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ロレッタ目線で話が続いていきます。

プロローグとほぼ同じ内容なので本日投稿しました。


私は風を待っています。



「ん~、中々良い風が吹かないわね」



最近開発した【自動水やり機】を試そうと、いつもの様に家を抜け出し変装をして公園に来ている。

風車を地面に設置して、如雨露を構えて待っているのだが悲しいかな今日は余り風の無い日の様だ。


私のお爺様は、異世界から来た【落ち人】で数々の魔道具や生活必需品を生み出した偉大な発明家。

私の今の暮らしが豊かなのは全てお爺様のお陰である。

この国、カダール王国は実力主義な所が有る。その為にお爺様は伯爵にまで上り詰める事が出来た。

一代限りにならなかったのは、父に商の才があった故だ。父はそのお陰で物流の外交官をしている。

弟もしっかり勉強する賢い子なので、父の後を継ごうと頑張っているわ。


私はというと、そんなお爺様に憧れて小さい頃から様々な物を作る様になっていた。

未だに何一つ満足した物は出来ていないけれど。


お爺様までの道のりは長いわ。


お爺様は私が十になる時にお星様になってしまわれたの。その時、いつかお爺様に負けない位凄い物を作ってみせると誓った。



風が吹かないなら自分が歩いたら風車が動くんじゃないかと思い、頭に風車を付けた。



「何だか恥ずかしい格好だけれど、仕方ないわよね」



歩いていると風を感じて風車が回り水が出始めた。


「わあ!成功だわ!」


はしゃいでいると風が止んで水の勢いが無くなってしまう。



「あら……。そうね、風の強さで変わるのだわ。

もう少し歩いてみましょう」



歩いているとベンチに座っている人が居た。

上を向いているので見られないと思うが、見られたら恥ずかしいので足音を立てずに通り過ぎようとした。


すると、いきなり強い風がビュッと吹いた。


私は風車の影響で少しよろけてしまい、如雨露が在らぬ方向に向いてしまったのだ。



バシャッ!!



嫌な予感がした。

目を開けて音のした方を見ると、麗しい男性がびっくりした顔をしている。



「きゃー!すみません!!!」



やってしまった。


周りの人には十分注意しながらやるようにしていたのに、男性にお水を掛けてしまった。


とりあえず、ハンカチを出さなくては。

いや、そういえばドライヤーの改良版が有った筈…。其方の方が乾かせる。

そう思い、鞄の中を必死に探して取り出した。


「直ぐに乾かしますね!!」


そう言ってスイッチを入れた。


すると、ボッ!!という音と共に火炎が巻き起こる。

なんて事だ。これも失敗しているでは無いか。



「危ない!」



男性は魔法で火を一瞬にして消した。

そして、火が消えた事を確認すると自らを魔法を使って乾かす。


魔法が使える者は貴族が多い。


高度な風の魔法、少し淡い緑色の髪、透き通る様な青い瞳…………もしや、エルフィング=アンバート侯爵様では無いのか?



「大丈夫か?」



「あ……も、申し訳御座いません。大丈夫です、助けて頂いて有難う御座います」


私が悪いのに心配をさせてしまった。なんて良い人なんだろう。

申し訳無さでいっぱいだ。

しょんぼりと項垂れていると、侯爵様は吹き出して笑い出した。


何が可笑しいのか分からなくて、ポカンと侯爵様を見詰めていると侯爵様は「有難う」と言う。

しかも、私の頭に付いた発明品の事を聞いて来た。

しまった、外すのをすっかり忘れてしまっていたわ……。

風車を外し、説明すると侯爵様は他の発明品の事も見せて欲しいと言う。


私はそんな事を初めて言われたので、嬉しくて鞄を引っくり返して侯爵様に見せた。


全部失敗していたけれど、侯爵様は一つも馬鹿にせずに笑って「これは何だ?」「これを作ったのか、凄いな」と興味深く聞いてくれた。


彼は女性にとても人気が有ると母から聞いている。

独身で、婚約者も居ない麗しい侯爵様。

魔術剣士が多いアンバート家において、其方は次男に譲り自分の頭脳のみで次代の宰相にまで抜擢されている秀才。つまりは、超優良物件だ。まぁ、そこは私には関係の無い所だ。


そんな、私には縁遠い方と話せているなんて感無量である。

冷徹で仕事にだけとても熱心な方だと聞いていたけれど、噂は噂でしかないのね。

こんなに朗らかに笑っていらっしゃるのに。


私の発明品の話を楽しそうに聞いて下さる方なんてお爺様以外では初めて。とても…、素敵な方。


「とても興味深い物ばかりだった。

そういえば名前も聞いていなかったな。君、名前は?」


一通り見せ終わると、侯爵様は私に名前を聞いてきた。


社交界に全く出て無かったとはいえ、こんな初歩的な事まで出来ていなかった自分にびっくりだ。まさか、名まで名乗っていなかったとは。


急いで立ち上がり、カーテシーをする。



「申し訳御座いません。ご紹介が遅れてしまいました、ロレッタ=キルフェットと申します。アンバート侯爵様」


「おや、君も貴族か。キルフェット伯爵のご令嬢と云えば病弱で中々社交界には出て来られ無いと聞いていたが、君の事だったのか」


「左様です。お父様が私を社交界に出す事を嫌がっていまして…、この様に身体は元気なのです。


その見た目と風魔法でアンバート侯爵様だと気付いておりましたが、無礼を幾度となく致してしまいました…。どんな罰でも受ける所存で御座います」


私は新興貴族の伯爵の娘、彼は由緒正しきアンバート家の嫡男であり現侯爵様だ。本来、自分より家格が上の方に対しての非礼は許されない。

この際どんな罰でも、お怒りでも受けよう。



お言葉をジッと待つと、侯爵様は少し考えてにっこりと笑った。



「……そうだな。では、私の妻になってもらおう」


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