家は本当に規格外である。

私のような平々凡々には未知の領域だ。


だが、憧れずにはいられない。


私もアンバート家の名に恥じぬ様に発明を頑張れば良い。


「…とっても楽しみです。何だかやる気が出てきました!」


「そうか、良い事だな。帰りにゲイルの所に寄っても良いか?ロレッタに会わせてやりたい」


「是非!心太のお礼もしなくてはいけませんね!」


「そうだな。彼等の子どもは男女の双子でね、きっと可愛いぞ」


「双子ちゃん!わあ!」



その後、二人でゲイル様一家にお渡しするプレゼントを決める為にあーだこーだと時間も忘れて楽しくお話ししていた。


夕食へも二人で一緒に行き、幸せな一時を過ごした。


今発明中の物が早く出来上がり、早くお見せしたい気持ちをグッと抑えて三日後を楽しみにその日は目を閉じた。



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