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国の状況

 大通りまで戻ると、崩壊した建物たちを眺めている人達でいっぱいになっている。中には、建物の近くにいたりしたのか無事だったことを喜んで抱き合っている人達もいた。


「マコト様! ヒナノ様! 無事でしたか!」

「一応、無事です。ただ、何があったんですか?」

「現在調査中ですが、おそらくあのあたりの建物はかなり作られてから時間が立っているものも多く、老朽化が引き金になったのではとのことです。そして、ドミノ倒しにバタバタと」

「結構やばいですよね」

「やばいですね。これから町でも対策を取りますが、国の方でもここに限らず可能な範囲の建物の調査をするべきだと話しておきます」

「それが良いと思います。それで、えっと……用事の方は?」

「わたくしは買い物も用事もすませましたが、お二人は?」

「買い物はすませましたけど、さっきのが原因で」

「ごめん……時間差で」


 今更になって腰が抜けて雛乃が立てなくなっていた。


「すぐ戻っても良さそうですね」

「はい」

「お荷物お持ちしますので」


 私はそう言われたので荷物をキリカさんに渡す。そして、お姫様抱っこで雛乃を持ち上げた。


「こ、これはちょっと、恥ずかしいかなって……」

「しょうがないでしょ」

「で、でも」

「照れてる雛乃をこんな間近で見れること、なかなかないから役得ってことで」

「ば、馬鹿!」


 軽く叩かれてしまった。


「では、参りましょう」


 この後は特に問題も起きずに国まで戻ることができた。


「色々あったみたいだな。おつかれさん……まあ、今回みたいな事件はさすがに日常茶飯事じゃあないから安心しろ」

「日常茶飯事だったら困りものです」


 帰ってから雛乃を部屋に運んで、今はバルコニーでカグラさんといる。

 何故かここで話すことが多いのは気の所為か。


「まあ、だけど、この世界の雰囲気に近いものは感じ取れただろ?」

「いろいろな種族がいたりとかってことですか?」

「そうそう。本当は狩りとか戦いとかもあるが、そいつは後だ……とはいえ、近々簡単な護身術ぐらいはそれぞれ教えるつもりだけどな。そしたら、すまんが、王宮で仕事する気がない奴らは、城下町で仕事探しとか今後の目的の方針を決めてもらうことになる」

「まあ、ずっとここにいるわけにもいきませんしね。また、私達みたいな人達もくるんでしょうし」

「そういうことだ……そういや、説明してたか? お前たちみたいなっていうこと」

「説明は受けてなくても、カグラさんはキリカさんみたいな人もいますし、なにより現実的に考えてここまで多種族で成り立つ理由は、境遇が同じ以外ありえないですから」

「……そいつはそうだな。まあ、あとでみんなにも説明するが、俺含めてここにいる別世界からきたやつらが全員が、ハグレモノだ」

「ハグレモノ?」

「簡単に言えば、選ばれなかったやつ。なんかボソッといってるやついたけど、ここにいないやつらもいるんだろ?」

「まあ、数人いますね」

「そいつらは勇者として人族の国に召喚されたんだ。それも神の加護を受けてな」

「つまり、素質がある人だけを抜き出して残りは世界にハグレるように捨てられるってことですか?」

「ま、そういうこった。しかもこっちには加護らしい加護はなしときて、対策取らなきゃ生きていけもしないってな。ったく、最悪だよ」

「……1つ聞いてもいいですか?」

「なんだ? 言える限りのことなら話してやるぞ。今は暇だしな」


 カグラさんはそう言うと、バルコニーにあった椅子に座る。机を挟んで対面する席に私も座った。


「この国って、共存国で難民を受け入れてるっていうことはわかったんですけど。それって、普通は狙われたりしません?」

「他の国にか?」

「はい」

「……まあ、そうだな。実際に狙われている。でも、勇者が呼ばれる理由わかるか?」

「いえ、それは……予想はなんとなくいくつかあっても、わかりません」

「まあ、実際に言えば魔王軍を倒すためだな。今は人族の連合軍と魔王軍が戦争している。記録に残ってる限り数百年レベルでやってるわけだが、この国はそんな戦争中にひとりの勇者が戦いへの嫌気と、ハグレモノの状況に難民の状況を知って作ったのが始まりの国なんだ」

「そうだったんですか」

「そうなんだよ。んで、まあ、今もその勇者が広げた領地まではどうにか維持しているってところだな」


 それって、かなり厳しい状況ではあるってことじゃないだろうか。人口は増えるばかりで、領地は増やせない。戦争も終わらないときたら、ジリ貧だ。


「攻められる理由は難民を受け入れてることと、魔王軍のまあ魔族とか魔物を受け入れてるってことが理由だな。魔王側からはあまり攻められたことはない。あぁ、あとたまに誤解を受けるから先に言っておくが、ハグレモノに対しては別に戦力欲しさにこういうことしてるんじゃねえからな」

「誤解しませんけど、されるんですか?」

「まあ、たまにな。実際、人手不足で戦ってもらわざるをえないことも今まであったからな」

「守りに徹しているってわけでもないんですか?」

「守りに徹するしかないっていうのが正しい。領地を広げたいのはもっともだが、ハグレモノのほとんどが日本みたいな国からきているし、難民だって戦争から逃れてきたんだ。つまり、戦争を知っていたりする人員が少なすぎる」

「守りはなんとか物量や立地の有利でできるけど、攻めるには人員も戦略もない状態っていうことですね」

「まあ、簡単に言っちまえばそういうことだよ。戦略を学んでほしいなんて押し付けるのもあれだしな。あとは、戦略を学びに行ってそのまま帰ってこなかったりだ」

「そんなことまで……」

「一応この世界には奴隷みたいなやつだって地域によってはあるし、日本と比べれば命が軽いのは否定できないから、今頃生きているかどうかすらも」

「でもこの国で育てる術はないんですね」

「そういうことだよ……察しがよくて助かる。ま、心配すんな。今そっちについても色々と考えてるところだからな」

「……何かあったら言ってくださいね。私はどうやら女王様らしいので」

「……はははっ! そいつはそうか。じゃあ、なんかあったら女王様の力も借りるとするかな。そんじゃ、仕事もどるわ」

「お疲れ様です」


 カグラさんは最後に笑いながら去っていった。

 これからわたしはどうすれば良いんだろうな。



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