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LEVEL3 -地図にない島-   作者: しろながすしらす
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第9話 船

 疲労はたまっていたが、寝付きが悪かったのか早く起床してしまった。おそらく3~4時間しか寝れていないだろ。二度寝も考えたがどうにも目が冴えてしまったためとりあえず、外の空気を吸うことにした。


 日は登ったばかりでまだ少しだけ暗かった。

 あいつらが起きたらすぐにでも、圭太を探しに行こう。


 そんなことを考えながら景色を眺めていたら、見てはいけない物と目があってしまった。


「おいおい嘘だろ……、最悪だ」


 悪魔のような見た目をした生物はこちらに向かって走ってくる。


「みんな起きろ! 悪鬼だ!」


 俺は大声で叫んだ。

 完全に油断していた。何で武器を持ってこなかったんだ俺は!

 たが今は後悔している場合ではない。


 どうするか考えろ! 

 しかし、近くに武器になりそうなものはない。

 素手で戦うか? スローの状態で攻撃すれば多少なりダメージを与えられるはずだ。しかし、致命傷を与えることは難しい。それにスロー解除後にカウンターを喰らえば逆にこっちが不利な状況になる。スローを使うなら確実に一撃で仕留めれる時だけだ。


 考えてる間に悪鬼はもう目の前まで接近していた。

 悪鬼が俺の頭めがけて爪を振り下ろしてくる。

 俺はスローを使い悪鬼の攻撃を交わし距離をおいた。


「大丈夫か! 海斗」


 騒ぎを聞きつけた真が家から顔を出した。

 助かったと思ったのもつかの間、悪鬼が近くに落ちていた大きな木の破片を投げてきた。

 まずい! スローを発動しようと思ったが使って間隔が短いためか発動できない。


 直撃する! 


