19 ※エルフィングside
何かを閃いたのか、ロレッタは珍しくとても大きな声を出した。
「どうした?」
「固める!固めるんです!実は今、作りたい物が有りまして、役立てられるかもしれません!」
「そうか、それは良かった」
発明の事になるとコロコロと表情を変える彼女はとても可愛らしい。
目を輝かせ、頬は高揚し意気込んでいる。
ロレッタと心太を食べたのはどうやら正解だったらしい。
彼女なら喜ぶと思ったんだ。
それが発明のヒントになったのなら、良い事だ。
「はい!あ、エル様。私実は一度実家に帰ろうかなと思っているのですが、良いですか?」
「ん?良いが、何か予定でも有ったか?」
「実は、発明品を作る為の材料が少なくなって来てしまったので調達に行きたいなと思っていまして…」
「ほぅ、それは実家へ帰らないと調達出来ないのか?」
「いえ、実家にある訳では無いのです。鉱物を良く含む山の様な所で有れば何処でも構わないのですが、如何せん私は方向音痴なので…弟の助けが無いと道に迷ってしまうのです」
「ははは、成程な。もし良ければ、だがアンバート家が所有している鉱山が有る。私にエスコートさせてくれますか、レディ?」
「え、は、え?」
こういう反応を見たくてわざと格好を付けてみたのだが、アワアワとロレッタは面白い動きをしている。
「くくくっ、どうする?実家へ帰るかい?」
「い、いえ……!アンバート家の鉱山、お伺いさせて下さい!」
「今度の休みに一緒に行こう」
直接的な言葉でロレッタはやっと理解したのか、ぱぁっと花が咲く様に笑う。
「ご一緒に行って下さるのですか?」
「あぁ、俺も道には強い。それに、君の魔力を一度見てみたい」
「嬉しいです!家族以外とお外に出るのは初めてです!」
「ロレッタの御家族にも今度ちゃんと会わなければな」
「ありがとうございます、またご予定が合えば」
「あぁ。で、何を作るんだ?」
「ふふふ、まだ内緒です」
「そうか、楽しみにしておこう」
「はい!」
和やかな時間が流れ、二人で笑い合う。
まだ短い期間だがロレッタと過ごす様になってからというもの、ちゃんと休みを取る様になった。
だが仕事の遅れも無く、早く帰りたいが為に寧ろ効率さえ上がっている。
こんなに心が穏やかで居られるのもロレッタのお陰だろう。
勢いで妻になって欲しいと願い、まだ婚約中だがその効果に驚きすら有る。
『結婚とは良いものだぞ』と誰かに言われた事が有るが、その当時は女性と結婚する未来が全く見えなかったので右から左へと受け流していた。
こんなに心地よく、安らげるこの空気は他でもないロレッタだからだろう。
「エル様?」
「ん、どうかしたか?」
「いえ、お疲れでしょうか?明日もお仕事ですし、お部屋でごゆっくりなさった方が…」
ロレッタはとても心配そうな目で此方を見てくる。
俺が遠くを見つめ、黙っていたからか心配させてしまったのだろう。
優しい子だ。
「大丈夫だ。もう少しだけ話していても良いか?」
「は、はい。エル様が宜しければ、幾らでも」
「ははは、君は優し過ぎるな。変な人について行ったら駄目だぞ」
「優しくは無いのですが、気を付けます!」
「元気で宜しい。
そう云えば、あの【閃光玉】は成功していたな」
「はい、光量が強過ぎて護身用位にしか使えないな~と思ってから襲われる様な事が無かったのでしまい込んでいたのです。
元々は失敗作ですので、本当に護身用に役に立つなんて夢にも思っていませんでした。
あの日は万が一の為にとりあえず持っていたのですが、まさか初めてのご使用が殿下とは予想外でしたね…」
「成程な。でもお陰でアレの威力が分かって良かった。アレは貴族内で売れるだろう。
母上に渡した面白い靴もそうだが、見方を変えれば実は成功している物も有るかもしれないな。もし、何個か良さそうな物が有れば商売をしよう」
「し、商売!?」
昨日、本当に偶然【心太】をオヤツに頂きました。でも、天付きでは無く付属に何やらプラスチックの仕切りが沢山有る物が…。
それを使うと真四角の心太が産まれました。
私の知ってるのと違う。




