無意識に地雷を踏み続ける
並んで歩きながら祐介と八重子が到着したのは高校と駅のちょうど真ん中くらいにある公園へ入った。
「空っぽだな」
日が暮れるのも早くなったこともあり、公園内には誰もいなかった。
「そうだね」
八重子が先にベンチに腰を下ろす。続いて祐介が隣りに座った。
恥ずかしいとか照れはなかった。祐介は顔を上げ空を見る。
「良い天気だな」
会話を途切れさせまいと、祐介はすぐさま八重子に話題を振った。
「あ、うん。そうだね」
八重子は同意してくれたが、すでに夕日は沈みかけていたし、雲も多かった。
「……」
色々と迷った末に、祐介はあの事について触れようとした。
「あの、相原くん……」
だが先に、八重子が重々しい声で口を開いた。そして、思わぬことを言った。
「野球部、惜しかったね」
「お、おう……」
その話題を八重子の方からされるとは思わなかった。祐介はしどろもどろになりながらも、会話を続けていく。
「向こうの一年にやられたよ。まさかあんな隠し玉を持っているとは思わなかった」
悔しくないといえば嘘になる。だが相手の高校がそのまま全国出場が決定し、ベスト8までいったことで、誇らしい気持ちになった。
「うん、あの子、途中出場でも物怖じすることなく、投げていたもんね」
「……そうだな」
疑惑が確信に変わった。
「来年は行って欲しいね」
「……ああ」
祐介は応じるも、正直来年以降、ベスト4を狙えるとは思えなかった。
一年二年に有望な選手は何人かいる。今年の成績の影響で、いい一年も入ってくるだろう。
だがそれだけではダメだ。
今年、ここまで来られたのは自分たちだけの力ではなかったからだ。
「えっと……キナちゃん、頑張ってる?」
「……ああ、よくしてくれているぞ」
一瞬、誰のことを言っているのか分からなかった。祐介は木南晴子の顔を思い浮かべた。
「……そ、そうだよね」
自分で振っておいて、八重子はしょぼんと落ち込み始める。
「あー、『風ちゃん』って、多々良風太郎のことだったんだな」
ふと先ほどの山田との会話を思い出し、祐介は話題を変えるつもりでそう言った。
「……あ、うん……そ、そうだね……」
八重子の顔色を見て、すぐに祐介は失敗したと気づいた。空気がさらに重苦しいものになった。そして、
「……ごめんなさい」
八重子は、申し訳無さそうに祐介に、祐介たちに謝った。
「……ん?」
謝られるようなことをされた記憶はない。祐介は首をかしげた。
「その、部活……」
「ああ、それか。そのことなんだが……」
ようやく本題に入れそうだ。祐介は八重子の方を向く。
「ご、ごめん! あたしもう行くねっ!」
「え、ちょっ……」
呼び止めるよりも先に、八重子は逃げるように走り去った。あっという間に姿は見えなくなった。
「……ううむ」
どうにも色々と上手くいかない。自分の会話下手に、嫌気がさした。
「もう誰も、気にしていないっていうのにな……」
八重子はいまだに、やめてしまった野球部に対して、ひどい罪悪感を抱いていた。