 思わず反射的に目をつぶり両手で頭をガードした。

 目をつぶって数秒たっても何も衝撃はこなかった。ゆっくりと目を開けると俺の目の前には死んだと思っていた圭太がたっていた。


「ヒーロー参上! 大丈夫か海斗?」


 圭太は俺の方を見てニカッと笑った。


「圭太……、お前生きてたのか! てか、前危ない!」


「やべっ!」


 余裕をこいていた圭太に悪鬼が襲いかかろうとするも、真が悪鬼の頭を集中的に発火する。


「お前らそいつから、早く離れろ!」 


 悪鬼が炎で怯んだ隙を見て、俺と圭太は距離をおいた。すると炎は悪鬼を中心に半径二メートルちかくまで広がり焼き尽くした。


 もがき苦しんでいた悪鬼も、しばらくするとその場で倒れて動かなくなった。

 よほど大きな力を使ったのか真はぜーぜーと息を切らしていた。


「あぶねえ、また死ぬとこだったぜ!」


 圭太が笑いながら言った。


「お前、あの状況でどうやって助かったんだ?」


「いやー、あの時はさすがに死ぬかと思ったぜ。なんかよー、俺の落ちたとこの地面がグニャーってスポンジみたいに柔らかくなったんだよ。お陰で無傷だぜ!」


 やっぱり能力が発現していたのか。


「そっか、何はともあれ無地で良かった」


「あったりめぇだろ! 俺がそう簡単に死ぬかよ!」


「まるでゴキブリ並みの生命力だな」


「ちょっと真、無事に帰ってきて最初に言うことがそれかよ、ひどくない!」


「事実を言ったまでだろ」


 つめたい言葉とは裏腹に真の表情はほころんでいた。


「えっ! 嘘」


「圭太さん無事だっんですね」


 一条と結衣さんが驚いた様子でこっちを見ている。


「おう! 結衣ちゃんに葵ちゃん元気かー、俺がいなくてさびしくて泣いてたんじゃないだろうな?」


「本当に心配したんですよ。おかえりなさい」


「本当よ、もう! でもまた無事あえて良かった」


「お、おう、そうか……」


 圭太が珍しくたじろいでいた。どうやら率直に好意を向けられるのに慣れていないらしい。


「何照れてんだよ、圭太」


 肘で小突きからかってみると圭太は必死になって反論してきた。


「はぁ!? 別に照れてねぇよ! お前らとの対偶の差にちょっと驚いただけだよ」


「はいはい、そういうことにしといてやるよ。ところでお前どんな能力が使えるようになったんだ?」


「その言葉を待ってたぜ! 俺が超格好良く、華麗にお前を助けた秘密を今教えてやる!」


「いやでも、お前もうすぐでやられそうになってたじゃん」


「それにお前らを助けたのは俺だ」


 真が俺に続いて追い打ちをかける。


「馬鹿野郎! 細かいかとはどうでもいいんだよ!」


「いや、ただ事実を述べただけなんだけど……」


 圭太は俺を無視して説明し始めた。


「俺の能力は触れたものを弾力あるゴムや柔らかいおっぱ……スポンジみたいにする能力だ!」


 圭太は低い声を出しながら決め顔で言った。


「なんか、すげー弱そうだな」


 真が率直な感想を述べた。


「でも、凄く可愛いと思います」


 結衣さんからは好評だ。


「弱そう、とか言うな! いいか、見てろ」


 圭太は走りながら思いっきりジャンプした。


「ここで両足に集中する」


 そう言うと圭太が着地した地面がグニャっと凹んだ。すると今度は凹んだ地面が弾力あるゴムのように圭太を弾き飛ばし5メートル近く飛び上がった。


 みんな無言で飛んでった圭太を見守っていた。


 圭太が着地すると地面はグニャっと衝撃を吸収するように凹み元の平面な形に戻った。


「ふっ! どうだ」


 圭太がキザっぽい口調をしながら左手を顎に当てた。


「飛んでどうするの?」


 一条が真顔で圭太に疑問を尋ねた。


「何ってそりゃ…………、あれ何すんの?」


 圭太が俺の方を向いて言った。


「いや、知らんよ」


 どうやら圭太自身何の役に立つかわかっていないようだ。


「何か凄く楽しそうで羨ましいです」


 結衣さんはどうやら圭太の能力を大変気に入ったらしい。


「だろー、さっきだってこの能力で海斗を助けたんだぜ」


 なるほど、これで木の破片を柔らかい材質に変えて弾いたわけか。


「守りに関してはかなり優秀なんじゃないか」


「そこに気づくとはさすが海斗だ。お前とは分かりあえると思ってたぜ」


「でも、悪鬼の攻撃は防げるのか?」


「それは、怖くて試せないぜ」


「まぁ、そりゃそうだよな」


「全員無事だったのは良いとして、これからどうする?」


 真が俺たちに視線を配りながら言った。


「そうだな、今日は島の東側を探索してみよう。あそこはまだ調べていないはずだ」


「待ってくれ。海斗」


 圭太が珍しく真面目そうな顔をしている。


「どうした。圭太?」


「それがよ。俺がさっきジャンプした時に昨日の浜辺あたりに何か船みたいのが泊まってるのが見えた気がしたんだよ」


「本当か!?」


 すると、圭太はさっきと同じように大ジャンプした。そして落下先を衝撃吸収するようなやわらかい物に変え着地する。


「ここからだと、小さくてはっきりは見えないけど、やっぱりあれは船だと思うんだよなー」


 何故、昨日までなかった船が泊まっているのかは疑問だが、今となってはこの島から脱出する唯一の手段だ。確かめてみるしかない。


 しかし、この島に用があるやつなんているのか?


 こんな古びた集落しかない場所に旅行に来る者はまずいないだろう。そもそもこんな化け物だらけの島の存在を知っている奴はいるのか。


 考えられるのは、俺たちを連れ去った張本人がこの島に戻ってきたことだ。仮にそうだとしたら何故だ?


 また、俺たちのような同じ人間を連れてくるつもりか?


 いくら考えても答えは出そうにない。まずは、この目で確かめるしかない。


「確かめてみる価値はあるな、よしとりあえず東側の探索は後回しだ」


 俺たちは船が泊まっている方角に向けて歩き出した。


「でも、昨日まではなかったってことは誰かが乗ってきたってことだよね?」 


 一条が俺も気にしていたことを口にした。


「ああ、もしかしたら俺たちをこの島に連れてきたやつかもしれない」


 真が俺と同じ結論にたどり着く。


「ああ、その可能性は高いと思う」


「だとしたら、何で戻ってきたんですかね?」


「今はまだわからない。それに可能性としては低いが俺らを連れ去った犯人とまだ決まったわけじゃない。十分に警戒するに越したことはないが、もし相手が少しでも不審な動きを見せたら、こちらも能力を使って制圧するしかない」


「こんな島に用があるやつなんていんのかねー」


 圭太が両手を上にあげ背伸びしながら言った。


「とりあえず、確かめてみよう」


 俺たちは昨日の浜辺に向かうことにした。


「今思ったんだけど、俺らの中に船何て運転できるいんの?」


「船の運転なら任せろ」


 圭太の疑問に真が答えた。


「えっ! 真、船運転したことあんの?」


「ああ、親父と漁に行くとき交代しながらよく運転してたからな」


「へーすごい。真くん免許持ってるんだ?」


 一条が驚いた顔で真の方を見た。


「そんなものはない」


「お前それって大丈夫なのか?」


「海の上だ。ばれる心配はない」


 真は俺の問いに対しまったく悪びれる様子もなく、まるでばれなきゃイカサマじゃないと言わんばかりに堂々と自信たっぷりに答えた。


「いや、そういう問題でもないと思うが……」


「でも、私たち無事に帰れるかもしれないですね!」


 結衣さんが希望あふれる明るい声で言った。


「でもよー、ここからどこに向かえば日本に帰れるんだ?」


 頭を悩ませる大きな問題だった。

 移動手段を見つけたのは良いが、俺たちはこの島がどこにあるかすらわかっていない。船の燃料だって限られているため闇雲に探すわけには行かないのだ。


 どうしたものか……


「それは……」


 言いかけたところで、正面から一人の人影が見えた。

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