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蓮姫降臨  作者: Roppu
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ふたたびのクラガリ姫

蓮姫の消えた街。正倉院攻防戦から一ヶ月、街に新たなる脅威が迫っていた。

立ち向かうのは。。。

蓮姫降臨


私の「名前」は今井ななか。

この海のない街に住む、高校一年生。


あの夜以来、私は肉体のコントロールを完全に失った。

もともと憑依を受けやすい体質だったのだけれど。。。


今回は根本的に違っていた。あれは古都に巣食う闇の姫。

名前は知らずとも、あれだけの妖を使役するのだから、ありふれた変化の類ではないのだろう。


私は自分の目が病室の天井に向いている事に気づく。

かろうじて視覚情報だけは認識できる。音は、曖昧に響くだけ。


そして何かが私の脳内で覚醒する、と同時に、私の意識はまた深淵へと落ちていった。


。。。。

。。。。


旧市街の東方、中心街から少し離れた区画に、その病院は建っていた。かつては、国立の施設だったが、新世紀からの自治政策で、隣接する大学の付属になっている。総合病院の体はなしているが、その実、ここはこの地方特有の「患者」達の収容施設になっている。


そう、クラガリの犠牲者たちだ。


真実は公開されなくても、いつしか、この区画は、一般外来を受け付けない異常さから、なんとなく人々に敬遠されている。


だから、その夕刻に、1機の中型ドローンが音もなく接近して来た時、行き交う者はいなかった。


いや違った、音もなく病院施設に侵入した機体は、正確に編隊飛行する7機だった。


注意深く見るものがあれば、機体間に何かが鋭く閃くのに気づいたかもしれない。


。。。。

。。。。


そして私は完全に覚醒した。見知らぬ肉体。それでも危機回避のために、無理に跳び起きる。


同時に窓ガラスが砕け散り、黒い機体が病室に飛び込む。その破壊音が消えぬうちに、残りのドローンが室内に侵入する。


!!


神速の反応でベッドから飛び出す。体は、やはり思うようにうごかない。かろうじて床に転がった時、信じられない事に、ベッドか真っ二つに両断される!


(鎌イ断ち!?)


伝説の妖怪のイメージがよぎる。


違った。私の目は、大型蜂のような飛翔音を立てながら飛び回るドローンの間が、ワイヤー状のもので接続されている事を捉えている。これは、物理攻撃だ。


みるみる全てのものが砕け散っていく。限られた空間を、信じられない高速で飛び回る機体。確実に、殺しにきている。ターゲットはそう、私だ。


窓を一瞥する。ここは4階。これは慣れきった以前の私の肉体ではない。落ちればただではすまないことは分かる。


眼前に迫るドローン。もう一機が、後方へ回り込む軌道を取る。繋がれたワイヤーが私を、あのベッドのようにするのだろう。


その刹那、私は夕刻迫る屋外に体を投げ出した!


。。。。

。。。。


もしその機体は、「驚愕」した。


信じられない事に、それは、その少女の手によって屋外へ引きずり出されていた。強烈な負荷、メインローターが対抗して唸りを上げる。


僚機が対応すべく、少女の腕を切断しようと動いた時には、すでに、機体と少女は落下工程の半分まで、死なない程度の高さまできていた。


フレームから手を離し、地上に降り立つ彼女。殺人機械の目から見ても、十分にクレイジーな奴だ。そう、敵機をエアブレーキにして脱出したのだ。


。。。

。。。


(で、どうしたものかしらね。。。)


病院の前庭に降り立ったが、状況は好転しない。今度は7機のドローンが一斉に殺到する。


この体でどれだけ走れるかは分からない。まあ、この殺人ドローンから逃げ切ることはできそうにない。


(覚えているのは。。)


ワタシハシンダ

そして、

ワタシモクラガリ


気づいている。人ではない、憎しみの戦闘本能が胸の奥から湧き上がってくる。とても馴染み深い感覚。


そして。。。。


再び私はドローンの一機に飛びかかる。狂気の力で、引きちぎる。手に食い込むワイヤー、そして力任せにそれを抜き去る。バランスを崩しながらも編隊を立て直すドローンたち。


私は少し微笑む(反撃開始よ)


いつしか奪取したワイヤーは、手頃な木の枝に結わえつけられていた。そして、私は、側の立木から、さらに二本の枝を手折る。


それは瞬間的に造られた武器。私にも巣食うクラガリの力によって。


サンガの弓


山の民を支える戦闘技術。縄文に源流を持つとされる。


ドローンが気づいた時には、すでに私は2機を同時に叩き落としている。


その即席の弓から放った私の不達矢が奴らの制御回路を貫いていた。


状況変化に対応する殺人ドローンは、最大速度で上昇する。使役するクラガリが遠方より監視しているのだろう。


(逃げ足の速いこと)


再び手折った枝をつがえつつ、私は少し緊張を緩める。陽は落ち、病院着では少し肌寒い。


そして私の瞳から、紅の色が和らいでいった。。。


(さて、自分が何者か、思い出すとしますか)


少し自虐的に微笑みながら、私は病院の玄関に歩いていく。


古都の闇夜は、また妖しく胎動を始めていたのだった。






















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