刺激の始まり
少しして俺はようやく冷静さを取り戻した。俺は慌てて119に電話をかけて救急車を呼んだ。俺の必死な呼び声が通じたのか、救急車は十分足らずで到着した。
俺は付き添いとして一緒に車に乗り込み、救急隊員に怪我を負った経緯を説明した。
その後、風太郎は緊急治療室に直行し、俺は待合室で風太郎を待った。だがその日風太郎はけっきょく現れず、俺は家に帰ることになった。
翌日の入学式。俺はただただ風太郎の容態が気になって仕方なかった。終わったらもう一度病院に行こう。そう思った矢先のことだった。
「すいません、遅れました」
聞き覚えのある声とともに、ドアが開く。そこにいたのは右腕にギブスを巻いた風太郎だった。
その異様な姿に、誰もが動揺した。
「あ、一緒の学校だったんだ」
風太郎は俺を見つけてうれしそうな声を上げる。俺もうれしかった。
その後、風太郎の周りには人が集まった。怪我の理由が聞きたくてたまらないといった感じだった。
「階段からこけたんだ」
困ったような笑い顔で、風太郎は誤魔化した。その日の帰り、俺は風太郎と一緒に帰ることにした。
「怪我、本当に大丈夫なのか?」
「うん。ヒビが入ったくらいで済んだよ」
「そ、そうか……」
「昨日はありがとう。救急車、呼んでくれたんだってね」
「ああ、気にすんな。にしてもお前、すげえ運動神経だな……!」
自分も身体能力には自信がある方だが、風太郎のは一味違った。あんな高さから、あんなでこぼこした地面に落下して、ヒビ程度で済むなんてこと、信じられない。
「なんか、スポーツやってるのか?」
「鋭いね。うん、やってるよ。俺、サッカーしているんだ。ゴールキーパー」
「なるほどな」
合点がいった。
「でもいいのか? その怪我じゃしばらく部活できないんじゃないか?」
「うん。激しい運動をするには一ヶ月かかるって言われたよ。でも、一つの命に比べたらたいしたことじゃないよ」
「……かっけえ」
くさいセリフ。だが風太郎が言うとその言葉も輝きを放った。
まだ苗字と名前くらいしか知らない。けれど俺はこいつと友達になりたかった。
「なあ、ダチになってくれねえか?」
気づけば俺はそう言っていた。
「え、俺はもうそのつもりだけど……?」
俺の覚悟はあっさりと受け入れられた。この日、俺たちは友達になった。
――ただ俺が風太郎と「友達になりたい」と思ったのは、風太郎の人間性に惹かれただけじゃなかった。
「大丈夫?」
「ノート取ってあげよっか?」
「なにか困ったことがあったら言ってね」
それからしばらくの間、風太郎の怪我を心配し、クラスメイトからそうじゃない女子まで、わらわらと風太郎の元にやってきた。
それを見て、俺は直感的にこんなことを思ってしまった。
刺激的な日々を送れそうだ。




