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LEVEL3 -地図にない島-   作者: しろながすしらす
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第10話 ボルディア族

 この場にいた全員に緊張が走りみんなその場で立ち止まり身構えた。

 俺はまだ何もするなと意味を込めて右手で何かを抑えるような動作をした。


 相手がまだ敵か味方もまだわからないのだ。

 俺たちと同じ境遇の人間の可能性もあれば、可能性としては限りなく低いが一般人の可能性もある。


 いざ、相手が不審な動き見せたとしても、距離が近ければ俺のスローで対処できるはずだ。

 人影はゆっくりと歩き俺たちの方へ近づいてくる。


 向こうも俺たちの存在に気づいたみたいだ。

 見た感じ、20代後半くらいの若そうな男だった。背丈は俺と同じ175センチくらいだが細身なためか少し小さく見える。ジーパンにちょっと長めの白いシャツとラフな格好をしていた。


 男は俺たちを見ると目を見開き少し驚いた様子だった。


「君たち、どうしてこんなところにいるんだい? 見たところみんな学生のようだけど……」


 男は不思議そうな顔で俺たちに視線を配っていた。

 敵意はなさそうであることを確認すると、俺はみんなに確認の同意を得るため視線を送った。みんなは意図を理解してくれたのか無言で小さく頷いた。


「俺達気づいたらこの島にいたんです。ここに来るまでのことはまったく覚えていなくって」


「まったく覚えていない? すると見知らぬ誰かにここに連れてこられたってことかな?」


「……たぶんそうだと思います。ところであなたは誰なんですか?」


「私は神宮礼二というものでね、ボルディア族について調べるため、年に何回かこの島に来て調査をしているんだ」


 もしかすると、さっき圭太が見たのは、この神宮という男の船なのか?

 それに、ボルディア族ってなんだ? ある集落に住んでいた民族かなんかのことを言っているのか?


「ボルディア族?」


 一条が怪訝な顔をしながら呟いた。


「ああ、ボルディア族っていうのは以前この島に住んでいた民族のことだよ。ここからしばらく歩いたところに彼らが住んでいた集落があるんだ。……それより私は君たちの顔をどこかで見たことある気がするんだが……」


 あの集落はどうやらボルディア族という民族が住んでいたらしい。今の発言からするとすでに文明は滅んでしまったらしい。

 それより、この神宮という男が俺達を見たことがあると言ったのが気になった。少なくとも俺はこの男と面識はないはずだ。


 何かを思い出したように神宮はハッとして口を開いた。


「間違いない。君たち、今ニュースで騒がれている消息不明の学生たちだね。載せられていた写真に瓜二つだし、それに人数も一致する」


 どうやら、世間では事件になっているらしい。


「ここは一体どこなんですか?」


 一条が神宮に質問した。


「ここは日本から南東にある小さな島でね。関東からだと船で大体5時間ほどかかる」


 そう言って神宮は尻ポケットから小さな地図を取出し俺たちに見せた。

 地図は日本地図とその周囲を拡大したもので右下に小さく赤丸がしてあった。

 赤丸がついてる場所には島らしき形はなく海になっていた。


「ここは、地図にない島でね。私とごく一部の人間くらいしか知らないはずなんだけど……、一体だれが君たちを……」


「神宮さん、お願いがあります。俺たちを日本まで返してもらえないですか?」


「もちろんだよ。今すぐにでも帰って警察に行きたいところだけど、私が来る途中突然、雲行きが怪しくなってね、それに波も荒れていたし、出向は明日の朝になってしまうかもしれないけど、それでも構わないかい?」


 神宮さんは笑顔で軽く承諾してくれた。


「ありがとうございます」


 神宮さんが優しい人で良かった。

 ついに俺らはこの島から無事に帰ることができる。

 帰還ルートは確保できたが問題は悪鬼だ。


 明日の朝までに遭遇しなければいいのだが……

 そういえば、神宮さんは何度もこの島に来ているはずだ。もしかしたら過去に何度か悪鬼と遭遇しているんじゃないか?


 でもそんな危険な生き物がいるのを知っていたら一人でのこのこと何の武装もせずに来るか?


 俺は悪鬼のことを神宮さんに聞いてみることにした。


「神宮さんって何度もこの島を訪れているんですよね?」


「そうだね。もう何年も前になるね」


「この島にいる化け物って何なんですか?」


「化け物?」


 神宮さんが怪訝な顔をしながら言った

「ええ、2メートルを超える人型の大きな爪を持った黒い生き物に俺たちは殺されかけたんです」


「本当かい? 私がこの島を最後に来たのは3か月ほど前だけど、そんなものはいなかったよ。それに何年もこの島に来ているがそのような生き物は一度も見たことがない。人を襲う危険な生き物と言えば精々イノシシくらいのものだ」


 どういうことだ?


 今の発言が本当だとしたら、悪鬼はここ最近突然現れたことになる。


「でも、私たち見たんです」


 結衣さんが力強く言った。


「ああ、ここにいる全員が化け物を目にしている」


 真が結衣さんに続くように言った。


「そうなのか、仮にそれが本当だとしたら君たちはどうやってその化け物から逃れることができたんだい?」


「それは……」


 能力のことを言おうと思ったがこの人は一般人だ。このことを喋ってしまうと色々と面倒なことになりそうだし、混乱を招くかもしれない。いざ悪鬼が現れた時は仕方がないかもしれないが、それまでは黙っておいたほうがよさそうだ。


「それがよ――」


 俺は圭太の口を塞ぎ神宮の質問に答えた。


「必死に逃げてきたんです」


「そうか、にわかに信じがたい話だが、用心した方がいいみたいだね」


 口裏を合わせようとみんなに視線を送るがみんな小さく頷いていた。どうやら以心伝心のようだ。

 ついにこの危険な島から脱出することができる。後は、明日の朝までに悪鬼に気をつけるだけだ。


「とりあえず、ここにいてもしょうがない。私の別荘に来るかい?」


 そんなものがあったのか、気づかなかった。きっと俺らがまだ探索していない場所だ。


「えっ! そんなのあんの?」


「別荘と言っても小さな家だけどね。たぶん君たちが見たら少しがっかりするかもしれない。ここから結構歩いた場所にあるんだ」


「良いんですか?」


「構わないよ」


 俺たちは神宮さんの別荘に向かうことになった。


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