トタンの下で
トタンの屋根の隙間から
しとしと雨粒落ちてきて
灰色もくもく間抜けな煙を
上らせぼんやり眺めてた
そんな視界の片隅にふと
薄桃色の蝿が一匹
トタンの下に雨宿り
ついでに私の周りをぐるぐる
指先の赤に惹かれて寄っては
煙に燻されふらふら離れる
そんな様子を繰り返すから
少し面白くなってしまって
静かに燃える指先で
そいつの先を追いかけてみた
蝿は興味があるのかないのか
付かず離れず火元を八の字
不意にぼとりと雨粒一つ
指先濡らしてじゅうと湿った音
蝿は途端に興味を失くし
雨宿りもそこそこに
トタンの向こうへ消えてった
これが五分の魂で遊んだばちかと
濡れた1本灰皿に捨て
私もトタンの下から去った